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屑鉄のジャンクノート  作者: ハムカツ
魔王復活編
24/24

6-4

ちょいと遅れましたがどうにか……

(さて、掴みは悪く無いと思うんだがね……)



 ガイトはスタンディスタを組み伏せながら考える。

ざっと見た限り正面から戦えば確実に負ける戦力差だ。

ただし一方的に何も出来ないまま倒されることはない。


 一番この中で手ごわいのは空戦型のスタンディスタ。

腰に付けているウィップエッジが飾りでは無いのなら

それ相応の技量を持っているのは間違いない。


 伊達や酔狂で持つならもっと派手で見栄えのいい武器

が幾らでもある。最も比較的装甲が厚いジャンクノート

との相性は良く無いので自分と同格の相手で無ければ

一対一なら勝てるだろう。



 しかし周囲の機体と連携を取られると一気に形勢は

不利になる。高度な連携でなくても体勢を崩した処を

ウィップエッジで狙われれば不覚を取る可能性が高い。


 もっともハグマール子爵の駆るバスターバベルが参戦

すればこの計算は全て無意味になる。後方からの強力な

砲撃支援は一気に戦場のバランスをひっくり返す。



(だが、ハグマール子爵があえてその危険を冒す可能性

はそこまで高く無い。そもそもこの戦いは――)



