第三十七話 「休日の寄り道と、小さな波乱」
俺は神代レン。
普通の高校生――だったが。
スキル《神核生成》で炎の擬神ソレイナが現れ、
自然の擬神ユシル、操りの擬神アヤネも加わり、
そして生徒会に入ることになった。
――神代家、俺の部屋。
「主様、そろそろ起床の時間です」
「……っ……もうそんな時間か」
まぶたをこすりながら体を起こす。
「主〜おはよ〜、よ〜く寝てたね〜」
「今日は休日だからな」
ベッドの上で伸びをする。
「主様、いつまでもだらけていては危険」
「アヤネの言うとおりですよ、主様」
「……はいはい」
二人に挟まれて、なんとなく逃げ場がない。
「そうか、そうだよな。ここにいても暇だし……たまには出かけるか」
「お〜、出かける〜?」
「あぁ」
「お供します」
「同じく」
「はいはい、好きにしろ」
◇◇◇
――商店街。
休日ということもあって、人通りは多い。
「……やっぱり目立つよな〜」
俺の前後左右に、幼女(擬神)が三人。
どう考えても普通じゃない。
「あぁー!」
「げ」
聞き覚えのある声。
「朝比奈」
「咲夜でいいよ、咲夜で」
「わかった、咲夜。ここで何してたんだ?」
「ん〜?散歩ついでに買い物かな?」
「なんだそれは……」
ふわっとした返事に思わずツッコむ。
「擬神ちゃんたちは、みんないるんだね」
「はい、それが任務ですので」
「はい、護衛することが仕事ですので」
「そ〜だ〜よ〜」
「ユシルちゃんは相変わらずね」
咲夜がくすっと笑う。
「ねぇ!一緒に行かない?散歩」
「あ、あぁ……まぁいいけど」
「やった!」
こうして、即席の散歩パーティーができあがった。
◇◇◇
「ここさ〜、クレープ美味しいんだよ!」
「食べられないんじゃなかったか?」
「私は食べる!」
「そりゃそうだろ」
咲夜は迷わず列に並ぶ。
「主様、あれは何ですか」
ソレイナが指さす。
「クレープだよ。甘いお菓子」
「甘味……」
少し興味がある様子。
「アヤネは?」
「私は不要です」
即答。
「ユシルは?」
「ん〜……食べれないけど〜匂いは好き〜」
「それで満足なのかよ」
しばらくして。
「はい!レンの分!」
「お、サンキュ」
咲夜からクレープを受け取る。
「……」
その様子を、三人がじっと見ていた。
「……な、なんだよ」
「主様、それは“美味しい”のですか?」
「まぁな」
「……」
ソレイナがほんの少しだけ近づく。
「……どうした?」
「……いえ」
でも、視線はクレープに固定されていた。
「……食べてみるか?」
「……よろしいのですか?」
「ちょっとだけな」
一口サイズで渡す。
ソレイナは恐る恐る口に運び――
「……!」
目を見開いた。
「甘い……」
「だからそう言ってるだろ」
「……これは、興味深いです」
真面目な顔で分析し始めるソレイナ。
「ね?おいしいでしょ!」
咲夜が嬉しそうに笑う。
その様子を。
ユシルが、ぼんやりと眺めていた。
「……なんかいいね〜」
「何がだよ」
「なんとなく〜」
「……そっか」
騒がしくて、ちょっと変で。
でも――悪くない。
そんな時間だった。
――その時。
アヤネが、ふと立ち止まる。
「……主様」
「ん?」
「微弱な振動を検知」
「……は?」
「地下……移動する“何か”」
空気が、わずかに張り詰める。
「……またかよ」
レンは小さく息を吐いた。
せっかくの休日。
でも――
「……行くか」
静かな波乱が、再び動き出そうとしていた。
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