6. 風魔剣士のエルフ
「頭強く打ったみたいだけど大丈夫ですか?」
「いっつ……、ああ……助かったよ。ありがとう」
盛大に頭から落ちたユウリは少女の手を借りて立ち上がる。
「むしろこちらが感謝してるよ。助けてくれてありがとう。助けてもらえなかったらどうなってたか。君は命の恩人ですよ」
「いえいえ」
「だけど銃弾は大丈夫ですか? 銃声からして大分使ったと思いますけど」
「心配ご無用だ。あれ最後の一発以外はぜんぶ合金だから財布には響かんよ」
九割はただの合金弾。トドメに使用した一発が鉄甲銃に使われる本来の銃弾だ。さすがに連発となると費用が嵩むため、普段は合金弾という、弾頭をただの鉄塊で作られた銃弾を使用している。本物を使用するのはその場の状況を見極めてからだ。
ユウリはキメラに叩き落とされたリボルバーを拾い上げる。
「よかったぁ。〝魔鉄鉱石〟を使った銃弾は高いからね」
安堵の息を漏らしてへたり込む女性。
「まあ、そういうことだから。俺も先を急ぐんでね。そこの魔石はあげるからこれで――」
ユウリが早々に立ち刺そうとすると、突然、少女は服の匂いを嗅いできた。そんな予想外な行動にユウリは驚いて思わず身を引いた。
「な、なにっ?」
「この火薬の匂い……、間違いないかも」
少女はそう小さく言葉を発した。
「君、不思議な香りがするね」
動揺するユウリをよそに女性ははにかんだ。なにかを確信したらしく、真剣な眼差しは真っ直ぐとユウリに向けられた。
「不思議な香り、ですか?」
命知らずといえばそうなるが、ユウリは理由を訊いてしまった。
「うん。とっても懐かしい感じのね」
女性は含みのあるような言葉を言いながらユウリを手を取り、
「私とパーティを組みませんか!」
曇りなき眼で緑髪のエルフはそう言った。
「パ、パーティ?」
なにされるんだ、と身構えたが、ユウリは意外な勧誘がきた。
「実は私の友達が依頼で迷宮にいったっきり帰ってこなくて。それで一人で捜索に来たはいいけどキメラに襲われて。この後も不安だし、もしよかったら一緒に来てくれませんか?」
ユウリは少しだけ考え込む。
「……。ちなみに場所は?」
「〈アグラナ山脈〉っていう鉱山迷宮なんだけど」
「おっ、マジ? いくいく。丁度俺もいく予定の場所じゃん。ついでに俺の用事も手伝ってもらうことになるけどいいかな?」
不幸か幸運かさなかではないが、目的地が同じなのであればユウリも断る理由はない。
「よかったぁ。一人で迷宮へいくのはちょっと不安だったんだから助かるよ」
「それでよくいこうと思ったね」
「友達が大変な目にあってるのになにもしないわけにいかないでしょ?」
単純で明快な回答だった。友達思いの良い子だねぇ、とユウリは思いながら口を開く。
「それもそうだな。自己紹介が遅れた。俺はユウリ・ランディアだ。職業は〈付与術師〉のB級冒険者。支援系だが、接近とかも得意だ。気軽にユウリでよろしく」
ユウリは軽く自己紹介をした。
「私はセシリア・エルフィルロス。職業は〈風魔剣士〉のⅮ級冒険者。風精霊の加護を受けるエルフの一人です。セシリアって呼んでね。こちらこそよろしく、ユウリ」
胸に手を当て、そう紹介してくれたセシリア・エルフィルロス。ワンサイドアップの長い緑髪と琥珀の瞳。スタイル抜群、鎧の上からでもわかる大きな胸に引き締まった腰回り。しっかりした体格だ。一六五センチほどの身長。年上ならではの雰囲気を漂わせながらもあどけなさが残る容姿。垢抜けたエルフ。革製の防具に長剣一本が彼女の装備だ。
エルフだからすごく美人だ。うん、花丸満点。とユウリは心の中で親指を立てた。
「髪が緑色なのは精霊の力を宿しているからか。噂では聞いてたけど初めて見た」
本来の職業は〈魔剣士〉なのだが、特定の力を有していると〈風魔剣士〉のように名前が変化する。非常に稀だが、精霊核を有しているエルフなら発現しやすい職業だ。
「精霊核を有してるエルフは、なかなか国を出ないからね」
元々エルフは金髪碧眼が一般的な外見だ。だが、精霊の力、精霊核を宿すエルフは外見の色が異なるとのこと。今回の場合は風精霊なので緑系統だ。瞳は差異あり。
生きているとこんな出会いがあるんだな、と小僧なりにユウリは思った。
「んじゃ、ちゃっちゃといっちゃいますかね」




