第一話S級冒険者とスキル【保護猫カフェ】
猫好きな作者による保護猫カフェ×スローライフもの始まるよー。
S級冒険者と言えば誰だと言われれば誰もがノーネームと答える。ノーネームは名前がないことからノーネームと名付けられたのだ。下積み時代から返り咲いた冒険者として。
「F級から返り咲いたS級冒険者ってだけでもかっこいいのに容姿もかっこいいとか!」
「だな、白髪赤目ってだけでも目立つもんな。」
誰もが噂をしていた。女性冒険者と受付嬢も妻の座を狙うくらい稼いでいた。貯金はいくら有るのか誰もが気になった。そして肝心な男ノーネームは…
「はぁ…またか。」
貴族の護衛、未知のダンジョンの踏破、討伐不可能な魔物の討伐などを見てげんなりしていた。そうS級冒険者には休みがない。何処からも引っ張りだことなってしまうのだ。
「休み欲しいって言っても休みをくれねぇしなぁ…何処のギルドマスターも休暇くれねぇし。」
現代日本で例えるならばブラック企業の社員が有給を使おうとしたら何言ってんのお前休まねぇよなと圧をかけられて休みを取れなくなると言えば分かりやすいだろうか。ちなみにこの世界において労働は基本であり休みは二の次。休暇はなしと言っていいだろう。休むなんて言い出した日には国はどうすんの、村の被害はどうするのと無言の圧をかけられ休暇が取れないのだ。そもそも休暇があることすら怪しいくらいだ。
「……引退…してぇな。」
そろそろ30代、稼ぐだけ稼いだ。貯金も数億以上はある。老後の心配もないくらい稼いだ。休みがほしい、休暇がほしい。癒しがほしい。切実な思いで今日もまた断れない依頼をこなすのだ。
「これで最後か。」
ソロでこなすのもなんのその。ダンジョンコアの確認とドロップ品の数を数えていた時のことだ。ドロップした覚えのない宝玉が混じっていたのだ。
「…なんだこれ。【鑑定】。」
色んなダンジョンをこなしてるうちに鑑定スキルを習得していたノーネームは宝玉を鑑定した。出てきたのは【保護猫カフェ】である。
「…ねこ?」
さてここで説明しよう。この剣と魔法の世界では猫は存在しないと言っていいだろう。魔物ばかりの世界に猫ちゃんは生きられないのだ。猫好きには悪いがそれが世の摂理。自然の摂理である。そうつまり、この保護猫というのは異世界産の保護猫ちゃんたちなのである!
「…ドロップ品じゃねぇのなら習得しても問題ねぇよな。習得っと。」
いつも通りの日々であった。ドロップ品の売買、ダンジョンの構造の報告、魔物の種類の報告などなど。それら全てを終えたノーネームはスキル【保護猫カフェ】の情報を見ていた。
「(なになに、異世界産の保護猫たちが多くいます。大切にしてください…だって?人馴れしてる子たちと人馴れしてない子達も居ますのでご注意してください?料金取るのか…どんな店だ?)」
食事処で暖かいスープをちびちび飲みながら確認していた。想像出来ない猫という生き物を、保護というのはどんなものかとか考えながら次の日になる。宿屋で一晩泊まったノーネームは誰も来ない森の中でスキルを使うことに。
「スキル【保護猫カフェ】。」
にゃーんと声と共に建物が姿を表した。水色で可愛らしい猫の絵が描かれた建物である。恐る恐る扉を開くと何もいなかった。
「何も居ねぇけどな。」
スキル画面がオープンした。何もしていないのに何故と思いながら確認する。どうやら保護猫を一匹選べから始まるらしいとのこと。
「…一匹だけじゃねぇのか。その猫とやらは何処にいるんだ。」
矢印が現れついて行く。保護猫カフェの奥の扉に手をかけ開く。するとどうだろうそこに居たのは保護猫ちゃんたちであった!
「な、なんだこいつら…」
魔物しか居ない剣と魔法の世界において動物という存在は皆無である。つまり猫がいないという悲しい悲しい事実があるわけだ。そうとは知らないノーネームは辺りを見渡す。茶トラ、三毛猫、白猫、黒猫などなど多種多様な柄の保護猫ちゃんたちがゆったりとしていたのだ。
「にゃー。」
「…人馴れしてるって言ってたが…ここまでとはな。」
「ごろごろ。」
「何の音だ?うぉ?!腹見せてきた?!」
にゃーにゃーと近寄ってくる人馴れしている保護猫ちゃんたち、その奥には人馴れしてない保護猫ちゃんたちがいるので初心者はオススメしないと書かれた看板が書かれた扉があった。
「奥は初心者におすすめはしないって書いてあるな…ならこいつらの中から選ぶのか?」
見渡す限りの保護猫ちゃんたち、お腹を見せる保護猫ちゃんだったりキャットタワーに登りゆったりとする保護猫ちゃん、ご飯をもりもり食べる保護猫ちゃんたちなどが存在していた。
「…お前らゆったりしてていいな。」
「にゃー?」
「…ん?」
ふと青い瞳と目が合った。青い瞳の白猫ちゃんと。目を見開くノーネーム。自身の赤い瞳と対となるような色の瞳を持つ白い生き物だと。
「…お前一緒に来るか?」
「にゃー!」
「…お前言葉分かるのか?」
「にゃ?ゴロゴロ。」
「…よく分かんねぇけど不思議な生き物だなお前。」
チュートリアル終了と表記されると名前をつけようというクエストが開始された。
「…名前か、そうだな。お前の名前は…シロ。お前の名前はシロだ。」
「にゃ♪」
「外に出すのは危険だよな…一旦ここで待っててくれ。」
「なぅ。」
「いい子だな。」
保護猫カフェから外に出る。そしてノーネームは考える。日々の仕事には感謝しているが…流石にそろそろ歳だと。
「…よし、若いのに任せて俺は引退しよう。流石にもう疲れた。」
そうしてS級冒険者をやめたノーネームは田舎の村へと引っ越すことにしたのだった。帰ってない家の売り払いなどを済ませたノーネームに隙はない。家具もそもそもないに等しかった。
「……ここが新天地か。」
そう、この物語はノーネームと保護猫シロちゃんたちによる保護猫カフェスローライフものである。
美丈夫と猫はええぞ。




