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19. 『アクティブに』

アクセスありがとうございます。

 

 迷宮攻略は順調に進んだ。二層、三層、四層、五層と湧き上がる魔物を蹴散らし、次々と階層を重ねていく。かなり早い段階で進行度は中盤に突入した。


 普通の冒険者なら階層を重ねるごとに慎重になり、休憩と点検を欠かさない。確実に踏破を目指すための事前準備だ。だが、ユウリたちはそれを完全無視して攻略している。


 セシリアの身体強化による圧倒的な速度と攻撃力、ラリアの膨大な魔力量による魔法の連続行使と範囲攻撃魔法、そしてユウリの補助魔法による魔力回復、武器補助、身体強化で負担を軽減することにより、型破りな戦法でも最速攻略が実現していた。


 それに大半の魔物がスケルトンで数も少なく、倒すのは容易だった。

 だが、それも中盤に入ってからはそうもいかなくなった。


「魔物がだいぶ増えてきたね」

「ですね。ざっと四〇体ぐらいでしょうか」


 セシリアとラリアは押し寄せる魔物の大軍を見て、平坦な声音でそう言った。


「無理そうなら一度引いてもいいぞ」


 ユウリは彼女たちの体力を心配して提案する。


「いえ、平気です。魔力はまだまだ余裕です」

「私もまだまだいけるよ」


 二人はそう言って武器を構える。


「それに、上の階層からも魔物が降りてきて後退した後が怖いです」


 上から降りてくる魔物の中には武装したヤツもいた。とくに弓矢を所持している魔物が多い様子。まあ、大半がスケルトンだが、遠距離からの攻撃は剣士のセシリアには不利だ。


「さすがにキツイか」

「セシリアなら大丈夫ですよ」


 手をかざすユウリにラリアは平坦な声音でそう言う。すでに塔の端で配置を終えたスケルトンが弓を構え、矢を引き始める。それと同時に前線で暴れ回るセシリアは足を止めた。


「――風よ!」


 セシリアの言葉に呼応するように大気が揺れ動き、彼女を軸に風が巻き起こった。

 それと同時にスケルトンから放たれた矢が飛翔する。だが、矢は彼女の間合いに入った瞬間、風にいなされ、勢いをなくして宙を舞う。


「さすがだな。風の精霊核を有してるだけはあるな」

「まだまだこれからですよ」


 本来は精霊を使役することで使用可能な力だが、その精霊の力を内包する宿主、その一人であるセシリアは魔力が尽きないかぎり精霊の純粋な力を自由自在に扱える。

 今のセシリアは風とともにある。


「いくよ!」


 セシリアはそう叫び、中段の構えを取る。彼女を覆う風は剣に収束していき、小さな暴風が生まれる。カタカタと震える剣を抑え込みながら、力強い声とともに振り抜いた。一気に開放された力は爆発的な風を巻き起こし、魔物の大群を薙ぎ払った。


「わお、一掃……」


 大量にいた魔物がセシリアの放った一撃で蹴散らされた光景は圧巻の一言。呼吸を整えた彼女はユウリたちに振り向き、清々しい笑みを浮かべてでピースサインを送った。


「あれがセシリアの実力です」

「すごいねぇ。すごいけど……」


 ラリアの言葉に、呆けた表情で返答するユウリは、セシリアの死角から隠れて狙うスケルトンを見て脱力した意識を引き締め、体全体に魔力を循環させる。


「ちょっ、なんでそんな怖い顔で見るの!?」


 驚くセシリアの奥にいる魔物に狙いを定め、ユウリは懐から素早く拳銃のM&WR8を引き抜いて射撃。弾丸は放たれた矢を巻き込んでスケルトンを撃ち抜いた。

 呆けるセシリアを見ながらユウリは銃をホルスターに戻す。


「気を抜くにはちょっと早かったな」

「ごめん、ありがとう」


 幸い怪我がなかったことにユウリは安堵の息をつく。


「先は長いなぁ」


 ユウリは天井を仰ぎながら呑気に言う。


 攻略は続く。上層へ登るにつれて時間がかかるようになったが、苦戦するほどでもない。

 だが、二、三階層ほど登った瞬間から内部の構造に変化が見られた。階層中心には魔石が存在するが、その上に巨大なクリスタルが悠々と回転しながら浮遊している。


 クリスタルが発光すると同時に、魔物が無制限に湧くようになったのだ。

 さすがに魔物を無双するだけではいかなくなった。


「俺も前に出る。セシリア、あのクリスタルを破壊するぞ!」

「わかった!」


 ユウリは肩にかけていた《鉄甲銃》のベルトを首に通し、腰に装備していた二本の片刃のショートソードを抜刀し、セシリアとともに床を蹴って魔物の軍団へと肉薄する。


「援護します! ――〈エアブロウ〉ッ!」


 ラリアの魔法によって引き起こされた強風が魔物を蹴散らし、クリスタルへの道が開かれる。ユウリとセシリアは残党を斬り倒しながら直進する。


 瞬間、遠距離から光弾が床に着弾し、セシリアの足を止めた。


「――ッ! リッチ!」


 光弾が飛翔してきた方角を見たセシリアはそう叫んだ。


 リッチは、魔法を得意とするアンデットの一種。初級の魔法なら無詠唱で行使可能で大分洒落にならない威力を持つ、非常に厄介な相手だ。奴らがいるかぎり、クリスタルに近づくことは容易ではないだろう。とくに剣士であるセシリアとの相性が悪い。


