学園祭
「焼きそばいかがっすか!」
「明日昼、アーティストライブあります。来て下さい!」
「オリジナル演劇、人形師の夜やります!」
屋台、出し物などの空気。
海里は別の大学だったがどこの学園祭でも変わらないな、と思ってしまう。
桜庭梨阿那、三年生の文化祭だ。
行きたかったが、一年生と二年生の時に行けなかったので海里はワクワクしていた。
更に、今回リアナは舞台にも出る。
女子が配るチラシを貰い、キャスト欄を見る。
主役は別の人だったが、リアナは二番目だ。
「先にリアナの所行こうかな」
海里はスマホを出すと電話をかけた。
「海里叔母様!」
「リアナっち、動いちゃだめ」
「セット丁寧に扱って!」
「小道具これで全部?」
リアナの側では学生が慌ただしいのがわかった。
「今まずかった?」
「大丈夫です」
「リアナっち、大人しくして!あぁ、もう!」
「返して!」
「もしもし、今立て込んでるので後でお願いします」
リアナの友人は、誰かわからない状態で海里に言うと切った。
「リアナ、携帯は没収ね」
「叔母様だったのに…」
リアナは落ち込んだ。
ツー、ツー、ツー。
怒涛のスピードに、海里は呆気にとられる。
「とにかく、今は駄目って事ね」
海里は溜め息をつくと歩き出す。
演劇の前に腹ごしらえをする事に決めた。
「リアナの叔母さん!」
特設テラス席で食べていると、リアナの友人が現れる。
彼女は髪をシンプルにポニーテールにし、カッターシャツを着崩し、ズボンをはき、いつもと違う格好をしていた。
「格好いいじゃない。どうしたの?」
海里は問う。
「嫌だな、リアナと舞台に出るんですよ!」
「あら、本当?」
海里は貰っていたチラシを見て確認する。
彼女は主役だった。
「本当なのね。リアナばっかり目がいって気付かなかったわ」
「叔母さん、親バカですよね」
リアナの友人、高島棗は呆れる。
棗は座ると、鯛焼きに手を伸ばす。
「あっ、私の!」
海里はそう言うと、苦笑いした。
「劇の前評判良いんです。早めに席取っといた方がいいですよ」「そうなの…じゃあ、案内してくれない?」
「そのチュロスください」
「はいはい」
海里が彼女にチュロスを渡すと、棗は直ぐに食べた。
「じゃあ、行きましょう」
棗は立ち上がると言う。
向かいながら電話での出来事を喋った。
「あぁ、鴇音ね。丁度外出る直前に見たわ」
「トキネ?」
「長澤鴇音、友達で今回の衣装係です。私の衣装は簡単だから早めに解放されたんです。でも、リアナは…」
「リアナがどうかしたの?」
「人形の役だからって、ロリータファッションでとても凝った服なんですよね」
棗は横向いて言った。
「着きました。私はそのまま戻るんで楽しみにしてて下さい」
棗は言うと、去っていった。
リアナが少し心配にはなったが、海里は建物に入る事にした。




