14.シルヴィア・リューネラ
昨日は投稿できませんでした。
シルヴィアは先を歩いた。
その後ろをライが追いかける。
「待ってよシルヴィ!」
「ライ……」
ライは軽く息を荒げる。
しかしシルヴィアを心配してか、すぐに言葉を返す。
「如何して、怒ってるの、さ」
「別に私は怒ってないけど……」
「じゃあ何を張り合ってるのさー」
ライはそう聞き返した。
するとシルヴィアは黙ってしまう。痛いところを突かれたからだ。
しかしただでは食い下がらない。
けれど追い打ちはライラックの方が早かった。
「ルカが何したっていうのさ? 別に転入してノーブル先生の問題に答えただけでしょ」
「答えただけじゃない!」
シルヴィアは怒鳴りつけた。
自分でも子供だって解ってる。だけど負けたくなかった。
「負けず嫌いだなー。もっと楽しめばいいのに」
「楽しんでなんて……」
「お父さんとお母さんも言ってたでしょ」
「だからなの!」
ライラックは驚いた。
こんなにはっきりとしたことを言われるとは思ってもみなかったからだ。しかしその言い方から何となく察した。シルヴィアは何に対して怒り……いや、焦りを見せたのか。
「両親の事なんだ」
「そ、それは……」
「嘘下手なんだからそんなわざとらしいことしなくていいよ。同じ家に住んでるからわかる。シルヴィはなりたいんでしょ」
ライラックに言われたことは図星だった。
だから何も言えない。それはシルヴィアの夢に関することだった。
シルヴィアの家、リューネラ家はこの国きっての魔術師だった。
父親は王国にある宮殿で働く魔術師。母親も屈指の回復魔術の使い手として知られていた。
昔から英才教育を受ける……ようなことはなかったが、それはすなわち自由を得た代わりに何かを失うことでもあった。それを子供なりに理解していたからこそ、シルヴィアは本気になっていた。
シルヴィアが得たもの。それは外で思いっきりのびのび遊ぶこと。両親は辛い魔術師の修業から少しでも遠のかせようとしていたのだ。
しかし現実は辛くのしかかる。
リューネラ家は大きかった。最初は仲の良かった子たちも親に言われて遊んでいただけ。その中には本当に友達になれた子もいたけど、媚を売ってくる親たちの圧力でシルヴィアの周りはどんどん消えていた。
それで結局一人になった。つまらなくなった。だから王都からこっちにやって来たんだ。それが、シルヴィアが変わった理由のきっかけ。その目標は突飛なものだった。
「お父さん、お母さん。私魔術師になりたい」
シルヴィアは魔術師を志した。
それからは勉強を頑張った。体作りも魔術師には必要だと言われて頑張った。その理由がその理由が……
「魔術師学になりたいなんて、普通言う?」
ライラックは呆れてものも言えなかった。
最初はうっかり笑ってしまったけど、それも仕方ない。だって大変だったからだ。
「いいの。私はなるって決めてるんだから」
「それはいいんだけどさ、せっかくの貴重な学生生活をそんなのに投げうつなってさー」
「はい、そんなのって言わない!」
シルヴィアはびしっと決めた。
人差し指を突きつける。
「でもわざわざ権力に屈しないとかいうんだったら、魔術師学を目指さなくても……」
「どうせなら上に行きたいでしょ!」
「上も上だけどさー、魔術師っていうか何っていうかー」
学者何だよなー、とは言えない。
「とにかく私は魔術師学を目指すの。だからこんなとこで負けてられない」
「だからってわざわざ喧嘩なんかしなくてもさ」
「だから喧嘩とかじゃないの!」
「張り合ってるくせに……」
ライラックはこのくだらない喧嘩を終結させたかった。
だって呆れるんだもん。面倒だことに巻き込まないでほしい。
「はぁー、まぁそれはいいやー。で、これは如何すんの?」
「えっ!?」
「周り見てみ。誰もいないでしょ」
「ほんとだぁー」
シルヴィアは気づいていなかった。
ここは森の中。先を歩きすぎてしまい途中で道を間違えてしまった。そう言えば、分かれ道があったような気も……
「ど、如何しよう! これじゃあ怒られちゃうわ」
「いいよ。もう確定何だしさあー」
「そんなぁー」
がっくし腰を折った。
それを面白がるとライラックはふと感じた気配にピクリとする。
「ライ?」
「逃げるよ、シルヴィ!」
「えっ!?」
ライラックは腕を掴んだ。
腕を掴まれたシルヴィアは何があったのか。ライラックの背後。そこに目を向ける。するとそこががさっと音を立てるとともに、何かが飛び出した。
「ま、魔獣!?」
シルヴィアが叫んだ。
すると魔獣の咆哮が轟く。草木が揺れ、巨大なイノシシが襲い掛かった。
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