55.規格外の冒険譚
アーヴェキニスアはかなり遠い国だったが、外国には魔力がないため、魔法を発動するとポーション以外に魔力回復の手立てが今のところ発見されていないという理由から、転移魔法を使わずに向かったらしい。
帰りは魔力に余裕があったから少し転移魔法を使ったから早かったが、通りがかりの国を観光していたせいで卒業式に間に合わない危険性があったから魔法を使ったと言っていた。
驚きの事実はこれだ。往復で1カ月半かかった、と。
つまり、ダンジョンは半月で消されたわけか、と思ったのだが、そうではなかった。
ダンジョンに入るために、パーティーを作らなければならない、とその国のギルドで言われたシンは、仲間集めのために、その国での功績を上げて、有能なメンバーを募っていたらしい。これに10日ほど。
半月、というと約15日。となると、5日ぐらいでダンジョンを攻略してきたのだ。
ちなみにうちの国で、他国に依頼するほどのダンジョンを攻略しようと思うと2年ぐらいは平均でかかる。他国だと魔法がないため、うちの国から魔法を使える人を呼ばなかった場合、10年はかかる。
10日かけて揃ったメンバーは、シンを含めて4人。荷物持ち、記録係、ヒーラー(シンが持ってきたポーションをかけるだけ)とシンだ。
荷物持ちの男性には料理を任せ、記録係の女の子にはダンジョンの記録を任せ、ヒーラーの女性にはシンが持ってきたポーションの半数を持たせたらしい。
ほぼ雑用係と言っても良いだろう。記録に関しては、シンは以前得意だと言っていたから、本当は必要ないのではないだろうか。
パーティーを登録し、シンたちはダンジョンに潜った。シンは中で魔力を発して、その感覚で広さをつかんだ。それにより約20階層だとわかった。
ボスが10階層と20階層にいて、10階層のボスを倒さないと20階層への扉は何をしても開かない仕組みだったらしい。だから、10階層まで魔法で突っ切った。
詳しく言うと、他の冒険者を全員外に出した上で、炎魔法で床を溶かし、10階層までの直通ルートを作った。
そしてボスをサクッと倒し、11階層に降りた。
そこからは少し敵も強くなっていたし、何よりも他の冒険者パーティーが、1つだけいた。
そこのパーティーはアーヴェキニスア最強の6人組であり、かつ魔女狩りの進む地域からやってきた幼馴染なんだとか。
魔女狩りのせいで魔法への嫌悪感が強く、迂闊に魔法を使うとアーヴェキニスアに今後行けなくなるかもしれないという面倒な状況になってしまったのだとか。
だから剣技でひたすらに階層を降りていき、20階層のボス部屋には誰も入らせず、魔法で一気に倒したらしい。
10階層を1日で、20階層までを2日で、終わった手続きと観光に2日を費やし、帰ってきたんだ、と言っていた。
自分でまとめてもシンが何を言っているのかよくわからなかった。規格外ってこういうことかぁと、なんか感心させられた話だった。




