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夏祭り

 ようやく体育祭実行委員会でもギスギスした雰囲気は無くなり、小野の問いに対する完璧な答えもだし、その日はペンキも無事に戻って来たことで何もかもが全部が完璧に終わった。


 ――――俺にも夏休みという平穏が訪れた!


 「お兄ちゃん、夏祭りに行きたい」


 「……お前は俺の今の気持ちを察してくれ。最高にテンション上がってたのに下がったぞ」


 「今上がってたの?全然わからなかったけど」


 「お前そんなんじゃお兄ちゃん検定一級は手に入らないぞ?」


 「私の場合、お兄ちゃん検定十段だから」


 「ほう。なら、俺の答えがわかるな?」


 「うん。祭りに行きたいって思ってる」


 「三級も与えられねえよ!」


 まず、自分で言っておいてなんだけど、お兄ちゃん検定ってなんだよ。しかも、妹の答え的外れ過ぎだし。


 「えー、行こうよ。愛華先輩もいるし」


 「まるで、泉がいれば俺も行くみたいになってるけど行かないからな?」


 「ケチ。だけど、私と愛華先輩じゃ心配だな。ナンパとか怖いなー」


 「随分と自分の顔に自信があることで」


 「お兄ちゃんから見たら私どう?」


 「完璧」


 「きも」


 「なんて答えろと!?」


 ここでぶすなんて答えてみろ。一週間の話じゃない。一カ月ご飯抜きで無視されるであろう。


 「ハア。じゃあ別に良いや。他の男子でも呼ぼう」


 突然スマホを取り出し弄りだす妹を漠然と見てしまった。


 「は?お前彼氏いたのか?」


 「ううん。いないけど適当に」


 「絶対に駄目だ。お前に男は早い。百年でも早い」


 「意味わかんないんだけど」


 「他の男を呼ぶぐらいなら俺が行く。お前が男と遊ぶのは早すぎる」


 「過保護でシスコンってお兄ちゃん終わってる」


 「終わってるとか言うんじゃない」


 俺は終わる所か始まっても無いんだから、残念ながら終わらない。

 ちょっとカッコイイ気がしてしまった。


 「じゃあ、お兄ちゃんは適当に夕方まで寛いでて。私愛華先輩と遊んで、夕方には帰ってくるから」


 「へいへい。だけど、帰るのは八時だからな?」


 「十時の間違い」


 ……十時だと?一体この子は何時から不良妹になってしまったのだろうか。やはり、部活連中が妹に悪影響を与えているのかもしれん。


 「……まあいいか。どうせ、今は平穏な生活が送れているしな」


 「今まで違ったの?」


 「ああ。散々な目に遭ったがようやく夏休みで最高の休み期間を手に入れることが出来た気がする。体育祭実行委員も平和に解決出来てるし、最高だ」


 「…よくわかんないけど、平和なら良いんじゃない?それより、絶対に夕方は家に居てよ?」


 「俺は留守番も出来ない犬以下か」


 「お兄ちゃん稀に犬より馬鹿だから」


 「突然の罵倒にお兄ちゃんは泣きそうです」


 最近妹が俺に対して冷たい気がする。反抗期か、思春期なのかもしれない。


 「…ってか時間やばいし、私行くから昼ご飯自分で食べといて」


 「へいへい」


 妹が駆け足で二階に上がるのを見送り、俺はテレビをつけてソファで寛ぐ。


 だが、テレビでどんな番組を見ても全く集中出来る気がしない。まあ、それもそうだよな。

 今回の件で俺は小野のプライドをズタズタにしてやった。それは別にあちらが売って来た喧嘩だし、反省する気などは無いのだが、あれで小野は多分相当な怒りを覚えただろう。


 それによってもう既に次の作戦を練っているかもしれない。俺にも一応考えというのは存在する。体育祭の為に色々とやって来たし、それを邪魔されるのだけは勘弁してほしい。そう考えたら、流石にあそこまで言わない方がいいのではないかと思えてならない。


