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超越探偵 山之内徹  作者: 朱雀新吾
第四話 超越探偵と七つの密室と消去法探偵神山司
35/68

土曜日 事件後 山之内徹

 奇跡の銅像の直後の話である。

 つまり、魔魅子フェスの最終日、2011年11月20日、土曜日の事件が終わった後、連日と同じ様にすぐさま館を飛び出そうとした俺達は後ろから声を掛けられた。

「あ、待ってくれ、山之内君、真由美ちゃん」

 振り返ると、そこにはハンティング帽をかぶったおっさんがいた。

「あ、貴方は」

 あ、大手柄ソドム彦さんじゃないか。へえ、最近よく会うな。

「大手柄ソドム彦さんじゃないですか」 

「・・・・大屋だよ。大屋圭吾」

 全然違った。あれ?ソドムは絶対だと思ったんだけどな。

「あら、記者さんじゃないですか。偶然ですね」

 真由美が隣から嬉しそうに話しかける。

「ああ、真由美ちゃん。こんにちは。実は月曜日から来ていたんだよ。アニメフェスの取材さ」

「ええ、そうなんですか、ていうかそれってもう六日前じゃないですか。声ぐらいかけて下さいよ」

「ああ、そうしたかったんだけど、君達はいつも事件を解いたらすぐに外へ飛び出していってたろ?僕は僕でアニメフェスの取材もあったからね。なかなか話しかける機会がなくて」

「そうなんですか。でも、本当、奇遇ですね」

「ああ」

 ああ、そうでしたか。

 月曜日から六日間という事は、つまり初日である日曜日にはいなかったんだな。あら、勿体無い。オークションもあって初日は盛り上がったのにな。まあ、俺は最後しか行けなかったけどね!!というか結局間に合いませんでしたけどね。

 でも、神山さんのおかげで予習出来たわけだし、いいか、それはそれで。もう言いっこなしさ。

 それに、今日の最終日の盛り上がりもそりゃあ凄いだろうからな。俺はもう、楽しみで仕方がない。

「ところで山之内君。今回はどうしてこんな場所まで?まさかアニメフェスに来ていたなんて事はないだろうけど」

「ははは!まさか、そんな僕がわざわざこんな場所まで『世紀末魔彼女カタストロフ魔魅子よ永遠に~忘れられた刻、禁じられた場所、その慟哭も嘆きも苦しみも憎しみも全てこの地に伏せよ。さらば魔魅子、そしてありがとう、初めまして。ここからはじまる新たな魔魅子の伝説。某県の中心で魔魅子を叫ぶケモノ達の集い!山之内徹死ね!!突っ走りまくって反吐を吐け野郎共!!OneWeek!!!!』などに参加する筈がないじゃないですか。もう、嫌だなあ。そんな子供じゃありませんよ僕は。はっはっはっは!」

 何故か速攻で否定してしまった。何故なのか。このうだつのあがらなさそうなハンティング帽のおっさんから下に見られそうで、嫌だったのだ。

 胸を張っていればいいのに、何故だか見栄を張ってしまった。

「まあ、野暮用といいますか、そんな感じですよ」

 俺は適当にお茶を濁したが、記者のおっさんはなにやら納得したようにうんうんと頷いていた。へへ、ちょろいぜ。

 俺は石コロ記者の持っている電子メモが気になった。 

「石コ・・・・記者さんの電子メモって、真由美のおじいさんの会社のですよね」

 石コロと呼びそうになって、咄嗟に修正した。危ない危ない。

「ああ。そうだよ。最新機種さ」

 記者は誇らしげに電子メモを掲げる。

「これって凄いですね。検索機能もついている機種じゃないですか」

「記者さん。いつもご愛顧ありがとうございます」

 真由美が嬉しそうに頭を下げる。

「いやいや。性能が良いから使っているだけだよ。そもそも僕は二十年前から『川原電機』の電子メモのヘビーユーザーでね。新機種が出るとデータを移し替えて使用しているんだ」

「へえ、じゃあ初代から使っているんですね。凄いデータ量なんじゃないですか?」

「ああ。でも今持っている新機種のデータ総容量に対して、半分しかメモは入ってないんだよ。宝の持ち腐れも良い所さ」

「そうなんですか」

 うん、どうでもいいな。マジで。そんなお気に入りの電子メモの話とかされてもな。なんか普通に気持ちが悪いな。

「取材した内容が書いてあるんですね」

 だが、何故俺がわざわざこの電子メモを手に取ったかというと、魔魅子フェスの裏情報が書いてあるのではないかと思ったからだ。幻の最終回の放送決定(悲願!)!!だとか。だが、読んでみても特に情報はない。というよりも、電子メモ内の魔魅子フェスの誤表記が気になった。脚本家の名前。変身シーンの時間の表記ミス。屋台の場所。まだまだある。ありまくる。もう、コイツ、ネットでタコ殴りにあいたいのかよ。普段なら放っておくが、魔魅子に関して間違われると流石に訂正しない訳にはいかない。俺はその事を記者に優しく教えてあげたのだった。

