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ライジング・サン  作者: 村松康弘
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目の前の停止線に停まるクルマが多くなった。

三羽尊は、点滅する誘導灯を水平に構えたまま、腕時計を見る。17時32分。

思わず「チッ」と舌打ちが出る。

(・・・今日も規制時間を無視して延長かよ、急ぐ作業でもねえくせに。・・・だから、ろくでもねえ代理人の現場はヤダくなるぜ。・・・その内、苦情出るな。)

・・・思った矢先に先頭のクルマの運転手がガラスを下げて、「時間過ぎてんじゃねえか!馬鹿野郎!」と怒鳴る。

三羽はいくらか神妙な顔を作り、ゆっくりと丁寧にアタマを下げる。・・・その演技の良し悪しでドライバーの反応は如実に変わる。

先頭の運転手は渋いツラをしながらも、ガラスを上げた。


三羽は肩に付けた無線マイクのスイッチを押し、「こちら三羽、・・・まだ流せねえんかよ!」と、腹話術のように表情を変えずに怒鳴る。

「・・・こちら荒井、すんません、ひっきりなしなもんで。・・・ホントすんません」荒井は三羽相手のガードの日は、一日中謝ってることが多い。


・・・三羽尊は工業高校卒業後、自動車部品製造会社に就職したが半年も経たない時、工場内で先輩と口論となり相手を全治一週間の怪我を負わせてクビになる。

その後、高校時代の担任の世話で、小さな建設会社に勤めたがそこでも給料のことで揉めて、半年でクビになる。

仕方なしに新聞広告で見つけた「交通誘導員」のバイトで食い継ごうと勤めた。それは意外にも長く続き、今年で4年になりバイトから正社員にはなったが三羽はちっとも満足してはいない。


・・・片側交互通行の規制がようやく終わる、18時を回っていた。

三羽は大嫌いな現場代理人に、日報のサインを求める。当然「18時」と書き込んでいた。

「なんだお前、残業になってんじゃねえか!一日中立ちんぼやってて、なにが残業だ!ああ?」代理人は三羽と同じぐらいの年齢だが、完全に見下した態度だった。

・・・三羽の眼がスッと暗くなる。

「てめえ、一度死んでみるか?小僧」

代理人の顔色は瞬時に変わり、無言で日報にサインして逃げて行った。

「・・・ああ、明日からは呼ばれねえな。会社もまたクビかもな」三羽は首の関節をポキポキ鳴らしながら、ポンコツの軽自動車へと歩いていく。


運転を荒井に任せて助手席に乗り込んだ三羽は、グローブボックスからニッカの小瓶を取り出して呷る。


携帯の送信履歴をスクロールして耳に当てる。


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