175.煮詰まったニオイ
意味深な話です。
ルカは強烈な臭いニオイを嗅ぎつけた。
あまりの異臭に他の人たちも気が付き、この場から立ち去る。
けれどルカだけは立ち去ることはなく、レポートを書いているふりを続けた。匂いの発生源を辿る。
「この臭いは獣のものだな。死骸か何かかな?」
ルカは白い服を着た男がいつ出てくるかを待つ。
すると明らかに挙動不審な態度をした白い服の男が、路地裏から出てくる。
周りを気にしてキョロキョロしていた。
「いや、慣れてなさすぎるだろ」
わかりやすすぎる態度に逆に高度なテクニックを要求する演技なのかと考えてしまったが、どうやらそうではないらしく普通に挙動不審なだけだった。おそらく教徒の中でも下っ端の部類のはずだ。
「白い服の袖がまくられている。初めはそんなことなかったはず……しかも服が裏返しになっているな」
ルカは男を睨みつけ観察眼を発揮する。
路地裏から出て来た時、若干だが血のような臭いがしたのは気のせいではない。
その証拠に、来ている白い服が反対になり袖に変な折り目が付いている。明らかに何かを隠そうとしていた。フードだけ出してもルカには通用しない。
そこでまずは証拠品を抑えに行く。
「さてと、一体何を捨てたのかな?」
ルカは楽しみではなく、それでも表情だけは硬くしないで路地裏に入った。
男の目が一瞬逸れた隙を突いて《インビジブル》と《サイレント》掛け、完全に隠密した。
すると男は気が付くことなくスルーされ、どうやら魔術には精通していないらしい。
「ざるすぎないかな?」
ルカは訝しい顔をしながら、路地裏を進んだ。
すると一番奥に小さな木箱が置かれている。この中から臭いがした。
正直鼻を曲げたくなるほど辛かったが、恐る恐る木箱を開けた。
「うわぁ、マジか!」
ルカは目を逸らして、奥歯を噛んだ。
麻袋の中に何か入っているが、この強烈な臭いはどうやら人間ではない。けれど生き物なのは間違いない。
恐る恐る袋をつまみ上げ、紐を解いてみるとあまりにグロテスクだった。
一言で言おう。グロい。
猫の死骸が入っていて、あまりに杜撰で酷い扱いを受けていた。この町で最近野良猫を見ていない気がしたが、原因がわかった。
「まさか悪魔召喚のために野良猫を使うなんて。酷すぎる」
確かに動物を使った儀法はある。
けれどここまで扱いが酷いものをルカは見たことがなかった。
吐き気がしてきて、口を抑えざるおえない。それでもあんぐりと開いてしまいそうになる。
ルカは怒りの炎を燃やした。
「こんな倫理的にも許しちゃダメだよね。流石に私も我慢できないや」
心の何処かでは少しだけ期待していた。もしかしたらそこまで悪人でもないのかもと。
しかしその期待が一気に砕け散ってしまい残念でならない。
すると今度はルカの目の前で野良猫を捕まえようとしていた。
「おい、動くな!」
「シャァッー!」
野良猫は警戒していた。背中を丸くしているが、先程の男は構わず手を伸ばす。
けれどルカは姿を消したまま、男の頭を叩いた。
「やめろ!」
ルカが頭を叩くと、男は背後を振り返る。
しかし誰もいないので顔を青ざめさせる。その隙を狙ってルカは野良猫を捕まえると、その場から逃げ出した。
きっと男には野良猫が浮いているように見えただろう。
「もう大丈夫だからね。だから少しだけ我慢して」
ルカは白い野良猫を抱きかかえると、その足で安全な場所まで移動した。
とりあえずここが一番安全だろうと思いやって来たのはアルカード魔術学校で、ルカは野良猫を放した。
ルカの手から離れると、一瞬だけルカの方を向く。
けれどそこには誰もいないにもかかわらず、猫が視線を送り続けていた。
まるで見えているみたいに、ルカの姿を追っていた。
「はぁー。後でナタリーに任せようかな」
ルカは溜息を吐きながら、吐き気を抑え込む。
もう迷いはない。ルカの目には闘志が宿っていた。
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