60.《クリアシールド》
ルカも目を見張る最強の防御魔法使い。
ルカが発動した、《クリアシールド》。
強力な魔法であり、かつてルカがとある少女と一緒に開発した魔法だった。
彼女は、名前をクリアと言った。
クリアの部分はそこを由来とするが、これを知っているのはこの二人だけ。この魔法を知っているのも、ルカとクリアの二人だけだった。
クリアは防御系、特にバリアが得意な女の子だった。
バリアを使う魔法使いは当時からあまり多くはない。そのため当時呼ばれていた異名は、障壁の魔法使い。彼女に通用する攻撃などはなく、出力的にもセレナと並んでいた。
何度も視線を潜り抜け、最後あった時も生きていた。
今思えば懐かしいが、ルカはこの魔法を披露してことに、嬉しく思った。
「魔法だと? 笑わせるな」
「笑わせるなか。それはこっちのセリフだよ。少しは張り合いがあるかと思っていたけど、そうでもなかった。がっかりかな?」
ルカはさらに男を煽った。
それもそのはず、この魔法を使ったことには嬉しかったが、まさか最大出力がこの程度だと、かなり頭を抱える。でも一つ面白いこともあった。
「貴方、まだ本気出してないんでしょ?」
「はぁ!?」
「悟らせない戦法は、かなりいいと思うよ。本気を晒して、それを打ち砕かれたら、きっと心が壊れちゃうから」
ルカの言葉は男の心にぐさりと突き刺さる。
流石に本気を出していないことは確かで、ルカは少し張り合えそうで楽しかった。それにしても、面白い。この千年間で、魔法は衰退した。しかし、おとぎ話の産物は魔術として根付き、千年前に匹敵するような魔術師たちもいることが判った。それが何よりも収穫で、楽しかったし、嬉しかった。
「この時代の魔術師は凄いよ。過去の魔法使いに匹敵するものがある」
「なにを言っているんだ」
「昔はもっと殺伐していた。私が眠ってから、なにがあったのかは知らないけど、それでも今の魔力はちょっとぬるい。でも、皆んな強くて、最高に楽しいんだ。だからね」
ルカの目が本気になる。
「だからこそ、私は負けたくないんだよね」
ルカは男に距離を詰める。魔法使いとしても、魔術師としても、負ける気はない。
だからこそ、ルカの目が色づいて、胸の奥底からたぎった。男は攻撃を防ごうとして、両腕を前に出すが、ルカの前にはそんなものは効かない。
「甘いよ!」
「ナガァ! 下からアッパーだと!」
「うん。魔術師でも、体術ぐらいはできないとね」
ルカにはこれがあった。
例え、魔法が魔術が打ち破られようが、ルカは魔法使いや魔獣程度なら拳で倒せる。だからこそ、ルカは両刀であり、強いんだ。戦闘においてはね。
「ぐはぁ!」
男は地面に仰向けで倒れる。
口から端を吐き、白目をむいて泡を吐くが、助は誰も来ない。ルカが《サイレント》で音を消しているからだ。
倒れた音も聞こえず、朦朧とする意識の中で、ルカは馬乗りになると、男にこう言い聞かせた。
「はい、弁償代ちゃんと払ってよね。それと、なんで逃げたか、教えてくれるよね? そうしたら助けてあげるよ」
ルカはにこやかに笑みを浮かべる。まだ怒っていた。
だけど男にはすでにまともに口を開くだけの余裕はなく、恐怖ではない何か、見えない悍ましさに憑りつかれていて、ルカに縋りたくなっていた。つまるところ、ルカに悍ましさを抱いたのではないらしい。では誰に、何故? その理由はわからないが、男の口からは「俺はやり遂げたんだ。これはあいつの依頼だ」と口にしていた。
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