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Student War ──羅刹女──  作者: 天井舞夜
臆病者・神代善人さらに思考・善
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第43話

喜界島 翡翠 : きかいじま ひすい

 伊集院君が恐い女の人を足止めしている間に私は鏡華ちゃんを探すために走り回った。そして私は恐い女の人が追って来たのを確認し、近くの教室に身を隠した。

 恐い女の人は教室に隠れる私を見ていないのか未だに見つかっていない。廊下であの女の人の走る音が聞こえる。

 一体あの人はなんなのか?

 最初に伊集院君を襲った男の人もそうだけど、今私を探している女の人もなんなのだろうという疑問だ。

 これはこの前鏡華ちゃんが言っていた『悪意』に歪んだものなのだろうか?

 私は今日、鏡華ちゃんに自分の能力である予知夢について話そうとした。この能力が鏡華ちゃんの役に立てるならと思い告白を決意した。

 今回のこの状況……実は予知していた。2ヶ月前の話だけど。

 私の記憶上、この10分後くらいに鏡華ちゃんが放送室で何かして今暴走している人達を制圧する。その人達以外も巻き込んで……。この事件が終わる時、鏡華ちゃん含めてこの学校で立っている人はいない。

 気付くと廊下を走る音が消えていた。どうやら違う階に行ったらしい。

 私は鏡華ちゃんを探すために静かに教室のドアを開け、顔を出して廊下を確認しようとした。


「ロッカーから男子が出て来たと思ったら次は教室から女子が出て来ましたね」


 私は一瞬ビックリして、声の方向へ振り向く。

 そこにはいかにもガリ勉そうな男子がいた。


「ふむ。君はアルビノですか?」


 私は恐くなり真面目にも答えてしまう。


「そうだけど……」


 それを聞くと男子は私に近寄り、私の顔を殴った。私の頬に痛みが走り、私は勢いよく後ろに転がった。


「君は弱者ですね。わかりますよ。君はきっと今まで誰かに守られながら生きて来たのでしょう。なぜなら強者は弱者を守るものですからね」


 私は痛みが襲う頬に手を触れる。


「君からは強者に守られているような余裕、そしてそれを自覚しているような感じがします」


 私は男子を睨み付けて言う。


「いきなり何するの?」

「弱者の迫害です」


 私は悪寒を感じた。

 私は起き上がり、男子に背を向けて全速力で走った。


「全速力で逃げるのは弱者の証です」


 背後から背筋が凍るような声が聞こえた。

 恐いよ。鏡華ちゃん。

 ダメ! これ以上鏡華ちゃんに迷惑かけられない。

 今まで私は鏡華ちゃんに甘え過ぎてた。

 小学生の時もイジメから守ってくれた。4月の時も変質者から助けてくれた。球技大会の時も。私が転校させられそうな時も私のために勝利をもぎ取ってくれた。

 せめて鏡華ちゃんの足手まといにならないようにしないと!

 私は背後の男子に恐怖を感じながらも走るのを止めない。


「さっきの女みたいな顔の男は正に″窮鼠猫を噛む″でしたね。噛んでも猫はこの通り元気ですけどね。君は″孤軍奮闘″で″逃げるが勝ち″ですか? 例え弱者がどれだけ頑張っても強者には勝てませんがね」


 それは暗に逃げられないと言っている。

 そして私は背中に衝撃を覚える。

 背中を殴られ、その勢いで転んだ。そして男子は私の目の前まで歩いて来た。私が見上げようとすると、頭を足で思いっきり踏みつけられた。


****


 私は璃子を助けるべく階段を上ろうとすると2階の踊場から私を見下ろすように男子がポケットに手を突っ込み、煙草を加えて立っていた。

 彫りが深く明らかに日本人だが中東の人の顔にも見え、おそらく天然の茶髪をスポーツ刈りにして煙草を加えているためか中学生に見えない。一応、昼山中の制服を着ている。

 不意に甘さの中に一滴の苦みを混ぜたようなチョコレートのような香りが鼻孔をくすぐった。よく見ると男子が加えている煙草は煙が出ていない。まさか──


「シュガースティックのチョコ味?」

「正解だ。鏡華ちゃん」


 初対面なのにちゃん付けとは馴れ馴れしい。

 男子はシュガースティックを指で掴み続けて言う。


「中学生が煙草を吸うのは必要のない悪だからな。だけどそれじゃカッコ付かないだろ? やっぱり煙草みたいなものを加えとかないと不良として舐められちまうんだ」


 確かにシュガースティックを加えてカッコは付いてるな。カッコ悪いが。


「あんたは誰だ?」


 私は男子に疑問を投げた。


「俺か? 俺は3年4組喜界島翡翠だ。現在彼女募集中。よろしくな!」


 コイツ……思考が歪んだ奴か? はたまたただの一般人か? もしくは部外者か? 悪がどうのこうの言ってるから善が歪んだ奴か?

