23.本の整理は大変です
ティテゥスさんは、思いつきで考えたキャラです。
ルカたちは図書室の本を片っ端から調べていった。
アルカード魔術学校の所蔵している本の冊数はかなり多い。そんな中から、狙った本を探すのはかなりの重労働で、現にルカたちは……
「ど、どれがその本なのかな?」
「分かんないわね」
「はぁー、疲れるの嫌だなぁー」
かなりへばっていた。
ここまでざっと一時間が経過した。しかし何も進展していない。この一時間かけて見つかったのはたったの三冊。
当然と言えば当然の結果だけど、あまりに忙しい。と言うか、
「目が回るのが厄介よね」
「そうだね。流石にこの数じゃ……」
正直魔力を辿れば必要な魔導書は簡単に見つけられる。
だけどそれ以外が問題だ。微かに含まれた魔力を感じ取っても、それが誰が触れたかまでは流石に厳しく分からない。
それは決してルカが優れていないからではない。
何故ならここは魔術学校。まだまだ未熟な魔術師の卵ばかり。要は魔力の垂れ流しが頻繁に起こる。たまに保健室で休んでいる生徒もいるらしく、魔力切れが起こりやすかった。
そんな中、ルカたちが作業をしていると誰かが声を掛けた。
「大変ですね、皆さん」
「「「えっ!?」」」
そこにいたのは教師の一人だった。
とは言っても教えたりする人じゃない。この図書室の管理と案内を任されている、つまりは司書の先生と言うことになる。
その証拠に、他の先生方とは異なっており、前掛けとしてエプロンをしている。おそらくナタリーの趣味趣向だ。
「ティテゥス先生」
「私は先生じゃないけど、何かな?」
そんな中、最初に口火を切ったのはシルヴィアだった。
一体何を言い出す気か。そう思ったのは無粋だった。
「ここにある本ってどうやって管理しているんですか?」
「あっ、そっち聞いちゃうんだ」
「聞いちゃうわよ」
いやいやそんなドヤ顔されても困るんですが。
ルカは唇をひん曲げた。
「それで如何なんですか!」
「そんなに食い気味にならなくても大丈夫ですよ。そうですね、例えば私はこうしていますよ」
ティテゥスは右手を前に押し出した。
すると掌が淡い水色に包まれ、魔力が集約されていた。水が合わさったみたいな挙動。これは何が起こっているのか。ルカ以外には分からない。
しかしそれを皮切りに、周囲の本たちは動き始めた。
ガタガタガタガタ——
本棚から本が滑り落ちる。
それから宙に浮いた。青い魔力に包まれて、飛び回る。シルヴィアたちは目を丸めていた。
「凄いわね、ライ!」
「ほんとだねー。糸も使ってないのにさ」
指でそっと撫でるライラック。
しかしルカだけはそんな高貴な目では見ていない。この魔力の流れ。しかもこの明らかに隠蔽している感覚。間違いない。これは魔術と偽装した魔法の一種。固有魔法を魔力圧に乗せた応用技巧だ。
(この人できる。でもなんで、こんなところに……ってそっか)
すぐに察しがついた。だってここはナタリーの根城だ。
要はナタリーの用意した、魔導書の管理役。そう考えるのが妥当だった。
「こんな感じですね」
「「凄ーい!!」」
シルヴィア&ライラックは目をぼんやり見開く。
ルカは無言のままでティテゥスを見ていた。
「この青い魔力ってもしかして……」
「ティテゥス先生のー?」
二人にも見えているのか。意外だ。
魔力を見るのって結構大変だ。魔力を感知して捉える方が難しいけど。
「お二人は見えるんですね」
「魔力ですか!? 少しだけですけど」
「そうだよー。それになんか水っぽいねー」
「そうですね。これは水ですよ」
「「そうなんだぁー」」
やっぱり水だった。
ルカの予想は当たっていた。この先生の魔術は魔法を応用した技巧を取り入れており、水を伸び縮みさせて腕のように扱える。
それに加えて、風系統の魔力も適宜混ぜていて面白いと思った。
「それじゃあ先生、ここにある魔導書は全部位置も分かるんですか?」
「えーっと、多少は?」
「じゃあこの本もですか?」
ルカはさっき落ちていた本を見せた。
それは魔導書だ。黒い魔導書。その本を見たティテゥスは目を見開くでもなく、驚いた顔をして、
「その本、読めますか?」
「一応は」
「そうですか。では……」
「「読まない方がいい」」
二人はハモッた。
お互いに思うことは同じだったが、それと同時に最近になって誰かが読んだ跡が残っていたのが、また不振感を煽っていた。
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