第七章 想いの呼応
「…シェーナさん、僕は…僕が、わからない」
ルーアンの前に立ったまま、両手を組んで目を閉じたアズロは、何に祈るのだろうか。
シェーナはその横で小さく、安らかに、とだけ呟き、バルコニーの遥か彼方を見やる。
「そうだね…私も、色々、わからない。自分は何者なのか、この意思は、私のものなのか、って。だけど、私は、私なんだと思うの」
「シェーナさんは、シェーナさん……僕は、アズロ、か」
「うん、たぶん、それでいいんじゃないかな。少なくとも、今は」
「今は…。……そうだね。うん、それに――」
言いかけて、唐突な…耳をつんざくような轟音と、目映い光に警戒を強めた。
少し前に上空の暗雲から降り注ぎ続けていた刃の威力は増していたはずなのに、音とともに、雨が止む。
しん、と静まりかえった辺りに、薄く淡い日差しが降り注いでいた。
雲間から大地を照らすその光は、再び徐々に薄れてゆく。
細い、細い光。
「……」
アズロは、ふとシェーナの表情を窺う。
シェーナがその視線を訝しげにしているのを感じ、一人安堵した。
今は…まだ。
(ありがとう、ごめんなさい…、急ぎます)
心の中で、もう居ないであろう誰かに囁いて、シェーナに向かって微笑む。
「――今が、好機みたいだね。シェーナさん、司令塔はどこかわかりますか?」
「たぶん、こっち」
まっすぐに、シェーナは少し先の通路の、今の衝撃で崩れかかった細い階段を指差す。
アズロは首肯し、シェーナの後ろに回った。
「後衛は任せて」
「助かるわ、私は前方優位なの」
少しだけ早い調子の会話。
階段をかけ上がる足音は、無音だった。
消された足音が、階上へと、ふたつ――




