第06話 帯電 と 感電
湖に到着し、魚影を見る。が魚影だけではいかんせん本当の大きさがわからない
どうやっておびき寄せようかと思案しているとブッチーとルーが近くの木の枝の木の実を取り始める
「何してるんだ?ブッチー、それ臭くて食えなかったぞ?」
「ギランはコレが大好物でしてコレを投げ入れると寄ってくるんです」
「なるほど、いっぱい集めればいいのか?」
「いえ、そこまでの個数は要らないです」
なら見ておくだけでもいいか。と俺とコウはその場で待つ事にしたのだが、その横を颯爽と走り抜けるバカ(シラタマ)1匹
「取ってきたニャ~!」
そう言ってどうやって抱えてたのか判らないほどの木の実投げ入れようとしていた。
「まって!しらた・・・」
「とぅ!」
バシャバシャバシャバシャと全部の木の実を一気に投げ入れた。
まぁ、入れてしまった物は仕方ないのだがすでに逃げ腰になっているブッチーの反応が気になる。
「おいブッチー、投げ入れた量によって強さが変わってくるとかあるのか?」
コウから飛び降り警戒しつつブッチーに聞く
「いえ、有る程度の量までならいっぱい寄ってくるだけなので、その中から選べばいいんですけど・・・入れすぎるとヌシ級が来る可能性があります」
ヌシ級・・・ね・・・ハハッ・・・
「なにしとんじゃボケ~!」
「ピャッ!・・・ニャって成人するためニャんでしょ?ニャらでっかいほうがいいと思って・・・」
やけに道中静かだったのはこの木の実を集めてたのか・・・
よし、このバカは後でシメるとしてまずはどうにかしないとな
水面を見てみるとギランが来る様子が無い。
「なぁ、何も起こらないが何も来ないって事はあるのか?」
「ない・・・と思います・・・普段なら入れた瞬間から何匹かのギランがくるのですが1匹も来ないって事は無いです」
あ~嫌な予感がするなぁ~
ヌシ級が寄ってきてるから他のが逃げたのかもなぁ~
準備だけはしておかないとな。
俺はアイ経由の念話で
(コウはアイに指示を貰え)
(え?)
(今はまだこいつらにアイの存在を知られるわけには行かない)
(判りました。)
そう指示を出した。
さて、ヌシ級ってどの位の大きさだろうか前見た5m位なら良いなぁ~
などと打算的に考えてたが次の瞬間あっけなくその考えが崩される。
水面が盛り上がり一気に爆発する
口をあけて木の実全部を一口で飲み干そうとするギランが飛び上がる
その大きさは10m近い・・・チッ・・・最悪だ。
「ヌシ級だ・・・」
ボソッとルーが呟いたのが聞こえたが見れば判る。
それを聞き終わる前にコウに指示を出す
「コウ!後ろに下がって魔法用意!威力を抑えて目だけをつぶせ」
「はい」
「ブッチー、ルー、バカは俺が引きつけるから隙を見て攻撃!」
「はい」
「バカってわたしかニャ!?」
ルーは頷くだけだがやる気は一番ありそうだな。
ブッチーは少しビビッてる感じか?
シラタマはバカと呼ばれた事を怒りつつもすでに臨戦態勢だ。
ギランはそのまま一旦水に落ちたが、まだ木の実は残っている。
(もう1回来ると思うか?アイ)
『その確率は高いです』
(じゃぁそれにあわせて俺が角をつかんで引っ張ればいけそうか?)
『保険として触手2本ずつ片側を後ろの太めの木に巻きつけておく事を推奨します』
(なるほど、そのまま持ってかれたら事だしな)
「多分もう1回くるから、その時俺が奴を岸に引き上げる」
「「はい」」
俺はすぐに触手を後ろに伸ばし木の幹に巻きつける。
そして前方に3本の触手を絡ませながら伸ばす。
2本と言われたが保険的なもので3本にした。
水面が膨らみ爆発する
「ビンゴだ!」
出てきた角の根元に三つ編にした触手を絡ませ力を入れ硬直させる。
体格差から持っていかれそうになり、俺の体が浮き上がる。
ギランは上に飛び上がったのだが、木にも触手が巻きついているので弧を描くように陸に向う。
よし、計算どおりだ。
きめ台詞でも言ってやろうか思った瞬間、角に電流を流しやがった。
「アババババババババ」
ヤベ、喋りかけで電流を流されたらコントみたいになるのか!
しかも手を離したいのに離せない。
「クソガ!」
余ってる触手で秘密兵器を取り出し、ギランの口の中へ放り込む。
痺れている体に鞭を打ち、力任せに角に絡まった触手を離そうとする。
激痛が走り千切れそうな感覚を覚える。
ブチッと三つ編みの触手の先端が千切れ俺は空中に放り出された。
アイキャンフラ~~~イ
と言いたかったが全身痺れて言えなかった。
不覚だ。
いつか空を飛んだら言いたかったのに。
『NO:飛んでるのではなく落ちています。
それにマスターに飛行能力はありません』
アイの容赦の無いツッコミが入る。
そんなくだらないやり取りをしていたら横を風が走った。
コウの魔法である。
それは的確にギランの目を射止める。
「グガオォォォオォォ!」
放電を纏ながらギランは地面に落ちる。
放電のおかげでネコ達は追撃できなかったみたいだ。
ギランはすぐに起き上がり目を潰したコウを標的にする。
コウがもう一撃と風を走らせるがギランも角から稲妻を走らせ相殺する。
やるなぁ~。
コウが本気じゃないと言っても、あの魔法を相殺するとはな。
ちなみに俺は痺れて木に引っかかった状態でぶら下がってる。
コウは次弾を撃つべく木々を縫って移動する。
「さて、そろそろかな?」
そう呟くと、あからさまにギランの動きが鈍ってきた。
すかさず俺は指示を飛ばす。
「ブッチー!ルー!両サイドからエラを攻撃しろ!
シラタマは残ったほうの目を攻撃!」
「「はい!」」
「コウ!ギランの両目が潰れたら眉間に魔法を叩き込め!」
「はい!」
ブッチーとルーが尻尾の方から両サイドに分かれて走り、鉄の爪でエラを引きちぎるように掻っ切る。
ギランがもだえた瞬間シラタマが残った目を潰す。
「ゴオオオォォォォ!」
ギランが放電するがバチバチッとしただけで、ちゃんとした放電は出来ないようだ。
「いけ!コウ!」
言うと同時に魔法がギランの頭ではじける。
ズゴーンとギランが倒れピクリとも動かない。
「えらい朝食になったもんやな・・・」
痺れが取れてきた俺は木から触手を解くとボテッと落ちてそう呟いた。
「そうですね、でも仕留められてよかったです。」
そう言って俺を抱き上げるコウ
シラタマ達を見ると喜びギランの周りではしゃいでいる。