夢予眼とスルトと真実3
思考停止してぼんやりしてるアンを抱きしめた父親は、泣くのを堪え眉間に皺を寄せると唇をグッと萎め歯を食いしばった。
そうしていると後ろから入ってきた母親がドアを閉め、二者の横で淡々とヤカンを下ろし釜戸の火の始末をしていた。母親もアンと同じで受け入れがたく、現実逃避している様であった。
双子が起きてくる時間。規則正しく、同じ時間に起きてくる。
双子は寝癖頭のフリークの青年の少し前に並んで、青年の手を片方ずつ引っ張って二階から降りてきた。
「「おはよー!」」
双子は元気よく家族の方へ挨拶するが、青年は眠たそうな顔でボソボソと挨拶するだけ。
大きな長方形のダイニングテーブルのアンの目の前になる自分達のいつもの席に座って、青年はいつもは空いている席、アンの隣、アウラーの席として空いていた席に座る。
双子はまだ寝ぼけている青年に面白がって話し掛けて、青年は眠いながらも一生懸命寝ぼけ頭で返事を返している。双子はその青年にアウラーを重ねているのか、よく懐いている。
双子が起きた事で大人達はいつもの日常を取り繕う様に、それぞれのポジションへ移動する。父親はダイニングテーブルの誕生の席に座り、母親はお茶を双子以外の人数を入れるとその斜め横に座り、アンは双子の為のオレンジ色の柑橘系丸い果実、オランジュを絞ってコップへ注ぐとそれを持って双子の前に置いてから自分の席へ着いた。
一見いつもの日常だが、明らかに大人達の雰囲気が硬い。青年は寝ぼけているので何も気づいていない様子だが、双子はそんな大人達を交互にキョロキョロ見て心配そうな顔をしている。それでも何も言わずに、じぃっと双子のまなこはアンを見つめている。敏感な子であるが、故だ。
アンはその視線にドキっと胸が跳ね上がり、胸を鷲掴みされた様にぎゅーっ苦しさを感じる。それでも、父親から告げられただけで詳しいことは何も分からないからこそ、軽率に言葉にできなかった。
だから、にっこりと笑顔を作る。
「冷めてしまう前に、食べよう」
食べる前の挨拶を促して、食事をし始めた。
お婆婆、アンが継承する前の夢予眼でアンの母方の祖母である。星の雫の中でも、一番の魔法の使い手であり、だからこそ夢予眼を先祖から継承された。
次期夢予眼は、もちろん、アンなのだが。
お婆婆よりも今ではアンの方が魔力は優っているし、周囲もそうなると確信していて、アンもそうなるのだろうと漠然と思っていた。
ただし、夢予眼は、夢で継承者を決める。現在はまだ、その時ではないのか継承する話は出ていない。
そのお婆婆の元へ、納得できるはずもなく食事をし終わると出向いた。双子も一緒に行くと言って聞かないものだから、連れてきた。ただ、一緒に話を聞くわけにもいかないので困っていると、青年がなんとなく察して一緒に来てくれたので、今は同じ家にはいるが青年が面倒を見ている。
「お婆婆、お告げの事をもっと詳しく知りたい!」
お婆婆と向き合って正座しているアンは険しい顔し、お婆婆を睨んだ様に見つめて焦りを隠し通せずにそう言った。否定して、欲しかったから。
お婆婆とはなんでも話を打ち明けられる親友みたいな仲で、気取らずにいられた。アンの髪を赤く染める方法をこっそり教えたのも、実はお婆婆なのである。
いつもアンにはとても優しくて陰ながら力になり支えてくれた存在だからこそ、アンはお婆婆の神託がショックであった。
役目なのは分かるが、お婆婆からは聞きたくなかった。アンには特別であると、そう勘違いしていたのかもしれない。
「お前の父、テーレに言った通りじゃ」
「もっと、具体的に聞きたい」
「あの子が、フリークの青年と一緒にフリークへ行く、それしかわしには分からんのじゃ。鮮明な夢じゃった...わしが一緒に行ったみたいにな...これは絶対じゃ、覚悟を決めい」
アンは目を瞑ったままのお婆婆を見続ける事が出来ず、床に両手を着いて顔を俯かせる。お婆婆はそんなアンを不憫に思っても、神託を夢予眼だからこそ曲げる訳にはいかなかった。それが、夢予眼になった時の覚悟であったから。
お婆婆は無闇に言葉を掛けれずに、神託を告げる為に設けられたお告げの間をそろそろと出て行った。
アンは一人その場に残されて、誰も居ないからこそ気を張る必要もなく、泣き崩れた。




