19 大天使サリエル
ソロモンさんと偶然会って連絡先を交換し、その日の内にお茶に誘われるという急展開を迎えてしまった。
私は迷った末にOKの返事をしたのだった。
***
一方場面は変わり。
その夜、翼を持つ男が空を飛んでいた。
彼は黒いローブを纏い、目元を隠すようフードで顔を隠していた。
黒く長い髪と漆黒の瞳を持つ美男だった。
彼の名は大天使サリエル。
誰かを探しているようだ。
「ラファ兄…どこにいるんだろう」
サリエルは低い声で小さく呟いた。
***
(そういえば、ダビデはまだ訓練してるのかな)
ドラゴンに襲われて危機に見舞われて以来、ダビデはより熱心に鍛錬に励むようになった気がする。
もっと強くならないといけないと口癖のように言っていた。
(でもそれだけじゃないような…考えたくないことでもあるのかな?)
とにかく帰りを待つしかないよねと思った時だった。
「ただいま」
「おかえりなさい」
やっと帰ってきた!
「まだ起きてたのか。先に休んで良いのに。早く休まないと明日起きられなくなるぞ」
「う、うん……」
ダビデはそう言って横を通り過ぎていった。
あー、だめだ!やっぱり気になる!
思い切って聞いてみよう! よしっ! 勇気を出してダビデを呼び止める。
「待って!」
「……どうした?」
振り返った彼に尋ねる。
「えっと…ねえ、ちょっと外に出ない?ほら、今日は月が綺麗だから」
咄嗟に思いついた言い訳を口にしてみる。
「……ああ、そうだな」
こうして私達は外に出た。そして月明かりの下で話すことになったのだ。
夜風が心地良く吹き抜けていく中、私とダビデはしばらく無言で歩いていた。
うーん、どうやって切り出そう。
元の世界では陰キャラだったからこういう経験ないんだよー!
「あ、あのさ!気になってたんだけど…何でソロモンさんと再会した時、キスしてたの?」
ああ、何でこんな話題?
「え?なぜって…息子だからだ。何か問題あるのか?」
「………」
ダビデは当たり前という顔をしている。
あれえ?
もしかして、古代イスラエル人だった彼らにとってただの習慣ってこと?
ということは……。
そんなことを思った時だった。
「わっ!?」
急に腕を引っ張られて抱き寄せられる形になる私。
(ええええっ!?)
彼の腕の中で、頭が混乱して固まる私だった。
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