突然の……お誘い
その日の夕方。
「佐伯」
「はい?」
「バーベキューするぞ」
「…………」
「マスター、いつも急ですね」
「お前の内定祝いだ」
「俺の?」
「そうだ」
「…………」
「ありがとうございます」
「もっと喜べ」
「喜んでますよ」
「そうは見えん」
「…………」
「いつですか?」
「今度の日曜」
「日曜……」
「どうせヒマだろ?」
「うっ、今度の日曜はヒマでした」
「じゃあ決まりだな」
「…………」
「友達も連れてきていいぞ」
「友達?」
「人数多いほうが楽しいだろ」
「…………」
友達……。
「…………」
ふと。
水瀬さんの顔が浮かんだ。
「…………」
水瀬さん……。
「…………」
誘ってみるか?
「…………」
バーベキューに。
水瀬さんを……。
「…………」
いや。
待て。
「…………」
なんて誘う?
「…………」
『今度、バーベキューするんですけど』
「…………」
いや。
普通だな。
「…………」
『よかったら、一緒にどうですか?』
「…………」
これも普通だ。
「…………」
いや、普通に誘えばいいだけじゃないか。
「…………」
なのに……。
◇
翌朝。
いつもの時間。
石段を上る。
「…………」
いた。
「おはようございます」
「おはようございます」
「…………」
よし。
「…………」
今だ。
「…………」
「水瀬さん」
「はい?」
「…………」
『今度、バーベキューするんですけど』
「…………」
「佐伯さん?」
「あ、いや……」
「?」
「…………」
何やってんだ、俺。
「…………」
「今日も暑くなりそうですね」
「……そうですね」
「…………」
違う。
そうじゃない。
◇
その日の午後。
大学。
「…………」
ノートを開く。
「…………」
『よかったら、一緒にどうですか?』
「…………」
違う。
今は講義中だ。
「…………」
前を向く。
「…………」
バーベキューに誘う。
ただ、それだけ。
「…………」
なのに……。
◇
翌朝。
「おはようございます」
「おはようございます」
「…………」
今日こそ。
「…………」
「水瀬さん」
「はい?」
「今度の日曜って……」
「日曜日?」
「…………」
いけ。
あとは誘うだけだ。
「…………」
「何かございますか?」
「…………」
「いや……」
「?」
「予定とか、あるのかなって」
「日曜日ですか?」
「はい」
「今のところは、特には」
「…………」
空いてる。
「…………」
なら。
誘えばいい。
「…………」
「そうなんですね」
「はい」
「…………」
何やってんだ、俺。
「…………」
「では、私はそろそろ」
「あ、はい」
「また明日」
「また明日」
「…………」
水瀬さんが歩き出す。
「…………」
あ。
「…………」
今言わないともう……。
「水瀬さん!」
「はい?」
「…………」
振り返る。
「今度の日曜……」
「はい」
「バーベキュー、するんです」
「バーベキュー?」
「はい」
「…………」
「バイト先のマスターが、俺の内定祝いに」
「そうなのですね」
「友達も連れてきていいって言われてて……」
「…………」
「それで……」
「はい」
「…………」
「よかったら、水瀬さんも来ませんか?」
「…………」
「私が……ですか?」
「はい」
「…………」
「ご迷惑でなければ……」
「迷惑なんて」
「…………」
「ぜひ、来てほしいです」
「…………」
ぜひ……。
「…………」
「では……お言葉に甘えて」
「本当ですか?」
「はい」
「…………」
「ありがとうございます」
「ふふっ」
「こちらこそ」
「…………」
「では、また明日」
「はい。また明日」
「…………」
水瀬さんが歩いていく。
「…………」
誘えた……。
「…………」
よかった……。
◇
境内へ戻る。
今度の日曜日。
バーベキュー……。
『ぜひ、来てほしいです』
「…………」
ぜひ……。
「…………」
私に……。
「…………」
ということは。
//妄想発動
『水瀬さん』
『はい?』
『こっち、座りませんか?』
『え……』
『隣、空いてますから』
「…………」
『ほっぺに何かついてますよ』
『えっ、そんな、こんなとこでダメです……』
「…………」
……あれ?
「…………」
その先は……。
「…………」
あれ……?
「…………」
おかしい。
前なら。
もっと簡単に描けたはずなのに。
「…………」
思い通りに描けない。
「…………」
もう、いつからだろう……。
「…………」
恋愛経験ゼロ。
妄想の中では恋愛無双。
何も、浮かばない。
「…………」
だけど……
日曜日が、待ち遠しい。




