第103話 非難 と 支持
アブドラが指揮官機に乗り込み、その後部座席に俺が乗り込むと、すでに左翼で寛いでいたアービーが俺を見て目を細める。
「旦那、なんかいつもと雰囲気が違うな。」
その言葉にアブドラが離陸しながら得意げに答える。
「当たり前だ、今の少佐はカミカゼと呼ばれていた時の少佐だ。」
「カミカゼ?特攻でもするのか?」
アービーが頭に「?」を浮かべながら聞いてくる。
「いや、俺って日系だったから知ってる言葉を当て嵌めただけらしい。」
「なーるほど」
この戦闘機はグラニより早い為、思ったよりも早くジー達の機甲部隊と合流できた。
ジーの部隊にはシラタマも随伴していた。
静かだと思ったら街にシラタマが居なかったのか。
シラタマは俺達を見つけると半泣きになりながら抱きついてきた。
「センさんニャッ!」
聞くとコウが襲われて、最初に駆けつけたシラタマはコウが攫われるのを阻止し損ね、そのまま村を飛び出し追いかけたらしい。
「だから敵兵が転がったままだったのか。」
半泣きで抱きついてくるシラタマを撫でつつ、ジーと情報のすり合わせを行う。
「ですが、相手は少数な上に空を飛んで逃げているのでかなり差が開いております。」
ジーが申し訳無さそうに報告してくるが「それは仕方が無いから大丈夫だ。」と言っておいた。
部隊と少数の兵ではどうしても差ができるのは当たり前なのだから。
コウを攫った奴等は魔力の優れている数人が張り付いているらしい。
一定間隔で目印を落としてくれているので国に戻らなくても行き先が判るという寸法だ。
「ジー、お前達はこのままアブドラと共にダイダロスに向かえ。」
「セン殿1人でコウ殿を?」
驚くジーに無言で頷く。
「嫌ニャ!ワタシもコウを助けるニャ!」
とシラタマが我侭を言う。
「これは命令だ。」
と真剣に言うと渋々納得した。
なんだかんだ言って、コウとは仲が良いようだからその気持ちは判らんでもないんだが、ここだけは譲れない。
ジーと合流した俺はジーの部下の1人からバイクを借り受け分かれた。
ジーの部下の痕跡を追いかけながら追いかける事数日で森を抜けた。
森を抜けてから更に数日走ると小さく街が見えてきた。
街から見つからない程度に離れた場所を探すとジーの部下を発見し合流する。
「ご苦労さん」
声を潜めながら手を上げる。
「セン様!」
「あの街に入ったのか?」
「はい、それであの中央の宮殿に入って行くのを見ました。」
カツから支給されている双眼鏡を手に情報を教えてくれる。
「入ってからどの位経った?」
「6時間と言った所でしょうか。」
(6時間か、結構飛ばしたつもりだったがまだそんなに差があったか。
だが6時間程度ならコウがどうこうされてるって事はまだ無いだろうな。)
「どうか致しましたか?」
黙り込む俺に兵士が心配そうに声をかけてきた。
「いや、大丈夫だ。」
兵士を見るとここまで殆ど休憩していなかったのだろう・・・かなり憔悴している。
ジーの部隊の中でも特に魔力が多い部下を選んだのだろうが、それでここまで消耗していると言う事はこの兵士もかなり頑張ってくれたのだろう。
「無理させたな、後は俺に任せてゆっくりで良いからダイダロスに向かってくれ。」
と労いの言葉をかけつつダイダロスの方角を指し示す。
斥候は俺の意を汲んでくれたのか何も言わずに頷きバイクに跨り走り去る。
「さてと・・・」
異空間からこの場所に適した迷彩服を取り出し手早く着替える。
体中に近くの草を巻き付け風が吹くと同時に匍匐前進で少しずつ進む。
(匍匐前進とかいつ以来だ・・・)