 まあ、今はこんな奴に構ってる暇はないな。


「先輩、私今急いでるんです。用がないなら退いてください」


 しかし、喜界島先輩は私を見つめ返すだけで退こうとしない。退く気はゼロらしい。


「いやいや鏡華ちゃんに用はあるんだ」


 私に用だと? そういえば神代が言ってたな。おそらく思考・強さが歪んだ奴は私を狙っているらしいと……。


「なるほど、あんたが私を狙っているという男子か。悪いことは言わない私と喧嘩はやめておけ」


 すると喜界島先輩はあからさまに不機嫌な表情になり怒りを露わにしている。そして威圧的に声を殺して笑うと言う。


「お前……今俺のことを侮辱しただろ」


 私は珍しく人に対して恐さを感じた。


「あんな粗悪品と一緒にするなよ」


 私は思い出す。悪神童のことを。私を見下ろすソイツは正にその悪神童のようだった。


「鏡華ちゃん、良い事──いや、悪い事を教えてやるよ」


 そんな事を聞いている暇はないのだが、なぜかコイツの言う事をは聞いておかないといけない気がする。


「奏ちゃんや獅子象の言う『悪意』によって歪むというのは間違ってね~よ。流石は北乃神社の巫女だな。だけど半分正解といったところだ」

「半分正解?」

「正確には奏ちゃんの推測した事は全部正解だ。だけどその推測はまだ半分しか出てない。鏡華ちゃんはなんで『悪意』はものを歪ませると思う?」


 おそらくこれは核心。私達が思っている『悪意』とは何かの核心。

 私自身はまだ『悪意』に歪んだものに関わったことが少ない。

 私は考える。

 喜界島先輩が言ってるのは所謂whyの部分だ。何度も考えたことだ。

 だけど、私の考えた仮説はどうもしっくり来ない。例えるならパズルだ。ピースは揃っているのに完成品はちぐはぐ。それは完成品にピースが足りなかったり、そもそも一部のピースが間違っていたりというもどかしさ。

 璃子の事もあるし、さっさと行きたい。だから私は以前から考えていた悪までも一番しっくり来る仮説を話す。


「『悪意』は善である人やものを歪ませてそのものを悪に導く、それ自体が目的だ」


 性善説というものがある。孟子の唱えた人の本性を善とする有名な説だ。人は元来、徳のベースとなる4つの根がある。仁義礼智。これらが発展して徳となる。つまり、徳こそが善となる説だ。

 私の仮説自体は至極単純なものだ。しかし、これが一番有力だと私は思う。

 喜界島先輩は肩をすくめるとシュガースティックを食べて、新たなシュガースティックを一本箱から取り出した。


「悪くない仮説だな。いや、むしろ良く考えたといえる」


 つまり正解ではないということか。


「お前の仮説は、カレーを作るはずなのにクリームシチューを作ったみたいな感じなんだよ」

「同じ材料でも作るものは違う……ということか?」

「そうだ。たぶんお前がその仮説を作った時に使った材料は俺達の定説の材料と同じだろうな。だがカレーとクリームシチューで例えるならルーが違う。だから出来上がるものが違う。お前ならここまで出せばなんとなくわかるんじゃね~か?」


 私はしばし考える。

 わかった。私の考えのどこを変えるか。しかし、それだけじゃ足りない。材料が。テンプレの材料の他にそれに仕立て上げるための材料。

 私は喜界島先輩を見上げて言う。


「まず喜界島先輩──達は一体なんですか?」


 喜界島先輩は涼しい顔で答える。


「俺──達ねぇ……。誤解すんなよ。俺はさっき俺達と言ったが俺″達″はお互いに組織的な繋がりもなければ親しい付き合いというわけでもねぇ。確かに俺″達″は似た者同士だがむしろお互い嫌ってる。同族嫌悪ってやつだ」

「私の質問に答えてませんよ」

「こりゃ手厳しい。そうだな~。俺″達″のこと教えると俺が危険なんだよ」

「じゃあ喜界島先輩のことを教えてください」

「それなら構わねぇ」


 そして喜界島先輩は悪意たっぷりの笑みで私を見下して言う。


「俺はお前を足止めするために時間稼ぎでお喋りをしてたんだ」


 すぐにすべてを悟る。

 嵌められたのか……!

 私は急いで階段を駆け出す。


「悪く思うなよ? これは鏡華ちゃんにとって必要な悪だったんだ」


 私はそれを無視してさらに階段を上る。


「さっきの質問だが、俺は純粋な悪……必要悪という存在だ」


 私は喜界島の言葉を聞き取った。

 私の中で『悪意』についてのパズルが完成した。

物語の核心部分、『悪意』とは何か?


喜界島翡翠は強キャラ臭を迸らせられたでしょうか?

相変わらずの語彙の少なさで文才以前に陳腐

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