 俺は目先の事しか考えず後の事を考えたり、一点に集中してしまうと周りが見えなくなることが多いと自覚しているが、何度も後々気付くんだよな。


 …ってぼーとしてたら十二時だし妹の声も聞こえないから多分もう行っているのだろう。

 思った先からこれかと自分に少し呆れてしまいそうになりながら、お湯を沸かしてカップラーメンを作りながら、これから考えていることを一度整理して、食事をしていたら、段々と眠気が襲ってきた。

 

 昼からは小説を見ることしか予定はないので、夕方にはどうせ起きるだろうと踏まえて重い瞼をゆっくりと閉じていくのだった。


 夕方。


 「――――きろ!起きろ!」


 「痛い!」


 突然の痛みに一気に目が覚めていく感覚がきた。

 額がじんじんと痛みを及ぼしたので摩りながら腰を上げれば、目の前には赤い薔薇が描かれた赤色の浴衣姿を着た泉が存在していた。


 「……何でお前がいるんだ?」


 視界が少しぼやけるので目を擦りながら聞くと、泉は腰に両手を当て、


 「そんな事よりまずは私を見て言う言葉があるんじゃないんですか?」


 「どうして浴衣を着てるんだ?」


 「そんな当たり前のことを言って欲しい訳じゃないんですけど!ていうか、愛奈ちゃんから聞いてないんですか!?」


 「あー。そうだ、祭りに行くんだった。寝てて忘れてた」


 「そうですよね。それで、私に言う言葉は?」


 何かこの質疑応答を違う場面で他の誰かに行った気がする。


 「……あー。分かったぞ。可愛いだろ?」


 「その言えば良いって感じのいい方は駄目です!」


 このお方はどうやら本当に向江と似ているようできちんと言わないといけないらしい。大変めんどくさい奴である。


 「可愛いぞ」


 「と、突然そんな風に言われると恥ずかしいですが嬉しいですね」


 何故か、はっきりと言えば顔を少し赤くしながらお辞儀をしてくる泉。


 ……ん?


 以前から少し不思議ではあったのだが、


 「もしかして可愛いって言われて照れてるのか?」


 「え、今更ですか?」


 「いや、それはこっちのセリフなんだが。お前なんて今まで可愛いって言われてきただろうが」


 「まあ、今までとは流石に言い過ぎですけど、普通に言われますけど…これはまた別って言うか…なんというか」


 何故、ここで照れる要素があるのかさっぱり分からんが、まあいいか。誰でも可愛いと言われたら嬉しいものだろう。

 南澤や寺垣も吉木に以前綺麗と言われた時は満更でもなさそうな顔をしていたしな。


 「お待たせしましたー。お兄ちゃん起きてます?って起きてますね」


 妹がいないと思っていたが、二階から降りてきたので着替えているのか思ったが、妹は私服だった。


 「そういや、祭りだったな……ってもう五時じゃねえか」


 仮眠を取るつもりが熟睡してしまっていた。


 「あれ?愛奈ちゃん浴衣に着替えてくるんじゃなかったの?」


 「それが、私浴衣無かったんですよね。だからいけなくなってしまって」


 あちゃーと頭を抱える妹がどうしても演技にしか見えない俺は馬鹿なのか、妹の演技が下手なのかは定かではない。


 「浴衣じゃなくても行けるくないか?」


 「私は浴衣じゃないと祭りに行けなくて」


 そんな事実は初めて知った。


 「じゃあ、どうするんだ?中止か?中止だな」


 「ちょっと黙ってて」


 「はい」


 中止かと喜んでいれば、妹の無言の圧力によって黙らされる。少し小野より怖い気がした。


 「それに、私って中三で受験生だってことを忘れてました」


 「受験忘れる中学三年生とかいるのか?」


 「黙ってて?」


 「へい」


 妹が怖い。何なの?何時からそんなに怖い女になってしまったのか。俺は一切知らない。


 「そして、私は今日祭りに行く気満々だったので夕ご飯の食材が無いんです。だから、焼きそばとか色々欲しいんですよ。そこで!丁度準備が出来てる愛華先輩とここで暇を持て余してニート生活を送ってデブましっぐらのお兄ちゃんがいるので一緒に祭りに行ってきてほしいんですよ」


