52.戦闘の授業10
なんだろう。甘党先生の魔力が変化する。
甘党先生は、ドロっと溶けた。
いや、比喩でもなく、本当に溶けた。
そして、影が集まり、形を作った。
かなり大きな形だ……これは、ドラゴン?
「いやぁ、久しぶりだね。こっちの世界でこの姿。やっぱりサイズは限度があるけど、楽だね」
真っ黒なドラゴンだ。黒龍……なのか?
私たちが討伐するべき、あの黒龍?
『やはりな……だが、黒龍ではない』
違うのか、と思ったら、そうでもないとタウは言った。何かと聞くと、
『分身のようなものだ。本体はあっちの世界にいるからな』
優雅に話を聞いていたのが間違いだった。
私は、甘党先生によって、グラウンドの端まで、手で払われた。
あり得ない位のスピードで飛んでいく。
「くっ……ぁ……」
ダメージが多すぎる。これは、勝てない。
ひたすら、回復魔法を使っていく。
だいぶマシにはなっただろうか。
「絶対に、一発合格はさせたくなくてね。本気で行かせてもらうよ」
そんなの……なしでしょ。
私は、諦めない。
まずはクナイを投げる。どれも鱗で跳ね返された。
毒魔法を使ってみる。効いた気配すらない。
火魔法で燃やしてみる。涼しい顔をして佇んでいた。
いろいろ試している間に、甘党先生は大技を用意していた。
ひとつ咆哮をした後に、辺りは氷で包まれる。細胞のひとつひとつが、凍っているかのようだ。動けない。
炎魔法を発動する。私を含め、すべてを燃やし尽くすくらいの。
氷は溶けた。一気に水になった。
しかし、それらを操られた。
『助けてやろうか?』
『それは嫌』
私は、氷の矢となった水を避けようと試みた。しかしそれらは追尾式だ。いくら素早く逃げても、クナイを使って上に逃げてみても、避けきれなかった。
一度当たったら、もう逃げられない。
矢は私にグサグサとささった。
心臓も、肝臓も、おそらく何もかもが、氷の冷たさと、負ったダメージにより壊れた。
「はっ……無理じゃん」
私は膝から崩れ落ちる。
おそらく、死んだ。
その後、眩いほどの光に包まれ、いつの間にか意識は帰ってきていた。しかし、動けない。
「甘党せんせー。もしかしてかなり強めの回復魔法で契約してました?」
ドラゴンに向かって話しかける。
「この姿でその呼び方をされると、威厳がなくなるなぁ……。まあ、かなり強めにしておいたよ。どれほどの戦いになるかわかってなかったからね」
ドラゴンのままでも話せたのだろう。
途中で人間の姿に戻りながら、先生は話していた。
「今回の反省会を始めよう。対策もね」
この後、私はギリギリ動く口だけを頑張って動かしながら、反省会をした。
ここまで教えちゃっていいの?というくらい反省会は盛り上がった。明日は負けないと思う。途中でタウは、
『だから俺を頼れと言ったのに、なぁ?』
とか少し拗ねているのか怒っているのかよくわからないようなことを言っていたが、まあいいとしよう。明日のために、今日は早く寝てしまおう。
私の意識は、想像よりもずっと早く手放された。
「さぁ、最後の戦闘を始めていこうか。もう、隠す必要もないし、こっちの姿で最初からやらせてもらおう」
とか言いながら、甘党先生はドラゴンの姿になった。これは好都合。
私は今日、タウからドラゴンの倒し方を聞いていた。
あり得ないほどの高火力で押し切る、または弱点を狙う、らしい。
弱点とはどこか。首元だ。
たしかに、授業中に首元にダメージをくらっていることはなかった気はする。
だから私は、作戦通りに動くだけだ。




