173.地図を頼りに
もっとコミカルなストーリーの方が伸びますかね?
突然のライラックに驚いたブルースターは一瞬戸惑っていた。
けれどすぐにルカの姿を確認すると納得する。
まるで“変わった人たち”と認識されたみたいだ。
「ああ、ルカさん達でしたか」
「その“ああ”が気に食わないんですけどぉ!」
「すみません。思っていたことが口から滑ってしまいました」
「それってとっても失礼だよねー」
ライラックは顔をグッと近づけた。
ブルースターは表情一つ変えず、ライラックに向き合う。
さっきまでは鋭い眼を向けていたライラックだったが、何かを掴んだのかいつもの大人しくてやる気のない目になる。
「そっかー。ブルースターもこっち側なんだね」
「どういう意味かはわかりかねませんが、貴女がそういうのでしたらそうなのでしょうね」
ブルースターもライラックの言葉に乗ることにした。
けれど話はすぐに切られてしまい、何を言いたかったのかシルヴィアとダリアはわからない。
ルカだけは独特な空気感に包まれている2人の間を見守った。
「そんなことより、完成したの?」
「はい。この通りバッチリです」
ブルースターに話を振ると、描いていた地図を見せびらかす。
かなり大きな地図のようだが、シルヴィアは食い気味に覗き込んだ。
シルヴィアの頭で見えなくなるが、頼んでいたものなので何かはわかっている。
「何これ、町地図よね?」
「そうです。マギアラの町を上から見た地図ですよ」
「どうしてこんなものを真剣に描いていたのよ。って、何だか薄いわね」
「よくぞお気づきになられました……えーっと」
ここで軽い自己紹介を挟んだ。
タイミング的に遅いのは言うまでもないが、ブルースターは繰り返し呟いて頭の中に叩き込む。
「話を戻しましょう。よくぞお気づきになられましたね、シルヴィアさん」
「そ、そうなの?」
「はい。この地図は透かしが使われているんです」
「透かしですか? 確かに二枚重ねになっているようにも見えますが気のせいではないんですね」
ダリアも気になっていたらしい。それもそのはず上から描いたものの下に別の線が見えている。
同じ厚さの紙ではなく、上の紙は万が一に備えて少しだけ薄くなっていた。
微妙な違いではあるが、上の紙との暑さが数ミリ違うと差異が生まれて下の紙と重なって見えるのだ。どちらもこの町の地図のようだが、青字で何か線が引かれていたり、×がされている。何かのマークだろうか?
「この×マークは多分目印よね? この青い線は何かしら?」
「魔力の動線でしょうか?」
「正解だよ、ダリア」
ダリアが何気なく言った一言にブルースターも口を覆う。
魔術の習いたてで基礎的なことを覚えているのは流石だ。
真面目にこなしてきた甲斐があるものだ。
「この青い線は×を伝って全て繋がっています」
「本当ね。×マークの数は全部で六つだけど、全て繋がっているみたいね」
「それはポイントです。ですのでこの×を抑えに行きましょう!」
となれば話は簡単だ。なんて思ったら大間違い。
今回は偵察ぐらいにしておく。
それを聞いたシルヴィアは不満を漏らしたが、まさかのライラックが質問に答える。
「何で今すぐはダメなのよ!」
「そんなの簡単だよシルヴィ。相手に悟られたら余計に警戒されてタイミングを逃しちゃうでしょー」
「タイミングを逃すって、この×を抑えればいいんじゃないの?」
「当たり前だよー。いくら×を消しても本体を抑えないと何度も似たような場所にポイントを付けるでしょー? 切りがないってのー」
ライラックはわかっていた。それからシルヴィアに報復行為や内紛、逃げられて他国に行かれることを考慮して行動するよう言い渡される。
シルヴィアは頭が上がらず。唇を噛んだ。
どうやらライラックは想像以上に戦闘慣れしているらしい。
新たにわかった事実にルカは警戒した。
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