174.とりあえず×の場所へ
果たしてこの儀式用の陣に意味はあるのか?
ルカたちは地図を頼りに計画を立てる。
今日のところは確認だ。決行までには時間をかけるわけにもいかないが、どの程度か調べる必要がある。
ただし固まっていくと危ないので、グループを作った。
もちろんブルースターは抜きである。
「すみません。私は顔が割れているのでお役には立てません」
「それは仕方ないよ。ブルースターは最前線で頑張っててくれたんだから」
「そうですよブルースターさん! ここは私たちに任せてください」
「とりあえず舐めてたら潰してくるからさー」
「一番やっちゃダメでしょ!」
「冗談だよー」
シルヴィアに怒られライラックははぐらかした。
でも冗談には見えないが、ライラックの目が笑っていないのが証拠だ。
ルカは遠目からシルヴィアとライラックのやり取りを見ていたが、あまりに歪んでいた。
軽く触れようなら簡単にへし折られそうな雰囲気がある。
「そんなことより早く行くよ。私とライはそれぞれ単独。シルヴィとダリアはペアになって確認してきて」
「ちょっと、なんでライは1人なのよ!」
「ライなら気配を消したり糸で吊るしながら行けるでしょ? 2人は変に目立つから一緒の方が逆に目立たないの」
「ルカさんは……心配いりませんね」
「うん、正直心配はして欲しいかな」
ルカは最後の頼みでもあったダリアからも大丈夫認定されてしまった。
心底普通と異なって辛くなるが、今はそんなことを言っていられない。
ルカ達はそれぞれ教会を後にし、目指すのは×マークだ。
「えーっと、この辺だよね?」
ルカは写してきた地図を見ながら×マークを目指していた。
マギアラの東側。時計塔のような派手さはないが、そこにも高い建物がある。
煉瓦造りの建物が目の前に聳え立つが、いつも通りの人混みがあった。
けれどルカの目には異様な姿をした挙動のおかしい連中がいる。
「何だあれ?」
ルカは白い服に身を包んだ男の姿を見かける。
フード付きの白装束はこの間ブルースターの教会にやって来た連中の格好に似ていた。
おまけにおどろおどろしい不穏な気配を纏っている。
只者ではなさそうなので、ルカは気配を消すことを止め普通の学生のふりをする。
「へぇー、こっちには来たことなかったけど意外に歴史的な建物が残っているんだ」
異空間から適当にノートを取り出し、レポートを書いているふりをする。
町の景色を簡単ではあるが鉛筆で写生しながら、雰囲気を誤魔化す。
白い服を着た男も一瞬だけチラリとルカの姿を捉えたが、すぐに興味を失って路地の方に消えていく。
その隙を見逃さず、ルカは建物に記されたポイントを見つけた。
「ここだな」
人1人分に空いたマンホールが設置されていた。
鉄製のふたを取り外し、覗き込んでみたところ魔力の圧を感じる。梯子が付いていたので、降りてみることにした。
マンホールの下には下水道が続いてる。しかもご丁寧に下水道には赤い血で描かれた魔術用の陣がある。
「これで確定したね。何らかの大規模な魔術を使おうとしているわけだ」
ルカは腰に手を当てて、溜息を吐いた。何にかと思えばこの魔術用の陣はかなり古くなっている。
しかも人の血で描かれていた。
それにしてもこれだけの時間、よくもまあバレずに済んだと思う。けれどルカに見つかったのが運が悪い。ルカはバレないように反射魔術を刻み込んだ。
「これで最後のストッパーにはなるかな」
こんなところに長居は無用だ。これ以上居座ると敵の教団に見つかる可能性がある。
ルカは指紋を残さないように気を付けつつ、梯子を上った。
顔だけまずは出して外を確認すると人気がないので、素早くマンホールから這い出る。急いで蓋を占めると何事もなかったような顔で過ごしていた。
「まださっきのは戻って来ていないな」
レポートを書いているふりをしながら息を整えるルカだったが、その瞬間肺にムカムカとしたものが込み上げる。
ルカは肺が悪くない。にもかかわらずこの息苦しさは何だ。
その臭いも強烈でルカには血のように思ってしまった。
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