第六章 明日の明日のまた明日
エナの悲し気な笑みに、ある者は俯き、ある者は天井を見上げ…
静まり返った空気の中、皆が言葉を探し始めた時。
ぼふっと豪快に風音を立てて、背中側からエイシアがエナに抱きついた。
二人の身長差は頭一つ分ほどあり、端から見ると親子が戯れているようだが、エイシアの表情はエナを見守る…さながら親のようなもので。
「こうやってね、ぎゅーっと抱きしめられるとさ、何かね、ちょっとはいいかなって」
「エイシア……殿?」
不意の挙動に驚き、若干声音の揺れたエナを、エイシアはなおも強く抱きしめ続ける。
「おーい、シア。シアさん、その辺でやめてあげな。彼女、びっくりするでしょ?」
はー、とため息をつきながら、ルーチェは二人に歩み寄り、いとも簡単にエイシアをエナから引き剥がすと、その辺に景気よく放り投げる。いわゆる、一本、といったところだ。
見事な体術が披露され、それに対して見事な受け身が披露される。
一本、にはならず、エイシアはルーチェの投げ技の途中から身体をひねり、弾みをつけて床に着地を決めていた。
思わず拍手するシェーナに、ルーチェは苦笑いする。
「この子、いつもこうだからね。挙動が……あー、シエラさんのお父さんに似ているかしら? まああの人よりはマシだけど……色々、慣れてるのよ。気にとめなくて構わないからね、エイシアは変人って理解しておくといいわ。あなたも抱きつかれないように気をつけて、シェーナ」
「変人さん?」
首をかしげながら心にメモしようとするシェーナに、エイシアは嘆願の眼差しを送った。
「ちょっと! 待って待って! 変人だけどさ、変人っていうとちょっとその……やめてくれないかな? それに投げ技もやめてくれないかな?」




