29.螺旋階段の地下深く
螺旋階段って、怖くないですか?
噴水提が変形した。
刻まれていた魔術が覚醒した。のではない。昔封じていた魔法の跡を、何者かが経年劣化によって弱っていたために無理矢理こじ開けたのだ。
正直詰めが甘かった。
まさか噴水提自体が欠けるなんて。
誰が思うというのか、ルカは深く深ーく溜息を吐き散らしていたのだ。
「まさか学校の地下深くに。しかも噴水の真下にこんな大規模なものが隠されているなんて。知らなかったわ」
シルヴィアが関心を深める。
「よく解ったわね。こんなの」
「私もそう思うよ。下はどうなってるのかな」
ルカもこの魔法が刻まれていたのは知っていた。
しかし入り口になっていたり、この下が如何なっているのかは全く知らない。
そこでルカも若干の興味はあったが、やはりそれすらも上回るほど、怒りの色が漏れる。
「だけど他人を苦しめるような、それこそ関係のない人まで……許せないや」
「ルカ?」
「行こう皆んな。この先に何が待っていようと」
古い小説の終わりのような期待値を煽る発言。
だけどそれは同時に落胆でもある。それがよく解っているから、ここで躊躇うのも仕方ないが、誰も戻る気はない。
だって、自分たちの身を守るためにもやらないと駄目なんだもん。
※※ ※ ※ ※ ※ ※
ルカたちは意気揚々と入り口をくぐった。
その矢先のことだ。
「へぇー、かなり湿ってるのにカビがあまり生えてないわね」
「ほんとだー。何でだろ」
「さぁね。でも考えられるのは、定期的に誰かが入り浸っているとか」
「誰かって?」
「そこまでは」
そこでルカは口をつぐむ。
さらに下から気配を感じた。しかも二つ。やっぱり先客がいたか。
「如何したのよ、ルカ」
「いや、誰かなぁーって」
「誰かって、まさか犯人! きゃぁっ!」
シルヴィアは落っこちた。
とっても可愛らしい悲鳴を上げて落っこちた。
「痛っぁ。もう、なんでこんなところに穴が」
「大丈夫?」
「ええ平気よ。でもなんでこんなところに、おっきな穴があるのかしら?」
シルヴィアは首を傾げる。
するとそこに空いていたのは巨大な穴。だけどシルヴィアが落ちていないから、落とし穴とかの罠類じゃない。それに一つ一つに段差と平らな面がある。板張りではなく、岩を直接削って天然の階段を造ったみたいだ。
だけど、
「これって螺旋階段? 危なかったね。落ちたら真っ逆さまで死んでたよねー」
「怖いこと言わないでよ。でもライ。つまり下に行けるってことよ。ルカの言ってたことも納得したわ」
「確かにねー。でもさ、一体誰が犯人なんだろ」
「それは判らないけど、とにかく行ってみよう」
先導するのはルカ。
手を添わせて壁伝いに螺旋階段を降りていく。
かなり深い。体幹だと、地下三階から五階はある。つまり、十数メートル降りたことになるが、
「全然見えてこないわね」
「そうだねー。でもさ、何か宝探しっぽくない?」
「確かにそうよね。でも、気を張りなさいライ。この先何がいるかわからないわよ」
定番に聞こえそうだけど、凄く強い言葉だった。
ルカは経験者のような発言をしたシルヴィアに感嘆としたものの、すぐに研ぎ澄ます。
「確かに気を張るのはいいことだけど、張り過ぎもよくないよ。そのムラの性とか、逆に煽って気づかれるかもしれない」
「そうなの?」
「へぇー、よく知ってるね」
「経験したからね。何度も死にかけた」
だけど昔のことだ。歴史的には。
でもルカの中でもついこの間のように体験し、魔獣との戦闘では特に厳しかったことを思い出す。
「あれは嫌だった。思い起こしたくもない」
「「はい?」」
二人は話に乗り遅れる。
だけどルカはそんなこと構ってられずに、それから話をスッと戻すと、さらに気配を薄める。
限りなく薄めた気配を手繰り寄せ、下にいるであろう二つの気配を図ると、どうやら二人目は見知ったものだと察した。
「まさかね」
何だか厄介なことになってきそうだ。
でもそれは後の話なので、今は関係ない。
未来の自分に後悔を与え、今は突き進むしかなかった。
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