犯人はお前だ‼︎
伊瀬の噂を流した張本人であり、他にも様々な事をしてきた、髪の毛は茶色と黒の基本的な髪をしているが、ポニーテールの髪の毛をし、結び目にはピンク色の可愛いシュシュが巻き付けられている犯人――――学校一美少女である小野美佐子に対し、指を突きつける。
「え?何の話?私意味が分からないんだけど」
可愛らしい声と顔を少し斜めに向け、可愛い仕草で反応する小野に対し、初対面なら可愛いと思えたかもしれないが、今となっては全く何も思わない。
「もうバレてるんだから白状しないか?」
「……校舎裏に連れてきて、何かと思ったけど、私そんなの知らないよ?」
流石にここで白状する程馬鹿な人間ではないか。
「なら少しだけ俺の話に付き合ってくれないか?」
「別に良いよ!」
元気よく顔を前に出して笑顔を向けてくる小野。…うん、確かに可愛い。
駄目だ!正常になれ俺!
「……まず伊瀬の噂が教室で広まり、更には学校中に広まった。初め、俺はこの学校で一言言うだけで影響のある人間の仕業だと思った。だが、漢城に言われ少し考えが改められ、部活の縦の繋がりではないかと思った」
確かに、漢城の言うことは間違いではない。縦の繋がりと言うのは正しい意見だが、今回は初めの意見である有名人の仕業だという見解に至った。
「うーん。話し難しいけど、私は部活入ってないよ?」
そう。それは、昨日漢城と歩いている時に聞いておいたから知っている。
「そうだな。まあ、それは違うと後々知った。だからいいだろう。俺はずっと疑問だったんだ。ずっと伊瀬と噂を流す必要性の共通点、それだけがどうしても分からなかった。だけどな、漢城と話している内に一つ気付いた。それは、共通点なんてなかったんじゃないのかってな。共通点と言うよりは、ただ噂があったから利用しただけ、それだけの事だったんじゃないのかって」
一つ俺の見解が間違えていたのは、共通点ということに固執していたこと。
今回の件は、共通点が問題点ではなかった。ただ、そこにあったのが噂だったから使っただけの事だったのだ。
漢城は言った。俺と小野は人物像が分かりにくいと。その答えは、一つ。
小野もまた自分の欲求に忠実に生きている人間ということ。
本来、人と言うのは他人を意識して生きていかない訳にはいかない。それは人間の本能とも言える。だが、その中でも自分の欲求に忠実に生きている人間がいる。
漢城は情報を手に入れるという欲求に忠実に生き、俺もまた本に忠実に生き、前回、相談部にフィギュアを持った人間もまた然りだ。
それに、小野も同じだということだ。
「へえ。続けて、続けて。名探偵みたい!」
未だ一切表情を崩さない小野は笑顔で話を促す。
こいつの言うことを聞くのは癪だが、ここは続けよう。
「仮に俺の仮説通りとして、小野が噂がその場にあるから使わせて伊瀬を貶めようとする自分の欲求に忠実な人間とする。だが、小野がどうして伊瀬を貶めるのか、それが直ぐに分かったよ。小野、お前は自分が一番で、全てにおいて一番でなければいられない人間なんだ。簡単に言えば、プライドが高い人間だ」
「ええ!?私そんな風に見えるの!?」
驚きに満ちた顔をして答える小野だが、こんな薄っぺらい顔つきは直ぐに消えさしてやる。
「小野、どうして春義先輩と別れたんだ?」
「え?知ってるの?」
「ああ。どうして知ってるとか無駄な話は必要ないだろ。それで、どうしてだ?」
「……私、先輩が一緒に居て楽しくないと思ってるのを察しちゃったんだ。私も先輩にそんな思いさせるぐらいならって思って別れたの」
「どうしてだ?」
「え?今言ったよ?」
確かに言った。嘘だが。
「違うだろ。正直に言えよ」
「どういうこと?私意味が分からないよ」
「お前は春義先輩とまだ付き合っても良かった。だけど、あっちが段々と冷めているのを察した。だが、あちらから振られるのは自分のプライドが許せなかった。だから振ったんだろ」
「違うよ!私そんなこと思ってないよ!……どうしてそんなこと言うの?」
