ヒント
「あ!それってもしかして!」
泉が扉を開けて落ちてきた紙を見て声を上げる。
「多分だが、怪盗Xからの手紙だろうな」
落ちてきた手紙を手に取る。
「どうして今怪盗Xからの手紙が来ると?」
「それは、文実の紙が無くなった時、この紙が部室に置かれていた。なら、次も花飾りが無くなったこの日にヒントと共に置かれてるのかと思っただけ」
「……確かに言われてみればそうよね。吉条君の今まで言っていることが本当なら確かに今置かれていて仕方ない筈ね」
「いやいや!清水先輩そこじゃないですよ!広先輩、ヒントって何ですか?」
珍しく泉が清水にツッコみながら当たり前の質問を投げかけてくる。
「今回のヒントがここに書かれているのかは分からないが、既に分かった事がこれを送って来たのは文実の誰かって事だ」
「それって清水先輩がもう言ってませんでしたっけ?」
「清水が言ったのは予想だ。探すならそこが良いんじゃないかってだけだ。だけど、もしかしたら文実じゃないかもしれないだろ?だけど、今回のを見て文実だと確信が持てた」
「どうしてですか?」
「文実の奴らなら俺らにバレずにここにこの紙を送ることが出来るからだよ。考えてみろ。もしかしたら俺達が一度部室に行ってから文実の方に行くかもしれないし、清水が突然誰も来ないから部室を出るかもしれない。もしかしたらバレるかもしれないと言うタイミングで怪盗Xがこの紙を送ってくるとは考えにくい。なら、俺達が文実の会議室から出るのを見て、この部室に入ったのを見て送るのが一番確実で百%バレずに紙が渡せるんだよ」
「だけど、それなら文実ではなくても、貴方たちを見張っていた誰かが尾行してここに置いたという線は?」
清水に最もな質問をされたが、俺も最初はそう考えていた。だけど、前回と今回のこの紙で相手が文実だと言う確証は得れた。
「前回、この紙が送られたのは放課後より前。清水や泉がこの部室に来る前だから多分相当前だと思う。多分、朝か昼休みぐらいに置かれたんだと思う。だけど、今回俺達が部室に来た時はまだ紙が置かれていない状況で、今回はこの放課後に置かれる。それが、今回ヒントが与えられたと思った確証だ」
「成る程ですね」
清水は納得しているのか頷いているが、俺の推理は八割の確率で合っていると確証がある。だけど、二割の確率で不正解の可能性もあるのだ。
怪盗Xが何者なのかは知らないが、もしかしたら俺がこうやって考えるのも計算済みで、敢えて放課後まで手元にある紙を渡さずにずっと俺達を尾行していたのであれば?
そこまで考えられていたらお手上げなのだが、流石にそこまで考える犯人だとは思いたくはない。というより、そう考えれば俺達が怪盗Xを見破ることなんて出来る訳がないのだ。
「ねえ、そんな事よりその紙には何て書かれているのよ!私凄く気になるんだけど」
南澤がうずうずしたように呟き、そう言えば見ていないことに気づかされ、紙を開けるのだが、南澤、寺垣、泉がこちらに近づいてきて……うん、相当近い。もう、頬と頬がくっつきそうなほどに近い。寺垣は後ろから見ているからまだしも、南澤と泉が無遠慮に近すぎる。
「……俺後で見るからお前ら先に」
「良いから見るわよ」
「そうですよ広先輩」
その場を退出しようとしたのだが、南澤と泉に腕を掴まれ逃げられない状況に。
落ち着け。無心だ。仏の心を持つんだ。そうすれば、何とかなる。
仏の心で無心になりながら手紙を見て、思わず大きく目を見開いてしまった。
『お悩み相談部を少し過大評価し過ぎたようだった。まさか、見つけられないとは……。君たちには少しがっかりとしたが、これで終わりというのも味気ない。まだまだ盗むものは存在し、このまま勝って終わるのも味気ない。だが次が始まる前に一週間後、君たちには一つペナルティが与えられる』
本当に手紙の様な内容なのだが、
「何だこの上から目線。凄いムカつくんだが」
「広先輩も似たようなもんですよ」
「自覚無かったわけ?」
今までで一番傷つく言葉を南澤と泉に言われた。
「俺は今まで事実しか言ってきてない男だから。だけど、こいつのこの手紙はおかし過ぎだろ。ヒントなんて何もねえのに見つかるわけが……なんか妙だな」
自分で少し憤りを覚えてしまったのだが、この手紙を読んで今言葉に出して少し不思議に思った。
……今までのヒントで分かったのは、怪盗Xは文実を決める日に盗みを働いたこと、自分を見つけて欲しい事。ただ、それだけであり分かる筈もない。それは、怪盗Xだって分かっている筈だ。
だけど、この手紙を読めば、まるで怪盗Xの操るがままに行動されている様な気がしてならない。俺の考え過ぎか?
「……こいつが喧嘩売ってきてるのは分かるんだけど、何ペナルティって?私達何かされるわけ?」
南澤が訝しげな眼を手紙に送りながら呟く。
「もしかしたら私達全員腕立てするとかじゃないですか?」
「誰がするか。なあ、もうこいつ本当に無視しないか?凄い面倒な奴な気がするんだけど」
「無視するかどうかは置いておくとしても、流石にこの紙一枚じゃ分からないよね?吉条の見立てが正しいんだったら、もっと無理だよ。もしも、これが盗みだとして私達が四六時中会議室に潜んでいたら分かったかもしれないけど」
寺垣も俺と同意見らしい。流石にこれだけで分かる筈がないのだ。
「ペナルティか。まあ、どうでもいいしな。俺はもう知らん」
「だけど、文実の手伝いはするって言ってるから行かないと私達が逆に花の飾りを盗んだんじゃないかって思われるんじゃないの?」
南澤の言葉に思わず言葉が詰まる。
確かにその通りだ。ここで俺達お悩み相談部が抜ければ犯人なのではないかと思われても仕方ない。
「ハア。結局探すことになるのか」
何だかんだ言って探すことになるのは仕方ないとは言え、未だ分かっているのは文実の奴だと言う事だけ。分かるわけがない。
八方塞がりな状況の中、部室の扉がノックされる。
「失礼するぞ。吉条はいるか?」
入って来たのは、一応ここの顧問となっているらしい萩先生。
「何ですか?」
「いや、少し大事な話がある。職員室に来てもらっても良いのか?」
「えー。それは行かないと駄目なんですか?」
非常に面倒なので断りたいのだが、
「吉条の進路に関する事だ。これは、重要なことだ」
怪盗Xだけでも、面倒なのにここにきて更に面倒が増えるのだけは勘弁してください。




