51.戦闘の授業9
目を覚ますのは、やはりタウからのお茶の請求だ。
『アミ、今日はミルクティーの気分だ』
ミルクを入れろ、と。なるほど面倒だ。
『かしこまりました』
『嫌そうだな』
げっ、バレてる。
『そんなことないですよ……。しかし、あの甘党先生の正体は一体何なのでしょうか』
そう話をそらそうとすると、タウは面白そうに話し出した。
『今は言わないでおいてやるが、今日の授業の一発クリアは無理だと思うぞ。もしクリアしたいのなら、俺を頼ることだな』
……いいもん。やってみせるもん。
『検討しておきます』
絶対、合格を勝ち取ってみせる。自分の力で。
『いいものが見られそうでなによりだ』
私はミルクティーを一気飲みした。熱かった。
朝食も終え、やっと授業に行くやる気がでてきたので、私は職員室へ向かう。たぶん今日も別館だろう。
『そういえば、なんでわざわざ職員室に行くんだ?転移魔法、使えるだろ?』
タウの言葉に私の足は止まる。そして、5秒ほど思考を停止した後に、うわぁー!と気づきと驚きと歓喜がやってきた。
『そうですね!そうでした!大変慧眼でいらっしゃいますね!』
私は全力で歓喜しながら転移魔法を使い、別館に行った。
着いた場所は、グラウンドだった。
あれ?設定でミスったか…?
そう思い魔法陣を見返したため、きちんとミスっていた。喜びすぎた。
「いらっしゃーい、アミ。では、始めるよ」
甘党先生は、契約魔法をかけたと思ったら魔力回復のポーションを飲み、私に剣を向けて走ってきた。速い!
捌けないと思った私は、回避に全力を注いだ。間一髪で、避けることができた。
「危ないですね、先生」
先生の向かった先に、私は土の壁を作っておいた。勢い余ってぶつかってほしいと思ったのだが、そう上手くはいかず、壁を壊された。
「アミこそ。油断も隙もないね」
甘党先生は、私に剣を突きつける。私はそれを燃やした。もちろん、私は水属性の結界を張って。剣はドロっと形を変え、武器としての役目を果たせなくなる。
今こそチャンス。
私は鍛冶魔法でクナイを作り出す。
闇属性、呪いをかけて、魔力を奪うためだ。
魔力を奪えば、防御に魔力を回しにくくなるだろう、そうすれば攻撃が入りやすくなるかもしれない。
呪いには、相手の身体の一部が必要だ。
だから、クナイを使い、どこか一部を手に入れようとしているのだ。
私は甘党先生に向かって急発進する。
そして、横を通り過ぎる瞬間に、髪を掴んだ。
クナイで、それを切った。
「へぇ、惜しかったじゃん、攻撃にはならなかったね」
甘党先生は、呪いを知らないのか?
否、契約を使っている時点で、闇属性の魔法は把握しているはず。
となると、考えなくてもいいほどに効かない……?
いや、試してみるべきだ。
私は甘党先生の髪の束を持ち、その上に魔法陣を描く。
そして、それを発動させた。
先生は黒の光に包まれる。呪い自体は付与できた。
「うーん……魔力が減ってる、かな……?回復量が減ったような気もする」
ま、まさか。回復量はそんな、目に見えるものではないはず。
「魔力の回復が、速いんですか?」
「そうそう、考え事ばっかりしてていいの?」
甘党先生が、攻撃に転じた。
私は、一気に氷に包まれる。
まずは火属性の結界を張り、霜焼けになったところは回復していく。段々と氷を溶かしていく。
その隙に甘党先生は、大技を用意したようだ。
「僕の持ってる属性は3つなんだよね、アミが知ってる通り。でもさ、魔導具って存在がある時点で攻撃はすべてを警戒するべきなわけ」
もしかして、炎魔法を使ってくるとでも!?
辺りは光に包まれる。熱風も吹き荒れている。地面に生えていた草など、一瞬で消えていた。
「こほっ……やっば……何この威力……」
炎魔法の魔導具だ。辺り一面を炎で包むための。これなら、契約で属性を使えるようにするよりも少ない魔力で済む。
「死んでないか。じゃーあ、次はアミがやってきな。負けるよ?」
わかっている。でも、私の魔法は……
「時間がかかるんだよ!」
私は2本のクナイを作り出す。
そして、火魔法と氷魔法を仕込む。
まずは火魔法のクナイを甘党先生に投げ、間を置かずに氷魔法のクナイを投げる。
甘党先生が炎に包まれたかと思うと、次は氷の矢が大量に降ってくる。
「効かないって、授業で見てたでしょ?」
いや、違う。
氷の矢は、降ってきただけで甘党先生には当たっていない。それ以前に炎で溶けていたのだ。それが目的だ。
溶けた矢は、水となる。そして気化することで、辺りは白に包まれる。
おそらく、甘党先生も魔力感知でなんとなく私の位置、したいことがわかってきてしまう。だから、慣れる前に殺す。
私は、クナイだけを使えるわけじゃない。
私は刀に、皮膚を腐敗させるための毒魔法、焼き切るための火魔法、刃を鋭利にするための氷魔法、幾重にもダメージを与えるための風魔法を仕込んでいた。
その上に、私の全魔力の半分ほど、500くらいを注ぎ込み、身体強化をした。
刀は壊れない、対策済みだ。
それを、甘党先生に振る。
右肩から左胸にかけて、一気に振り切る。
できることならばすべて切れるとよかったのだが、心臓を切ることはできたはずだ。
これで死なないことはさすがにない。
出血量も、授業のときの比ではない。
実際、とても苦しそうだ。
「かはっ……!これは久しぶり……に……やばいか……僕は……ここまで、くらえば……死ねたんだ……でもさ……アミ」
何だろう。甘党先生に何かが起こっている。それだけはわかった。




