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死後世界触手譚  作者: 青風
国家誕生
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第103話     勝つ者 と 負ける者

視点が何度か入れ替わります。

読みにくいかもしれません、もし読みにくければ言ってください。

ベランダに出て敵が居るという方向を見ると確かにそれは存在していた。


「まさか、戦闘機を完成させている国があるとは・・・しかし、あれは・・・」


メイソン王はすぐさま理解した。

その戦闘機が普通では無く、自分の理解を超えているモノだと言う事を。


「アレは何だ?」


隣に居た護衛兵に問いかけるように呟く。


「・・・わかりません。」


護衛兵もこの国の叡智と呼ばれる王が見た事ない物を判るはずも無く俯きながら答える。


「空中で’静止’出来る戦闘機なんて聞いた事も無いぞ。」


信じられない物を見て呟くように零す。


「王様、何故我々が彼等の国に潜入した事がばれたのでしょうか?」


1人の文官がそんな疑問を口にする。


「そうだ、何故ばれたのだ?

 ジョニーは不遜だが、ばらすとは思えない。

 ばらす位ならば死を選ぶだろう。」


実際ジョニーは潜入に失敗し追い詰められた際自決していた。


「それならば王様、ここは相手の指揮官と話をし、こちらは何の関係もないという姿勢を貫くのはどうでしょうか?

 その上で被害者を装い彼の国に賠償として技術提供させるのはどうでしょうか?」

「ふむ、しかし上手く乗ってくるかな?」

「向こうも国を名乗っているのです、何の根拠も無しに無抵抗の国を滅ぼしたとあっては、周りの全ての国を敵に回すことになるでしょう。」

「よし、我が直に出よう。」


身支度を整えさせ車を用意させる、戦車で行こうかとも考えたが威嚇をしては意味がないと判断したためだ。


 ◆


(アブドラ、誰か来たニャよ?)

(はい、こちらでも見えています。)


シラタマからの念話に答え指揮官機を降下させる。


「フフッ、この世界に車があったとはな。」


周りの風景に似つかわしくない鉄の箱が煙を上げてこちらに向かってくるのを見て思わず笑みがこぼれる。


「自動車って・・・笑わせてくれるぜ。」


アービーも同感のようだ。

シラタマやジー達ネコ族からすれば嫌な思い出を持つ者も居るだろう。

その自動車が少し離れた所で停止し、着飾った1人の男と1人の老人が降りてきた。

その着飾った男の付き添いであろう老人がこちらに呼びかけてきた。


「責任者の方と話がしたい!こちらにおわす方はダイダロス国王メイソン王である!」


アブドラが軍服の上着を風になびかせつつ前に進み出る。


「王自らの登場・・・何か用ですかね?

 もう少ししたら作戦の開始時刻なのですがね?」


笑いを必死に堪えつつアブドラが言い放つ。

その態度が気に入らなかったのか老人が憤る。


「王の御前だぞ!何だその態度は!」

「いやはや、すみませんね。

 私は、ボードワン少尉。」


アブドラはあえて前世の名を使った。


「少尉?下っ端では無いか!私は’責任者’と言ったのだぞ!」

「あぁそうでした・・・これは前世の名前と階級でした。

 今はアブドラと申します、バアルを司るただの’魔王’ですよ。

 すみませんね下っ端で。」

「な・・・魔王・・・だと・・・」


後ろでアービーが腹を押さえて笑っている。

驚きを隠せない老人を手で遮りメイソンが進み出てくる。


「魔王が一体このダイダロスに何用だ?」

「いやね、先日私達の国に賊が侵入しましてね。

 その者がこちらの手の者だったのですよ。」

「賊?そんなもの知らんな、何かの間違いじゃないのか?」


アブドラを真っ直ぐ見据えたメイソンがハッキリと否定する。


「これは大問題ですぞ?

 濡れ衣を着せた上にさらに兵まで派遣してくるなどと・・・

 これは国同士でじっくり話をさせて頂く必要がありそうですな。」


メイソンの言葉に続けるように老人が言い放つ。

アブドラの頭に生前居た世界にあった戦後に出来た被害者面をして搾取するだけの国が過ぎった。


「なるほどなるほど・・・言いたい事はそれだけですか?」


アブドラは頷いた後メイソンの目を見てハッキリと言い切った。


「なっ!何の証拠があって我がダイダロスに攻め入るのだ!」


横に居た老人が慌てながら横槍を入れる。


「証拠?事実を捻じ曲げておいて何をいうかと思えば・・・笑止!