少し涙目で呟く小野。まるで、俺が悪い事をしているように見えるが、何故だろうか。全く罪悪感が感じなかった。
「どうして、こんな事を言うのか。それはな、俺がきちんとお前が悪人と分かっているからこそこうやって言ってるんだよ。黒柿涼、知ってるよな?」
「う、うん。私が中学校の頃付き合ってた人だけど」
若干、歯切れが悪い返しがきた。小野もこれについて知っているとは思わなかったのだろう。
「黒柿に聞いた話では、お前とは中学と言う時代であり、初心な時期で密かに付き合っていた為、周りには知られていなかったが、別れる際にお前は『他に好きな人がいるから別れて』と言ったらしいな。初めに小野が別れを切り出したが、もう少し考えてと黒柿が伝えるとこんな事を言われたと黒柿本人から聞いた」
前回の話を覚えている人物もいるだろう。黒柿は本音をぶちまける時『女に騙されたんだ』と言った。それが小野だということを昨日の内に聞いておいた。
「私そんなこと言ってない!彼が私と別れたことに根に持って勝手に言ってるんだよ!」
小野は本当に何も知らないように訴える。確かにここだけ見れば、俺の見間違いかもしれないと思ったかもしれない。………これだけならな。
「――――宇治幸也って知ってるよな?」
「――――――」
小野も流石にその人物が出るとは思わなかったのか、口を半開きにし、眉を少し吊り上げる。
宇治幸也。彼は、泉と一週間だけ付き合っていた人物であり、『お悩み相談部』が始まって以来最初の依頼である。昨日の内に泉にお願いをし、連絡を取ってもらい直接話を聞きに行ったのだ。
「彼もまたこっぴどく振られたらしい。しかも、付き合っていたのは小野美佐子。お前だと。宇治が言うには、『もう別の高校だし、あんたに興味無いから』と言われ、振られたんだと。お前、相当やばいな」
「ち、違うよ!それも彼が勝手に言ってるだけだから!」
俺が気付いたのは、伊瀬と噂の共通点ではなく、今までの案件の共通点に気付いたのだ。今までの案件で黒柿、そして宇治には女に騙されたと言っていた。そして、俺が初め予想していた小野が自分の欲求に忠実な人間であり、実は完璧な人間を演じているのではないかと思った。
一人の少女――――宇野美佐子の手によって女に一度絶望を与えられた被害者の二人を今回の案件で気付いた。
騙されたという二人の言葉に話を聞こうと思ったが、まさかここまで合っているとは思わなかった。
「もう諦めたらどうだ?一人ならまだお前の言うことを信じるかもしれないが、二人だぞ?お前は他の学校なら残酷に振っても良いと思ったのかもしれないが、甘いな。黒柿に関してはこの学校にお前がいるとは入ってから知ったらしい。それにこう見えて部活に入ってから色んな人に出会っている。その一人が宇治だ」
まさか、ここに来て『お悩み相談部』の案件が活躍して来るとは思わなかった。もしかしたら、まだまだ被害者が出てくるかもしれないが、こればっかりは分からない。
「――――」
「だんまりか。知っているか?こいつら二人はお前に残酷に振られたことを周りに伝えたが、小野がそんな事する筈がないと誰も信用してくれなかったんだと。最低な話だよ。これで、心が痛まないお前に驚きを隠せない」
「吉条君は私の事を知らないからその二人のことを信じてるんだよ!私は本当にそんな事する人じゃないんだから!」
ここに来てまだ隠し続けようとするのは見事としか言いようがない。
だが、これでは意味が無いのだ。こいつが本性を現し、最終的に罪を認め、これ以上流さないように確証を取らなければならない。
だが、それには今回は心理的操作は使えない。それは、彼女が俺と同じ人種であり、あまり掴み所がない、更には今回は協力者がいない。よって、今回俺がとる方法は彼女のプライドをズタズタにし、本当の姿を見なければならない。
だからこそ、ここで清水が調べた燃料を投下しよう。
「――――春義蓮先輩はお前と付き合ってる間に浮気をしていた」
「……は?」




