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ライジング・サン  作者: 村松康弘
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唐沢は帰路を走りながら、千夏に「じゃあ、またな」と言って電話を切った。

千夏からは3日に1度ぐらいの頻度で、電話が掛かってくる。ほとんどが大して意味もない電話だから、切った直後ですら会話の内容を覚えていない。

「ふうん」とか「へえ」とか言って相槌を打つだけで、実際は聞いていないのかも知れない。

だが今日は気分が沈んでたからか、いつもより少しだけマトモに相手にする気になった。

だけどやっぱり、無意味な会話はいつもと何ら変わらなかった。

「・・・俺と千夏の関係って、なんなんだろう」唐沢はボンヤリ考えながらハンドルを回す。


また携帯が鳴る、「Black Bird」・・・その着音は2人にしか設定していない。

「よう、忙しいかい?」三羽の声だった。

「今日はクソ面白くねえことあったから、もう帰ってるとこだわ」

「そうかー、俺も同じだわ」三羽は向こうで笑い声を上げていた。

「笑えるだけお前のがマシだぜ」唐沢は溜息まじりで言う。

「・・・アッシュトレイズ・ローズ行こうぜ、リョウタに電話入れとく」


アッシュトレイズ・ローズとは、唐沢と三羽と「リョウタ」こと須川凌太が、高校の頃から入り浸ってるライブハウス兼バーの名前。

3人はそれぞれの名前を取って「三羽鴉」という名のロックバンドをやっていた。当時の学生バンドの中ではそこそこの動員力を持つバンドだった。

そして3人が高校を卒業する時にバンドは解散し、唐沢と三羽は就職したが、須川は就職せずにアッシュトレイズ・ローズでスタッフをやっている。



・・・18時。須川はホールの椅子を並べ終わり、ドリンク類の用意を済ませる。楽屋に上り、今日の出演者とミーティングやら雑談をして、スタート前の楽屋を盛り上げる。

平日の出演者はそれぞれが仕事をやり繰りして、早い時間からリハーサルに集まってくれている人たちばかりだから、自分も最大限のことをしようと思っている。

ちっぽけな地方都市だから平日のライブはガラガラだが、須川はこの空間で「表現する人たち」と「楽しむ人たち」に関わることに生き甲斐を感じる。


カウンターに入って受付のフライヤー類をきれいに並べ直していると、「リョウタ、右のボーカルマイクが外れそうになってるよー」と声が掛かる。

店長兼PAエンジニアの白井からだ、須川はすぐに直しにいく。

・・・「三羽鴉」としてステージに立ってた頃、自分たちの方向性や好みを一番理解してくれて、最適な「音」を作ってくれた職人。それが白井だった。

キャパのデカい他のハコのスタッフはいつも、ビジネス最優先の「上から目線」だったのに対し、ローズのスタッフは友達のようだった。


カウンターに戻りタバコに火を点けると、携帯が鳴った。


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