 どうせ、自分達の持っていない技術欲しさに忍び込んだのだろう?

 潜入が失敗したら今度は被害者面で関係無いと声高に叫んで技術提供でもさせるつもりか?馬鹿馬鹿しい。

 そんな国は消滅すればいいと思うのだが。」


眼光鋭く老人に言い放つアブドラに後ろから声が掛かる。


「ああ、そうだな、こんなのが外交だとか虫唾が走るぜまったく。

 おっと俺の名前言ってなかったな、俺はアービー、ヴァルファーレを司る’魔王’下っ端だよ。クククッ」

「ま、魔王が2人・・・だと・・・」


この老人は死ぬんじゃないだろうか?というほど驚きながら後ずさる。

しかし、メイソンはそんな表情を一切浮かべずにアブドラを見据えていた。


 ◆


目前にはおよそ魔王と言われても信じられないような軍服を着た美少年と、虫のような目を持ち野生という言葉が似合う少年。

だが2人から感じる威圧感が本物の魔王だと言う事を証明している。

それに加え、周りには見た事も無いような技術で造られているホバータイプの戦闘車両に、空中静止が出来る戦闘機。

乗り手は全員ネコ族なのだろう、腰にはネコ族特有の武器である爪がぶら下がっている。

メイソンはこの時初めて踏んではならない虎の尾を踏んだ事に気がつく。


(見た目はネコの尾だが、実際は完全なトラの尾だな。)


自分の考えに失笑しつつ相手との戦力差が歴然と言う事を改めて感じる。

しかし、王という立場プライドが退く事を許さない。


「あくまでも、我等ダイダロスに楯突き戦争をすると言うのか?」


メイソンはあらん限りの意思を込めアブドラを見据える。


「戦争?これは争いではありませんよ?

 [殆どの戦いの勝敗は最初の一撃が撃たれる前に既に決まっている]

 でしたか?」

「ナポレオンか・・・」

「そうです王よ!貴方が私達下っ端の前に姿を現した時点で力関係はハッキリしているのですよ。

 これは、そう・・・罰ですよ。フハハハハハッ」

「クッ・・・帰るぞ!」


メイソンは文官を連れ車に乗り込もうとすると笑っていたアブドラが言葉を投げかけてきた。


「アハハハハ!そうそう言い忘れてましたが、後8分で作戦開始時刻ですので。」


メイソンは戦慄を覚え理屈など通用し無い事を悟り何も言わず車を出した。


「理不尽すぎる!こんなのは外交でもなんでもない只の殺戮者の考えだ!」


隣で文官が憤るが、実際は我々が先に手を出したのだ。

賽は投げられた、いや・・・投げたのは自分達だ抗うしかない。


「我等は相手を見誤ったのやも知れんな。」


車を防衛線の前で停止させ急ぎ降りる。

前線の兵士達は目の前に現れた国王を見て驚きを隠せない。

メイソンはあらん限りの声で兵士達を鼓舞する。


「勇敢なるダイダロスの兵士達よ!

 敵方との交渉は決裂した!

 敵は帝国を滅亡させた相手、同じよう我が国を滅亡させない為に死力を尽くせ!

 技術を奪おうなどと色気は出さなくて良い、絶対にこの国を守り抜くのだ!」

「「「「「おおおおおおおお!」」」」」


 ◆


敵兵から雄叫びが聞こえる。

きっとさっきのメイソンが鼓舞しているのだろう。


「言い過ぎたか?」

「いや、あれ位言った方が良いだろ、頭でっかちな奴等には。」


アブドラの言葉にアービーが即座に答える。


「だけどよー、既に決まっているとか言ってたが、戦争ってのは強いほうが勝つとは限らないんじゃないか?」


アービーが腕を組みながらアブドラに言う。


「いや、どんな戦いであろうと強い者が勝つ。

 それだけは覆す事ができはしないよ。」


答えながら戦闘機に乗り込むとアービーも左翼に飛び乗った。


「ジー将軍」

「なんですか?」

「ここから先は勝つにせよ負けるにせよ悲惨な戦いになる。

 ネコ族の皆さんはそんな業を背負う必要は無いのですよ?」

「アブドラ将軍、私達もエクレラントの国民です、それにセンさんが言ってましたよ?

 [同じ飯を食ったら仲間であり家族]だと。

 私達は貴方方を仲間であり家族だと思っていますよ。」


ジーはアブドラにそう言うとバイクに跨った。


「フフッ、そうですね」


アブドラは魔力を込め戦闘機が上昇する。


「時間だ・・・全軍!歯向かう者全てを蹂躙せよ!」

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