19.歴史
毒属性の教室の前でリゼと別れ、私はレイと教室に向かう。
「テストの結果はね、ここで受け取れるんだよ」
レイは、教室の前にある謎の箱に手をつける。すると、少し淡く光った。
そして、紙が下から出てきた。
用紙をチラッと覗き見する。
22問正解、合格と上のほうに書いてある。
そして、その下に表のようなものがある。
問題の正誤だろうか。
「アミもやってみてよ」
言われた通り、私は箱に手をかざす。
すると、紙が出てきた。
21問正解、合格だ。
「あー、よかった…」
これで今日も心置きなく授業が受けられそうだ。
「じゃあ、教室入ろっかー」
私は教室に入り、昨日と同じ席に座る。
レイは昨日のところが固定席というわけではなかったらしく、今日は空いていた私の隣の席にやってきた。
ちなみに、今日はノートを持ってきた。クウが一冊くれたのだ。マジ優しい。
「アミ、今日の授業の予習でもしておく?」
レイが横から自分のノートを差し出す。
ノートには年表が綺麗にまとめてあり、教科書と見間違うほどだった。まあ、この学院は教科書ないけどね。
「そうだね…貸してもらってもいい?」
「もちろん」
レイからノートを借り、読む。
レイは、横からたまに補足説明をしてくれた。最初に出会えてよかった。
ほんと、ひとりでの教室も覚悟してたから、話しかけてもらえて助かった。私にはその勇気がない。
「はーい、席について。授業始めるよー」
年表も半分くらい見終わったかというところで、アレイスがやってきた。
あいさつの号令をかけ、授業が始まる。
「今回は歴史。4回目の授業だね。説明を始めよう。時代ごとに追っていくよ」
アレイスがホワイトボードに貼ったのは、横に細長い、時系列の表。
その下に書き込むのだろうか。
ペンを取り出した。
「まず、この国の始まりから説明しよう。この国、フィシチニは今から約650年ほど前に建った……」
話がとても長く、聞いてきて飽きたので、タウにまとめてもらおうと思う。
ほんとに、長い。そしてあんまり面白くない。最初は魔王様関連とかが出てきて結構面白かったのだが、その後はただただ歴史が紡がれているだけだ。
『タウ、まとめて』
『…私のまとめよりも、実際に読んでみると良いと考えます。テストの答えは私がわかります。なので、しばしお待ちを』
なるほど。つまり、あとで本か何かを見せてくれると。
『わかった。テストは任せたよ』
その後私は、ひたすらに寝ないように耐えることを続けていた。
はい。授業が終わり、テストが配られました。
タウが全部答えてくれたから何も問題なくテストは進んだ。1問1答式、というのだろうか。年表の穴埋めだった。
主に500年前の話。少しだけ300年前の話も出てきたが、明らかに年表の長さが違うでしょ、というほどに出来事がなかったっぽい。
テストの時間は終わり、放課後となる。
私は、部活動を見に行かなければならない。
「アミ、どうだった?」
レイが私に問いかける。
どうだったかと問われても、私は書いてただけだからなんとも言えない。
「いい感じ。レイはこの後どうするの?」
あまり聞かれると不自然に答えてしまいそうだから、話を逸らしてみる。
「今日部活があるから、外で時間まで動いてよっかな。アミは?」
「部活動見学。気になってるところがあってさ」
そう。魔法研究部〜−h〜。
どうしても惹かれているのだ。
「そっか。じゃあまた明日」
レイは手を振って別れていく。
「うん。またね」
私は意気揚々と、しかし少しの緊張を持って、活動場所と書かれていた部屋…312まで歩いていく。
個人の部屋で部活なんてできるんだ。
大きな部活じゃなかったら教室なんて使えないってことか。世知辛い。
私は階段を下り、3階の部屋まで歩く。
そして、312と書かれた看板のある扉をノックする。
「あのー、すみません…」
扉を開けると、そこからはもうリビングの部分が見えていた。
そこで私は、想像のできなかったものを目にした。
ありえない、と一瞬思った。
でも、これはもしかすると、と少し期待も抱いた。
「えっと…魔法研究部…ですよね…?」
私は聞く。
リビングにいたのは、ふたりの生徒。
彼らが持っていたのは、魔法陣の紙でも、とても難しそうな本でもない。
そう、私も知っている…。
「魔王の軌跡…」
まさにその本。
私が大好きだった、あの本を持っていた。