 というか、この電子メモ、地図なんかもメモ出来るんだ。イベント会場の見取り図を見て気が付いた。

 その中に俺は明らかに違う一つの地図を発見する。これは、アトラクションの地図か。

「記者さん、これは?」

「ああ、それかい。それは新しく出来るテーマパーク『オリエンタルランド』の地図さ。アニメフェスの前に取材で行ってきたんだ。まだ一般公開されてないからね。貴重だよ」

 俺は魔魅子の一般公開されてない貴重な情報が欲しかったのだが。ああ、なるほど、この取材の所為で記者は魔魅子フェスの初日に間に合わなかったというわけか。かわいそうに。

「そういえば、来年辺りに出来上がると、ニュースで言っていましたね」

「徹君、出来たら私行きたい!ねえ」

「そうだな、一度は行ってみてもいいか」

「やった!約束だからね」

 大喜びで飛び上がる真由美。なんだよ、そんなに遊園地に行きたかったのか?お子様だなあ、真由美ちゃんは。

「ええと、記者さんは今日帰られるんですか?」

 真由美が尋ねる。

「ああ、アニメフェスの取材が終わったらね」

「そうですか、明日までいればいいのに」

「はは、ありがとうね」

 真由美め、何言ってんだ。今日が最終日なんだから今日帰ればいいんだよ。まあ俺達悠々自適な中学生達は今日のラスト魔魅子フェスが終われば、今晩は泊まって明日の朝帰るのだが。

 学校は、当然サボる。というか、もうサボりまくっている。

「残念だけど明日も取材なんだ。某県会議員への取材なんだけど」

「へえ、珍しいですね。記者さんがそんな真面目な取材をするなんて」

 確かに真由美の言う通りだ。事件でも一言も喋らないのに、政治家に取材だとか大丈夫なのか、このおっさんは。

「はは、僕は基本的にどんなジャンルでも取材するからね。只々、メモしているだけだけどね。記者仲間からは『メモの大木』と言われているよ」

 俺は思わず笑ってしまった。「メモの大木」だってさ。記者仲間、ナイス。

「で、次に取材する政治家。細山田太光という人なんだけど、知っているかな」

 細いんだか太いんだかよく分からないヤツだな。記者のおっさんは名刺を差し出す。俺は特に興味もないが、つい空気で受け取ってしまった。

「最近よく名前を聞くよ。新進気鋭の県会議員でね。徐々に影響力を広げていってるんだ。『オリエンタルランド』も細山田議員の発案だよ。『地域の活性化』らしい」

「へえ。まあ、選挙権を得たら、また思い出しますね」

 ふうん、遊園地作ったり、なかなか良い事考えるね。だが、感想はそれだけで後は一切の興味を失った。真由美はそうではないみたいで、質問を重ねる。

「その政治家さんは、今どちらにいらっしゃるんですか?」

「今日は、某府で講演会らしいから、そのまま会いに行くんだ」

「某府??また遠い所ですね」

 真由美が目を丸くする。

「ああ、だから今日はアニメフェスの取材が終わったら電車に乗って空港まで行くんだ。朝まで待って、朝一で某府まで発って。取材が終わったらとんぼ帰り、別の取材があるんだ。新しい動物園の」

「はあ、なんだかんだで凄いんですね。記者さんって」

「どこでも行くよ。興味のある事なら。全国津々浦々。勿論、仕事でもね。最近はそっちの方が多くなってきているけど。本当なら今は一年程山之内君に密着取材したいくらいなんだ。全ての取材をキャンセルして、そうしようかなんて、本気で思っていたりするんだけど」

「ははは、ご勘弁を」

 マジ勘弁してくれ!それだけは!土下座するから!


「ああ、そうだ」

 俺は記者のおっさんの帽子をめくってみる。だが、いつもの様に真っ白だった。

 それではいつものついでにもう一つ。

「ええと、記者さん。『魔法陣グルグル』では?」

「ルンルンかな」

 ククリ一択だろうがよ。いや、まだジュジュならともかく、まさかのルンルンかよ。いや、あの闇のお姉さん、良いんだけどね。エキゾチックで。

 だが、やはり俺とまったく気が合わないにも程がある。

 さて、いつまでもここで時間を喰っている場合ではないか。魔魅子フェス最終日会場へと早くいかないと。俺は時計を気にしながら、真由美に言う。

「ほら、真由美、そろそろ行くぞ。今日はなんてったって・・・・あれだろうが。ほら、あれだ。その、事件だ」

「はいはい」

「ああ、呼び止めて悪かったね。それでは」

 そこでおっさんとさよならするつもりだったが、俺達はまた別の人物に呼び止められた。


「山之内君、真由美ちゃん」

 見ると、そこにはまさかのあの人が――!!。


 セーラー服を着た美少女。


 消去法探偵、いや――――天才女子高生探偵神山司さんが立っていたのだ。


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