 ニート生活やら、デブまっしぐらやら至らない言葉はいらないと思うんですけど?喋ったら怒られそうなので言わないけども。


 「私は全然良いですよ。けど広先輩は」


 「別に構わんぞ」


 「「え!?」」


 何故か了承すれば言ってきた妹や泉が驚いた表情でこちらを向いている。


 「何でお前らが驚いてんだよ」


 「……お兄ちゃんどうしちゃったの?私感激で涙出そうだよ」


 「何処に感激する場面があるのか知らんが、最近の俺は学んだんだ。どっちみち拒否をしても行くのであれば、しない方が時間の無駄ではないんじゃないのか?ってな。それに、人混みは嫌いだが夜ご飯もカップラーメンは嫌だしな」


 「じゃあ広先輩行きましょう!行きましょう!」


 「何でそんなハイテンションなんだよ。だから別に行くって言ってるだろ」


 「それじゃあ、お兄ちゃんが準備する間私達はお話しときましょう」


 まあ準備と言っても服に着替えるだけだからそんなに時間はかからないと思うが、俺は人を待つのも待たすのも好きではないのでとっとと済ませよう。


 人混みで夏なので暑いのは分かりきっていること。よってTシャツ一枚に短パンをはいて下に降りると、リビングのソファで二人はテレビを見ながら談笑していた。


 「準備出来たぞ。行くのか?」


 「行きます!絶対に行きます!今すぐ行きましょう!」


 「いや、だから何でそんなハイテンションなんだよ」


 先程から泉のテンションがおかしい気がするのは絶対に間違っていない。常日頃の何倍にも元気が膨れ上がっている。


 「そんなの良いですから、私は嬉しいんですからとっとと行きましょう!」


 「何に嬉しい要素が?」


 「そりゃあ、広先輩が拒否するわけでもなく一緒に行くなんて言うの初めてじゃないですか」


 「まるで俺がいつも駄々をこねている子供の様に聞こえるんだけど?」


 「そうじゃないんですか?」


 「そう思われていたことにショックだよ」


 泉と適当に問答していれば、十八時になりそうな勢いだったので、人混みも考えればなるべく早くに行って損は無い。

 

