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5話 0日目:夜 【夫】夕食と衝撃(上)

【アダム視点】


 だめだった。面会不可。


 結局、妻の部屋に入る事はできなかった。

 何度も部屋に行ったけど、その度にカミルに追い返された。

 

 偶に追い返されたフリをして、廊下の隅から妻の部屋の前の様子を伺ってみた。

 もしかしたらトイレなどで、妻が出てくるかもしれないと思ったからだ。


 でも妻の姿は見えず、見えたのはカミルが手帳に何かメモしている姿だけだった。

 几帳面な彼女だから仕事の作業リストでも作っているのか。

 それとも、隙間時間に何かしら妻に頼まれたことをしているのだろうと思った。



 何回目かに妻の部屋を訪れた際に、カミルに手帳の事について聞いてみると。


「な、なんでもありません!

 アダム様には関係ありません!

 それになんですか、まさかこそこそと私の事を見ていたのですが?

 私がメモ帳を持っていてはいけないのですか?」


 と、凄い勢いで否定された。

 彼女の雰囲気に押されて、「そ、そうか」と僕は反応したけど、物凄く怪しかった。

 一体、何をメモしていたのだろうか。






 そうして時間が経つこと数時間。

 自室にメイドが来て、夕食を告げた。


 ダイニングにつくと、机の上には二人分の食器。

 ほっとする。

 どうやら妻の顔が見られるようだ。



 暫くしてカミルが部屋に入ってきて。


「アナスタシア様がまもなく来られます。

 どうか、無礼の無いようにお願いします」


 同じ屋敷に住んでいる夫婦なのに、凄い言われようだ。

 まるで大臣でもやって来るかのような口ぶり。


「分かっているよ。

 アナがきても、勿論フキンを投げつけたりしないさ。

 僕はアナにいつも優しくしているだろ。

 そんなに堅苦しくしなくても」


 カミルは驚いたように瞳を一瞬揺らす。

 「何をいってるんだろう、この人は」という表情だ。

 

 おかしい。

 僕は嘘をいったつもりはないのに。

 そもそもカミルは僕のことをどう思っているのだろう?


「アダム様。ご冗談がお上手ですね」


 フキンの事に対してか、アナに優しくしている事か分からないが、カミルはそう言い。


「では、少々お待ちください」



 数分後。

 カミルを引き連れて、僕の妻、アナが現れる。


 いつもの様に楽しげな雰囲気ではなく、しゅんとしている。

 目元は赤く腫らしており、目は充血している。

 鼻の周りも赤くい。

 だが、それらを化粧で隠しているようだ。


(あーあ、なんてことだ。

 きっと、僕の母のせいで彼女はずっと泣いていたのだろう。

 それを僕は、彼女は気にしていないかもしれないと楽観視していたのだ)


 僕は申し訳ない気持ちになった。

 彼女の悲観した表情を見ているとじっとしていられなくなる。

 椅子から立ち上がり彼女の元に近寄ろうとすると。


 カミルがさっと、僕と妻の間に入りインターセプト。

 「アナ」、と呼ぼうとした瞬間。


「お席にお着きください」


 カミルに睨まれたので僕は自分の席に戻った。

 アナが椅子に座ってから、僕も椅子に座る。


 僕はそれまで話したかっ事を色々ためこんでいた。

 なので一気に話すことにした。


「アナ、悪かったよ。

 本当に悪かったと思ってるんだ。真面目にね。

 なんであんな事になったんだろうね。

 その顔、随分泣いたようだね。

 君のそんな顔は見たく無かったよ。

 君にはずっと笑っていてもらいたかったし、母だってそう思っていたはずだよ。

 そう、母もあの後凄く謝っていたんだ。

 君は部屋にこもったから分からないだろうけど、母は君にしたことで凄く落ち込んでいたよ。

 母に悪気はなかったんだ。君だってそれぐらい分かるだろ。

 でもほら、母は僕らに比べると歳だし、色々貴族の生活になれないことも多くて大変なんだ。

 別にだからといって昼間の事はゆるされるわけじゃないと思うんだけど、母が謝っていた事は知っていて欲しいんだ。

 君はいつだって優しい人だろ。だからきっと、時間がたてば許してくれると思ってるよ。

 すぐには機嫌が直らないかもしれないけど。

 その、ごめん。悪かったよ」


 アナは僕の声に耳を傾けていた。

 僕の言葉が聞きながら表情をほころばせる。

 

 でも、僕が言い終わっても、一瞬表情を変えなかった。

 「え、もう終わり?」みたいな顔をした。

 もう少し話が続くのかと思ったのかもしれない。

 

 でも彼女はその表情を直ぐに隠した。

 何事もなかったように。


 それから。


「いいですよ。分かっていますわ。

 でも、辱めを受けた事を許すのには、少し時間がかかりそうです。

 心が痛いのです」


 彼女の悲痛な表情と抑制された声が心に響く。


「あぁ、分かってる。

 君の気がすむまで僕は待つよ。

 母の暴挙をふせげなかった僕にも責任はあるしね」


「そうですか。お母様の事は残念です」っと彼女は言い、姿勢を正すと。


「では、食事にしましょう」


 僕と妻は食事を始めた。


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連載始めました↓
彼女が二股していたので、腰が砕ける程衝撃を受けた。

 

連載始めました。よろしくお願いします。↓
転生したら吸血鬼さんだった件~チートで世界最強です~

 

さくっと同時連載中。↓
もう、結構ですわっ!

 

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