街まで3000mほどまで近づき双眼鏡を覗くと街の周りを哨戒する兵士が見て取れた。
◆
シラタマ達と合流したアブドラは合流した事により少し速度を落としつつ進軍している。
「シラタマ殿、何故少佐に着いていかなかったのです?」
右翼に乗るシラタマにアブドラが疑問を投げかける。
「いつもと雰囲気が違ったからかニャ・・・ニャんか、いつもより怖かったニャ。」
「もうゾーンに入っていたと言う事ですか・・・あの気配を感じ取れるとは流石元ネコですね。」
「ゾーン?」
「精神集中し始めた時の少佐の事です・・・少佐になる前の事なので少佐というのは変ですが、ゾーンに入ると他の兵はあの人の気配を察知できないんですよ。
その気配を消した状態の事を我々はゾーンと呼んでいました。」
「旦那はそんなに凄い兵士だったのか?」
アブドラの言葉にアービーが口を挟む。
「狙った標的は確実に仕留めていたからな、そのお陰で私の居た部隊の評価も高かったのだが。」
「んじゃ、お前は雑魚だったのか。」
「な・・・んだと・・・!」
「ハハハッ!冗談だ。」
敵地が近づくにつれ緊張していくアブドラをアービーなりに解したのだろう。
アブドラもそれを判ってか肩の力を抜く。
森を抜けると遠くの方に城が見えた。
気を引き締めなおし陣形を維持しつつ進軍する。
「敵拠点を発見した、シラタマ殿ジー殿の所へ。」
「わかったニャ。」
アブドラがそう言って降下しようとしたらシラタマが飛び降りる。
結構な高さなのだが地面にストンと降り立ちそのままジーの所まで走る。
それを見届け双眼鏡を覗くと敵が慌てたように陣を展開しているのが見えた。
「アービー」
「ん?」
「確かに私はあの方の足手纏いだったのかもしれない。
だが今は俺もお前も曲がりなりにも魔王なのだ。
お前もあの方の足手纏いにはなりたくないだろう?」
「だな、いっちょ頑張るか。」
「そうだ、足手纏いでないと証明しなければならないのだ。」
ニヤリと笑い合った後、真剣な顔で前方の敵を見据える。
「エクレラント兵に告ぐ!
これは演習ではなく実践だ!
操縦者はしっかりとサインを見ていれば良い。
不安がる必要は無い、安心せよ!
相手は・・・雑魚だ。」
「「「おおおおおおっ!」」」
◆
「失礼します!」
「何事だ?」
飛び込んできた兵士に対しメイソンが鋭い視線を向ける。
「外交筋よりドワーフの国ガレーラと、エルフの国フェルムドが我々ダイダロスとハーメラルを非難する声明を発表しました。
それと同時にエクレラントという国を認め支持するとの声も上がっております。」
「エクレラント・・・?」
「ハッ!なんでも帝国を滅ぼした国だとか。」
「なんだと・・・」
そこへまた新たな兵士が走りこんできた。
「失礼します!」
「今度は何事だ!」
「このダイダロスに向け謎の兵が森を抜けて進んできます!」
「謎の兵?どんな奴等だ?」
「それが・・・」
兵士が困惑気味に言い淀む。
「どうした?ハッキリ答えぬか!」
「ハッ・・・見たことも無い戦闘機と戦闘車両で武装された一団です。」
「戦闘機だと・・・まさか・・・?」
ガタリと同様を現すように立ち上がるメイソン。
メイソンは動揺する。
(まさかドワーフやエルフが擁護するほどの国だったのか・・・?)
「王様、いかが致しましょうか?」
ハッと我に返るメイソン、しかしそこは王と呼ばれる人物だけあってすぐに指揮を取る。
「今よりダイダロスは第1級厳戒態勢に入る。
戦車を前面に出しつつ守備陣形を整えよ!」
「ハッ!」
こうして、エクレラントという国を世界に認知させる事になる戦いが開かれるのである。