 「取り敢えず行くぞ。行き道さえも混んでたらそれこそ最悪だ」


 泉に言いながら玄関で靴に履き替えれば、妹が玄関まで見送りに来る。


 「それじゃあ行ってくる。食事は……って俺達何時ぐらいに帰るんだ?遅かったらお前飯食えないだろ?」


 「私の事は放っておいて楽しんできて」


 「いや、夕ご飯は」


 「楽しんできて!」


 「……分かったよ」


 もはやこれ以上何かを言うことを許さないと言わんばかりの妹の威圧感と言葉に言い返す術はない。本当に誰に似たんだか。

 だが、これ以上考えてもどうせ結論は出ないのであろうと思いながら泉と一緒に祭り会場に歩いていく。


 「祭りは何処であるんだ?」


 「近くの神社がある所での祭りですよ。そんなに大規模な祭りではないと思うのでそんなに人が多いように思いませんけど」


 「東京ならどこでも人が多いんだから変わらんだろ」


 「以前から思ってたんですけど、広先輩は東京出身じゃないんですか?」


 「ああ。三年生の頃までは田舎に住んでたんだが、親が離婚してからこっちに来たんだ」


 「……私また無神経なことを。少し考えたら分かる筈なのに本当にすみません」


 以前にもこんな風に落ち込んだ泉を見た覚えがある。


 「だから、気にすんなって言ってるだろ。三年生だからな。気を使われる方が逆に困る」


 「……そうでしたね。気を取り直して今日は祭り楽しんじゃいましょう!」


 「祭りってただ食事をするだけなのに楽しめるのか?」


 「私は楽しめますよ?」


 顔を傾けて当然のように呟く泉に不覚にもドキリとさせられてしまった。これを素でやっているのなら中々のものだ。


 「だったら思う存分楽しめよ」


 「そうしましょう!広先輩も早く行きますよ!」


 泉が先陣を切ってどんどん走って行き、駆け足で追いつきながら向かえば、直ぐに祭り会場に辿り着いた。


 「…やっぱ人は多いんだよな」


 「アハハ。それを言ったらどこもですよ。取り敢えず私はお腹が空きました。広先輩は?」


 「俺も腹が減ったな。どうせ帰るのが遅くなるなら焼きそばは後でも大丈夫だろ。先に何か食べるか」


 昼は寝ていただけなのにお腹は減る。そして食べ続ければデブになるのかもしれんが、大丈夫だろ……多分。


 「広先輩は何が好きなんですか?」


 「イカ焼きは好きだな。食べても良いか?」


 「勿論です。私もイカ焼き好きですし丁度良いですね」


 行き先が決まったのでイカ焼きの屋台がある場所で並ぶのだが、結構人が並んでいる。分かり切っていたことだが、あんまり色んな場所に行く余裕はないかもしれない。


 「こうなったら、行きたい場所を厳選した方が良いかもな。結構時間かかりそうだし」


 「確かにそうですね。広先輩が絶対に行っておきたい場所とかありますか?」


 「俺よりもお前だろ。俺は腹ごしらえが出来ればそれでいいからな」


 「私は折角神社に来たのでお参りはしたいですね。後はリンゴ飴が食べたいです!」

 

 「なら、取り敢えずそれだけなら他は適当に見て回れる余裕があるかもな」


 泉とこれからの行き先などを決めていれば、あっという間に列は最前列になりイカ焼きを食べれば、久しぶりなのもあるのか中々に美味しかった。


 「やっぱり美味しいです。祭りのイカ焼きは格別ですね」


 「それは少し分かる気がするな。祭りならではの味って言うのがある気がする」


 「分かります!それは絶対にあると思います!どんどん食べていきましょう!」


 「そうだな。バイトをしたから一応お金はあるからな」


  この調子ならリンゴ飴も普通に買いに行けるだろうが、今日の泉のテンションは相当高いご様子でスキップしながら歩いている。


 「おい、はぐれるぞ」

 

 だが、歩くスピードが速すぎてはぐれそうになるので少し駆け足で追いつく。


 「広先輩遅いですよ!」

 

 「お前が速いんだよ!はぐれたら面倒だろうが」


 何とか見つけれたが、少し焦ってしまった。流石東京だ。人がこれでもかと言わんばかりに溢れかえっているので直ぐにはぐれそうだ。


 「うーん、あ、それじゃあ手を繋ぎましょう!」


 「はい?」


 泉が躊躇なく手を差し出してくるので思わず、口を開けて固まってしまう。泉もまた自分でも恥ずかしいことを言った自覚があったのか顔を少し赤くする。


 「こ、これはあれですよ!別にそんなやつじゃなくて折角祭りに行ったのにはぐれたら勿体ないですし!今は多分電波も悪いでしょうから携帯も繋がらないでしょうし!探すのも手間になると思いますし!効率を求めたやつであって!」


