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11. うっかり

 戦利品を回収した後、ミノタウロスの死体を焼いて処分した。


 戦闘の後処理は空間の端に寄せて山にするだけ。時間が経てば迷宮が魔力に変換して吸収してしまうので異臭や病、アンデット化の心配がない。


「さて、と。早速採掘を始めましょうかねぇ」


 ユウリは戦利品をし終えて、鶴嘴を取り出して肩に担いだ。


「そのツルハシ、普通のじゃないよね?」

「あ、わかる? ドワーフ御用達の魔導具の鶴嘴(つるはし)さ」


 弾丸の材料となる魔鉄鉱石を大量に採掘する際、重宝している鶴嘴の魔導具は、小さな力でも硬い岩盤を砕き、鉱石採掘という重労働を楽にできる便利な道具だ。


 意気揚々と採掘の準備をしているユウリに、杖を構えたラリアが近づく。


「では、ユウリ。私の魔法でお手伝いします」

「ああ、いいよ。ラリアは温存のために休憩してて。それと、セシリアもな」


 横でやる気満々にしているセシリアを指を差す。


「私はまだまだ元気が有り余ってるから平気。それに元々お手伝いをする気でいたし、ユウリだけにさせるわけには――おっ、とと、とっ!?」


 後ろに倒れそうになるセシリアを、ユウリは背中に回り込んで支えた。


「ほれ、今日の功労者はなんだからしっかり休めぇ」

「うぅ……ゴメンね。手伝うって約束したのに」


「気にすんなよ。それより大丈夫か? 体調とか、気分とか」

「体に力が入らないのと、気怠い感じがあるくらいかな。ちょっと休めば平気」

「あいよ」


 ユウリは、置く動作をするとともに、虚空から折り畳み式の小さな椅子が現れ、そこにセシリアを座らせた。そして、ラリアの分の用意して座るよう促した。


 儲けた休憩スペースの中心に虚空からオイルランプを取り出して置く。


「さーて、功労者の皆様の鋭気を養ってもらうには、なにが良いかなぁ」


 手袋を外したユウリは手をすりすりしながら、置く動作とともに、虚空から調理器具や食材を取り出し、湯を沸かしている間に食材のレモンを切り、沸いたお湯で紅茶を淹れ、切ったレモンと蜂蜜を突っ込んでかき混ぜる。


 ぱぱ、と、手際よく調理していく。


「ほれ、あとこれもあげる」


 ユウリは手から〝体力魔法薬(スタミナポーション)〟を瞬時に出して手の届くところに置く。


「ユウリ、今どうやって出しましたか?」


 ラリアが目を見開いて訊ねた。


「え、手から?」

「そうですが、そうではなくて! 瞬時に手から物が出てくる事態おかしな話ですが、ユウリのそれ、魔法か魔術の類ですよね!」


「うーん……、……あたりだ。これは刻印魔術の〈インベントリ〉だ」


 一瞬、ユウリは言うのをためらったが、彼女たちなら問題ないと思って打ち明かした。今回ばかりは、いつもの感覚で普通に使ってしまった自分が悪い。


「有体に言うと〝魔法之鞄(マジックバック)〟だな。上限とか制限はあるけど、瞬時に収納と取り出しが可能だ。人や魔物、生き物とかは無理だな」


 刻印魔術である〈インベントリ〉を軽く発動し、手から腕にかけて刻まれた刻印を浮き出させて見せた。すると、即座にラリアが手を取った。


「すごい! こんなのオーバーテクノロジーじゃないですか! 魔導具? アーティファクト? 専用の道具が必要だと聞きますが、これを私に教えてもらうことはできますか!」


 魔法関連になると興奮するんだな、とユウリは思いながら少し困った。


「ああ………………すまん。他人に刻んでもらったから教える方法がわからないんだ」


 暗に、教えるわけないじゃん、と意味合いをユウリは込めた。


「そ、そうですか。無理を言ってすみませんでした」


 先程の勢いを失ったラリアは肩を落とした。


「………………、」

「……。そんでさ。そろそろ手を離してほしいんだけど?」

「え? あ、ああ! す、すみません! 気安く触ってしまって!」


 気づき、慌てて距離を取るラリア。


「あら、ラリアったら大胆」

「ちっ、ちが、私は!」

「ホントにぃ?」

「本当に違います!」


 必死に否定すればするほど、セシリアは含みのある笑みを浮かべた。


「狙うほどの気持ちなんて毛頭ありません!」


 その言葉は普通に傷ついた。ユウリは否定されるだけ気分が沈むが、ホント仲いいな、と呑気に思いながら、できあがったレモンティーをコップに注ぐ。


「はーい。できたよー」


 レモンティーを二人に渡すと、「ありがとう」「ありがとうございます」のお礼を貰った。


「温まるぅ」

「そうですね。それに、とても美味しいです」


 それはなにより、とユウリは思いながらボウルに移したクッキーを取り出し、


「お茶請けにバタークッキーでもどうぞ」


 中心に置いた。


「えっ、良いんですか? 随分と高そうな菓子に見えるのですが?」

「そんな大層なもんじゃないよ。バターなんて塩突っ込んで振ればできるし」

「そういうわけじゃ」

「んじゃ、ごゆっくりぃ」


 呼び止めようとするラリアを無視して、ユウリは足早に採掘ポイントへと向かった。


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