85.暴風の鋼爪
シルヴィアがついに……
男達は、それぞれ天と地を駆けていた。
互いに《テレパシー》で状況を伝えつつ、裏道を通っている。
それこそ、彼らは金で雇われた傭兵なのだった。
「そっちは如何だ」
「こっちはいないねー、相棒」
「必ず探し出せ。俺達への依頼は……」
「わあってるって。ガキ一人、殺すぐらいだ。たわいもない」
男の一人は割れっていた。
彼は暴風を操る、暴風の魔術師。
他の全てを捨て、暴風に全てを託した男だった。
「それに俺たちが負けるはずがないだろー」
「それはそうだな。だが、油断するなよ」
「わあってる、わあってる。んじゃあな」
そう言って、《テレパシー》を解いた。
そんな時だった。
まさにちょうどだった。
「《鋼鉄の糸》」
男は避けられたはずだ。
しかし気づいた時にはもう遅く、避けることはできなかった。
だから男は避けなかった。
「一発は受けてやる。だが次はない」
「その一発が全てを決めるんだよー」
そう言って、少女の声がした途端、男の左耳が打ち付けられた。
痛い。それすら通り越して、激痛を呼び寄せる。
けれど男は一瞬、唇を曲げただけで、すぐに無表情になる。
「くそ、左耳をやられたか」
「へぇー、数ミリ体をよろけさせたんだ。流石に強いね、聞いてた通りだ。面白そうだねー」
建物の影に隠れていた少女が出てきた。
そこにいたのは、オレンジ色の髪をしたライラック色の瞳を持つ少女だった。
しかし、顔色はいつもとは違う。
飄々とした笑みはなく、怖い顔をしていた。
※※ ※ ※ ※ ※ ※
空を駆ける男がいた。
その体には暴風が宿り、超高速で、移動していた。
姿を見ることはできず、ましてや近づくものは皆、塵となった。
「ふっ、はぁっはぁっはぁっはぁー! 俺は暴風、誰にも止めることはできないんだよなー」
「そうはさせないわ。《スキャッター・ウィンド》」
急に暴風が解かれた。
否、暴風の魔術は発動しているが、風が散らされて、飛べなくなったんだ。
男は何が起きたのか、パニックになると、真っ逆さまに落ちていく。
「なめるなよー。俺の暴風は止められねぇんだ」
そう言いながら、下向きに風をぶつけた。
建物の屋根が弾け飛ぶ。
瓦の一部が砕けるが、男は関係なしと言うべきか、にやにやしながら、頬の血を舐めた。
「へぇー。俺に傷をつけるなんてなー。誰だー? 何処のどいつだぁー?」
「暴風の魔術。《テンペスト》ってことよね。許せない、風を悪用するなんて。師匠の魔術を冒涜されてるみたいで、腹が立つわ!」
そこにいたのは、シルビア色の瞳を持つ、銀髪の少女。
その身には風を纏っていて、渦巻いているのが、見て取れてわかった。
それは、彼女が風の魔力に愛されている証拠だ。
「なんだぁー、お前。まさか、お前みたいなガキが俺の魔術を妨害したって言うのかー? 面白れぇなー、今の魔術師はぁー」
「まさかライみたいな話し方をする大人がいたなんてね。それにしても、かなり横暴な魔術師みたいね」
「なに言ってんだ。魔術師は、暴力的なもんだろぉー」
「それは違うわよ、全部を一緒にしないでくれるかしら。それに、私はそんな使い方をする風の魔術は、あまり好きじゃないのよね」
「俺には暴風の魔術しかねぇからなぁー。それで、嬢ちゃんも、風の魔術を使うんだなー。面白れぇー。面白れぇよ!」
男は笑っていた。
それが、かなり憎悪を引き立てていて、シルヴィアはその憎悪に触れた結果、体を強張らせる。
しかし、シルヴィアは負けなかった。
その眼光は鋭くて、男を睨み返していた。
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