 命をかけた戦いでは無く、本音と建て前をすり合わせ

互いの妥協点を探る為の物でしかない。殺し合いなら

押し倒すなど悠長なことはせずスタンディスタを撃破

している。



『成程ね、その物言いから見てローシュタイン女男爵は

 私が来訪した理由を知った上でそれを拒否している。

 そういう事なのだな?』



 バスターバベルから通信が入る。音声のみの簡易な

通信だが名前や経歴から考えれば意外な程ダンディで

好感が持てる声のように聞こえる。



「そういうことになるな、目上のアンタ相手に貴族でも

 なんでもない俺を前に出してメッセンジャーにしてる

 時点で分かり切った事だろうけどよぉ?」



 あえて挑発的な口調と言葉で攻めていく。ここで流れ

が話し合いになってしまえばガイト達に勝ち目は無い。

ガイト達の勝機は手を出した時の被害をチラつかせ撤退

させる流れである。


 だからと言って相手から冷静な判断力を奪ってしまい

正面からの決戦になってしまっては元も子もない。


 そもそもこちらの武力をチラつかせそれを行使する

振りをして手を出せばタダではすまないと理解させる

という交姿勢はスマートでは無い。


 当然周囲の評判は悪くなるが、そもそも現時点でレオ

の外交的評価が地に落ちているからこそ出来る手口だ。



『つまり君が交渉の責任者という事かね?』



 だがその程度の事はハグマール子爵も理解している。

だからこそ強引にでも交渉の席につこうとするのだ。



「いや、ただのメッセンジャーですよ子爵殿」



 それを真正面から切り捨てた。建前と体面が重要視

される貴族社会では無礼を通り越して殺されても文句は

言えないレベルの暴挙。しかしここで殺すために殴り

かかれば被害は免れず、場合によってはこの領地から

得られる利益を超える被害が出る可能性がある。



『くくく……どうだねメッセンジャー君。君が望むなら

 あの小娘が君に与えている以上の報酬を持って君を

 買ってもいいと思って居るのだが?』



 周囲にざわめきが走るのを感じる。通信が繋がって

いる相手はハグマール子爵のバスターバベルだけであり

直接聞いたわけでは無い。しかしある程度操作で思考を

行っている以上動揺は魔導機兵を揺らすのだ。


 ここまで無礼を働いたガイトに対して取り立てる様な

言動を取った事が珍しかったのだろう。



「へぇ、けど無理だと思いますよ?」


『なぁに私はあの小娘が欲しい訳では無い。手に

 入るなら遊ぶ程度の事はするつもりだが……』



 バスターバベルが手を広げながら一歩前に出て来る。

そのなめらかな動きからハグマール子爵が高い操縦技能

を持っていることが伺えた。



「欲しいのはこの領地の鉱山だけど?」


『ああ、その上で君のように優秀な騎士を配下として

 迎え入れられれば非常に嬉しいね。優秀な人材は

 幾らいても困らない』



 ガイトさえ丸め込めればこの領地に大きな障害は存在

しない、ハグマール子爵の考えはそんなな処だろう。

確かに他に盤面をひっくり返せる駒は存在していない。



「まぁ所詮メッセンジャーですし、何といわれても今

 すぐ帰れ以外の事を言う気は無いんですけれどね」


『ふむ魅力的な条件を提示したつもりだったのだが

 女の下につくというのは男としては屈辱的だろう?』



 そういう気持ちは確かに有る。性別以前の問題で自分

が助けた相手に実質手綱を握られている状況というのは

心地いいと感じられない。特にレオは他人を気持ちよく

転がす手管に優れてい無いのだから。しかしそれでも

ガイトに取ってレオは守るべき存在で互いに補い合う

存在であるべきだと考えている。



「なぁ、バリウス」


『おおっと、ハグマール子爵の方はいいんですかい?』


「レオが馬鹿をやった。すまん、後で頭を下げさせる」



 だからまずは謝罪から、レオの不始末で無理をさせた

バリウスに対してのフォローを行う。ここから先は相手

の出方次第。そしてもし自分から打って出る必要が出る

場合は彼による援護の有無が勝機を分ける。


 正直な話後ろから撃たれても文句が言え無い事をレオ

は仕出かしたし、多少の恩を吹き飛ばして有り余る程、

今の状況は悪い。正面からの戦闘になれば確実な死が

待っているのだ。



『まぁ詳しく話を聞かなかった俺にも非はありますわ』



 バリウスの言葉と口調からとりあえず後ろを任せても

問題は無いと判断した。そしてこちらが連携する姿勢を

見せれば相手はより慎重な判断をする必要が出て来る。


 事実上の死地で逃げずに立ち向かってこようとする

相手に対して正面からぶつかるのは愚策だ。よほど高度

な連携を取らない限り中位魔導機兵を下位魔導機兵で

封殺することは難しく少なく見積もってもこの場に居る

機体の半分は食われるだろう。


 騎士団全体がじりっと下がる。誰だって自分が高確率

で死ぬリスクを犯したくはない。本来10機の下位魔導

機兵しか存在しない土地にこれだけの戦力を送り込んだ

最大の理由は武力を背景にした威圧交渉。


 だから多くの騎士に命をかけて戦う覚悟は無く、そも

そも中位魔導機兵2機を手玉に取るような化物を相手に

肉壁をやって死ねる程の報酬は貰っていないのだろう。



『くくく、下がらねば死兵となって牙を向くと……

 それは困るな、こちらとしては何もせずに下がれば

 メンツに大きな傷が付いてしまう』


「だから俺があんた達を襲うとは言っていないだろう

 竜に襲われるかもしれないと言っているだけだ」



 その言葉と共に操縦桿を捻ってもう一度クローアーム

に力を入れる。組み伏せられた状態から逃れようと足搔

いていたスタンディスタがびくりと震え動きを止める。



『建前の話は止めようか、こちらとしては一方的に帰れ

 と言われてはいそうでしたと言うことを聞けないのは

 理解出来ているだろう、君ぃ?』


「おやおや、一応建前では竜に襲われたこの土地を救う

 為に遠征騎士団を送り込んだと聞いているのですが」



 通信機の向こう側から聞こえて来る声が急に粘性を

帯び、ひたひたと脳内に浸食する様な嫌らしさで耳の

穴に入り込んで来る。



『建前は止めろといっているんだよぉ? 単純な話だ

 こっちとしては決死の覚悟で突っ込まれ騎士団が

 壊滅するのは避けたい。そちらとしても命がけで

 こちらに突っ込むのは避けたい。これは共通認識

 だと思っても良いかね?』


「それじゃまるでこの遠征騎士団が武力による威圧で

 ここを制圧しに来ていると宣言したのと同じだぞ?」


『ああ、その通り。君が想像している通りで我々は竜の

 群によって疲弊したこの領地を威圧交渉によって手に

 入れる為にワザワザ西部の大荒野を超えてきたのだ』



 敵味方に動揺が走る。たとえ態度や言葉の端々から

漏れていたとしてもここまではっきりと己の目的が

相手の領地を武力的な手段で手に入れることだと宣言

する事は貴族的な常識で考えればありえない。



(敵の目的はこちらと同じテーブルに乗る事。一方的に

脅迫されている状態から互いに脅迫しあう関係まで

押し込んで来ることが目的か……!?)



 ガイトの狙いは一方的な脅迫から暴発した相手を追い

込みこちらが持つリスクが相手に取って許容できないと

認識させて撤退させる流れ。それは暴発した相手を一瞬

で組み伏せた時点である程度達成できたつもりでいた。


 しかしハグマール子爵はあえて同じステージに乗る事

で状況を一方的な脅迫からチキンレースに変えたのだ。

 

 再び操縦桿の角度を変え、組み伏せた機体にダメージ

与えてみるがハグマール子爵な大きな反応を見せない。



「で、どうするんです? 本気でこの領地を狙うってなら

 今ここで全力を持ってお相手致しますがどうでしょう」



 ぎゃあぎゃあと喚く組み伏せたスタンディスタの装甲

の端をクローアームで凹ませる。ギリリと機体が歪み

中からの叫び声がさらに大きくなった。



『そうなると誰も得をしない、こちらが大きな被害を

 受けて勝ち、そちらの戦力は全滅してしまう。そんな

 状況にあえて突っ込むほど程俺は愚かではない』


「つまりどうするって言うんだ?」


『決闘だよ、1対1の決闘だ。ああこちらは私が出る

 ような大人げない真似をするつもりはない。たがが

 中位魔導機兵相手に上位魔導機兵のバスターバベル

 を持ちだす程恥知らずではないのでね?』



 バスターバベルが大げさなモーションで肩を竦める。

魔導機兵はただの兵器という訳では無い。この世界に

おいては交渉に使用用のツールという側面も持つ。


 そういった意味でバスターバベルは良く調整された

機体だった多くの動作モーションが内蔵されており会話

に合わせて適宜使用する事で操縦者の意志を表現する。


 そして交渉においては言葉だけでなく、細かな身振り

手振りによる意思疎通も大きな意味を持つ。動作の意味

を考えるという負荷を相手に与える、言外の意味を付加

する、そういう細かな積み重ねで状況を動かしていく。



『こちら側の代表者はトール=キリヤ、いけるな?』



 その問い掛けに対して空戦型のスタンディスタが一歩

前に出て来る。その動きと呼ばれた名前からガイトは

相手も自分と同じ召喚者である事を理解したのだった。


次回更新は一週間後ぐらいのファジーな感じで。

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