 ユウリが見渡すかぎりでも六体のリッチが視認できた。


「予定変更。俺が遊撃に回ってリッチを片づける! その間にセシリアはできるだけクリスタルのところまで近づいてくれ!」

「了解!」


 ユウリは横に逸れ、右手のショートソードを納刀し、変わりにM&WR8を引き抜き、近場のリッチへ向けて発砲する。


 だが、弾丸はリッチに被弾するとともに火花が飛び散るだけで無傷だった。


「防御魔法か……」


 リッチを狙いを定めたせいか、すべてのリッチがセシリアではなくユウリへ敵意を向けた。一番の脅威と判断されたのだろう。魔法を行使して光弾を射出していた。ユウリは即座にM&WR8をホルスターに戻し、『虚空倉庫』からS&WM500を取り出す。そして、光弾を左手のショートソードで弾きながら近場のリッチに肉薄し、


「――〈キーンエッジ〉」


 武器強化魔法を施したショートソードで、リッチが向けた杖を弾き、リッチを斬り捨て、飛んできた〈ファイヤーボール〉を受け止める肉盾にして次のリッチへ突き進む。


 群がるスケルトンを薙ぎ倒し、魔法を回避しながら階層内を駆ける。そして、ほかの魔物と被らない位置に着き、撃鉄を引き起こし、射程内に入ったリッチに向けて射撃する。


 バンッ、と発砲音とともにリッチの防御魔法を貫通して爆散した。


「げっ、もろっ。これなら斬ったほうがマシだな」


 リッチの後ろ、壁に空いた巨大な穴を見ながら言う。強力な《鉄甲銃》の一撃は、対象が苦戦する強敵になりうる場合のみと決めている。しかし、相手側の肉体が《鉄甲銃》の弾丸に耐えれないほどに脆いとなると少々もったいない。


「けど、そんなことも言ってられんよな」


 仲間の二人を見てユウリは溜息交じりに左手のショートソードを納刀しながら撃鉄を引き起こす。ユウリはリッチ同士が重なる位置に移動し、発砲して二枚抜きする。そして、魔物の強襲を回避しつつ再度撃鉄を引き起こし、残りのリッチを撃ち抜く。発砲の衝撃に奥歯を噛み締めながらリッチの討伐を確認し、一息ついた。


「こっちは終わった! あとは頼んだぞ、セシリア!」


 ユウリはクリスタルに向けて直進するセシリアに大声で伝えた。


「まっ、かせて!」


 目の前の魔物を片づけたセシリアは跳躍してクリスタルに強烈な一撃を叩き込んだ。

 だが、視えない壁に阻まれ、ギイィン、と鉄を削るような激しい音を出して弾かれた。

 宙に投げ出されたセシリアは「えっ!?」と驚愕しながら、態勢を整えて着地する。


「ごめーん! 無理っぽーい!」


 セシリアからお手上げのお知らせが階層内に響く。

 ラリアも続いて高出力の土魔法を行使し、〈ストーンキャノン〉を射出して破壊を試みるが、やはり見えない壁に阻まれてしまった。


「ダメですね。私の魔法でも破壊はできそうにないですね」

「……、」


 セシリアとラリアの二人はそう言うが、見えない壁にヒビが入っている時点で破壊ができそうに伺えた。しかし、高出力の攻撃を連続で出せるわけでもなく、次の攻撃を繰り出すときには見えない壁は再生してしまう。


「まあ、仕方がないか――って、おっと!」


 背後から武装したスケルトンの奇襲を避け、群がり始めたスケルトンの攻撃を避けながらユウリは、シリンダーからカラ薬莢を排出し、銃弾五発を宙に投げ、横殴りの用量で再装填する。死角から現れたスケルトンの攻撃を「わおっ!?」と上擦った声を上げながら身を引いて回避し、わずかな隙間を通り抜け、クリスタルへ発砲する。


 その一発でクリスタルを覆う見えない壁を軽々と破壊し、クリスタルを破壊した。

 クリスタルは光を失い、すべての魔物は黒に染まり、塵になって消えていった。


「終わった?」

「いや、まだ上から降りてきてるぞ」


 セシリアの言葉に、ユウリは階段から降りてくる骨の音を聞きながら答える。

 現在到達している階層は、魔物の源泉とおぼしきクリスタルは破壊されたことにより機能を完全に停止している。だが、上の階は湧き水のように魔物が湧き出ているようだ。


「休む暇もありませんね」


 平然とした表情のラリアは、魔物が降りてくる様子を見ながらそう言った。

 その隣でユウリは銃のシリンダーを開き、残弾を確認しながら溜息を吐く。


「……あと四発か」

「前回の《魔鉄鉱石》はどうしたのですか?」


「加工が間に合わなくてな。その辺の店で買ってこようとは思ったんだけどな」

「なにか問題でも?」


「《魔鉄鉱石》がまた値上がりしててなぁ。それに伴って銃弾も」

「それはまた、難儀な話ですね」


 世間話をしながらシリンダーを閉じて『虚空倉庫』に格納した。


「節約できるように私も努力するからね!」


 まだまだ元気なセシリアから頼もしい言葉を投げかけられてユウリは笑う。


「まっ、なんとかなるだろ。いざとなったら奥の手を使うさ」


 正直あまり気乗りしない奥の手だが、最悪の想定も踏まえて動かないといけない。ユウリの中で守ってきた約束を破ろうとも。


「その時は頼りにしてるね!」

「頼らないように善処しましょうね。セシリア」


 他愛ない会話を終えたユウリたちは《体力魔法薬(スタミナポーション)》《魔力回復魔法薬(マナポーション)》《治癒魔法薬(ヒーリングポーション)》を飲み、解けかけている強化魔法をかけ直して準備をする。


 迫り来る魔物を見上げ、三人は武器を構えた。


読んでくださりありがとうございます。

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