いったん戻ることにした
ここで、用意してきた薬を鞄から取り出す。
…てか、どうせ全部一度に飲み下すモノなんだから、家で準備をしてくれば良かった。
て言うのも、テレビでよくある自殺シーンで使用する錠剤は、大抵瓶に入ってて、そのままザラザラ手のひらに受ければいいが、コレは…箱入りで、名称は判らないがよくある形状、一粒ずつパックされて、服用する際には薬が見えてる透明な部分を指で潰すようにして、裏側のアルミ部分を破って押し出すやつ。
つまり、仮にも自殺するのに用いる量を、わざわざこのパッケージから、パチパチ押し出さなければならず…
ぶっちゃけ面倒くさい(爆)
つか地味だ。
地味すぎる。
アタシは、思わず遠い目をした。
いやいやいや。
ここでめげていてどうする。
アタシは気合いを入れ直し、錠剤を手のひらに落としてゆく。
ぱちん
ぱちん
ぱちん
ぱちん
ぱちん
(以下略)
…ふう。
とりあえず、一度に口の中に入る量はこの程度だろう。
まず第一陣を、さっさと送り込んでしまおう。
アタシは鞄から、薬を飲む為だけに用意してきたペットボトルの水を、鞄の中から取り出……そうとして手が止まる。
あれ…遺書はこっちだが…この封筒ってなんだっけ。
………ああっ!退職届と保険証!!
郵送するんだった!すっかり忘れてた!
いま薬飲んだらダメなやつじゃん!!
待て待て待て。
冷静になれアタシ。
ここ来る途中にコンビニがあった筈。
コンビニがあるという事は、高確率でその前に、ポストだってある……筈?
…なのか?
知らんぞそんなん。
でも切手売ってるし。
切手買った場合、高確率でその場で使う気がするし。
そして切手貼ったモノはすぐに投函するもんだし。
ならポストは必要だろ。
まあいい。
とりあえずは行動しなきゃ始まらない。
行動できなかったから今こんなトコに居るんだろとか言うな(爆)
そう決めると、先程まであんなに地味な作業に耐えても大量に出したかった、手のひらに乗せた錠剤が、こうなると急に邪魔になった。
まあどうせ後で飲むんだからと、遺書に使った残りのレポート用紙を一枚破って、簡単に包んで鞄に放り込むと、そこから立ち上がり、砂浜を歩いてもと来た道を戻る。
あんなに盛り上がった気持ちが少しずつ萎えていくのを、自覚しつつも打ち消しながら。
確か、さっきはあのへんにコンビニが…あった。
しかし…ポストはない。
まただよ。
自殺の神様のバカヤロウ。
↑居ねぇよ
ともあれ、投函するモノに切手は貼っておこうと、アタシは、コンビニに入ることにした。
☆☆☆
ところでアタシ、店員に直接声をかけてモノを買うスタイルがなんか苦手だ。
ぶっちゃけ、薬局とかファストフードとかの、店員に『〇〇ください』って言って、初めて欲しいものを目にする事ができる方式のアレ。
昨今スーパーやコンビニで普通に買い物する際には、大抵のモノは商品を自分で選んでレジに持っていきさえすれば買い物はできるから、よほど必要ない限りこちらから口なんか開かなくて済むし。
しかしながら、そんなコンビニやスーパーにも例外は存在するわけで。
煙草とか、それこそ今アタシが必要としている切手というモノがそれ。
これらは店員に声をかけなきゃ目にする事すらできない商品で。
ああやだやだ。
普通の人なら普通にできる事にいちいち煩悩する時点で思いっきりコミュニケーション能力の欠如とか言うな(爆)
つか、その程度が出来ないヘタレじゃなきゃ今こんなトコに居るわけない。
最初の1話目でざっくり手首切って終わっとるわ。
…今なんか実もフタもない事自分で言っちまった気がするが。