 「おい落ち着け。顔がリンゴと同じくらい赤くなってるぞ」


 段々と混乱してきたのか、テンパりながら顔を真っ赤にする泉。


 「べ、べべべ別にテンパってないですし!広先輩の目が節穴なだけですし!」


 「いや、誰が見ても分かると思うんだが……ハア。取り敢えず立ち止まっても時間が勿体ないぞ。楽しむんだろ?」


 「え?」


 俺が手を差し出せば、泉が呆気にとられた顔をしてこちらをのぞき込んでいる。その顔が今だ少し赤いのが中々に面白い。


 「迷子になって楽しむ時間減らしたくないんだろ?」


 「良いんですか?」


 「いや、ここは普通女子が嫌がる場面だからな?お前が別に良いならいいだろ」


 「そ、それじゃあ」


 泉がまるで怖い動物に恐る恐る勇気を出して触る様に手を触れてきた。

 一瞬自分の手に誰かの手が触れるのにむず痒い気持ちになりながらも、なるべく平常心を装えている気がする。


 「取り敢えず、お参りだな。それが一番人が多そうだ」


 「そ、そうですね」


 誰かと手を繋ぐのは本当に久しぶりな気がする。妹や母親とは昔繋いでいたかもしれないが、それが何時の話か分かったものじゃない。


 「――――いや、多いな」


 「本当ですね」


 神社のお参りには長蛇の列が出来ており、本当に長引きそうな感じに思えてならない。


 「で、手を放してもらっていいか?ここなら迷子になる可能性は皆無だろ」


 「え、はい」


 何故か一瞬手を離した時泉の目が動物との触れ合いが終わってしまって名残惜しそうにしている人に見えたのは気のせいだろう。


 結局神社のお参りには一時間近く待たされてしまい、挙句にお参りには十秒ぐらいで終わる。


 「……この十秒間の間に俺達は二時間も待つ必要があったのか?」


 「それは分からないじゃないですか。もしかしたら、願いが叶うかもしれないですよ?」


 「そう言う泉はどんなお願い事したんだ?」


 「私は秘密ですよ。こういうのは言えば叶わないって言うじゃないですか」


 「言っても叶わない可能性もあるがな」


 「うわー。そう言う卑屈な事を言うのはどうかと思いますけど、私は絶対に叶えてみせます。もう変なことを思ってる場合じゃないと思うんですよね。経験が無いとか、勇気が出ないとか、恥ずかしいとか、そんな事を言ってたら危ない気がするんです」


 泉の目が何処か真剣身を帯びている気がした。そこまで真剣なお願いをしていたのか。少し感心してしまった。

 因みに俺のお願いは平穏無事。見事な回答だと思う。


 「叶うといいな」


 「叶えますよ。……そしてこれが第一歩です。広先輩!はぐれたら危ないですから手を繋ぎましょ」


 「それは別に構わないんだが、最初の方なんて言ったんだ?」


 「何でもないですよー。それより祭り楽しんじゃいましょ!」


 「まあ、なんでも無いなら別に良いんだが」


 「――――随分と楽しそうだな」


 「――――――っ!?」


 一瞬頭の中が真っ白になった気がした。


 ……今の声は。


 慌てて背後を振り返れば、その場には人混みに紛れたのか、それとも幻聴だったのか分からない。

 だが、幻聴にしても質が悪い。今この状況で流れてくるのか?


 「……広先輩?大丈夫ですか?」

 

 「あ、ああ。大丈夫だ」


 泉が背後を振り返った俺に違和感を抱いたのか、不思議そうに尋ねるが平常心を保てているのか、今だけは少し自信が無かった。


 「何かありました?」


 今度は違う意味でドキリとしてしまった。


 「いや、何でもない。それよりもリンゴ飴買えなくなるぞ?」


 「あ!確かにやばいですね!焼きそばも買っておかないと愛奈ちゃん可哀そうですし!行きましょう!」


 「だろ?早く行くぞ」


 「止まった広先輩が悪いと思うんですが!?」


 泉に窘められながら、再度背後を振り返るが俺の知る人物は何処にも見当たらない。やはり、幻聴だったのか?――――いや幻聴であってくれ。


 突然の幻聴に惑わされながら夏祭りが終わり、平穏になりかけの夏休みが終わり、――――体育祭が幕を開ける。


 

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