葵7
大変遅くなりました!
どれくらい時間がたったのだろうか。
柿花直人は、あおいから離れ、顔を覗き込む。
少しずつ距離を詰めるが、あおいは、逃げようとせず、柿花直人の視線を、受け止める。
これ以上進んだら、俺たちは、何かが変わるんやろうか?
鼻が触れそうな距離まで、詰めて、距離を保つ。
いつもやったら、確実に嫌がるのにな。何があってん?
あおいの瞳を見つめながら、柿花直人は、思う。
一方、あおいは、魔法にかかって動けないかの様に、柿花直人を、見つめ返していた。
直人・・・。な・・・何を・・・するの?
わかるようでわからない、柿花直人の次の行動を待つ。
目・・・。つむるべき?
あおいは、自分が、彼のキスを待っている事実に驚き、とっさに、目を伏せる。
同時に、頬が熱くなる。
彼の手が、近づくのを感じる。
あおいは、とっさに目を閉じた。
ぶにっ
あおいの顔が上を向く。
いわいる顎くいではない。
彼の手は、あごではなく、彼女の鼻・・・、人差し指で、鼻を持ち上げたのである。
お世辞にも、かわいいとは言えない。
そんなあおいの表情を見て、柿花直人は、声をだして笑いだす。
あおいは、そっと目を開け、目の前の柿花直人を、軽く睨んだ。
柿花直人は、そのままあおいから離れて、自分の部屋に招き入れた。
コンビニで買って来た、ビールを、あおいに出す。コップも添えて。
「で、何があったんや?」
柿花直人とは、テーブルを挟んで向かい合わせに座っている。
さっきのおとぼけた行動とは違い、真剣にあおいに聞く。
あおいは、そんな柿花直人を、しばらく見つめたあと、ポツポツと、事の次第を話し出した。
香月課長の豹変ぶりを思い出しながら話していたら、あおいは、自然と、震えていた。
柿花直人は優しく、あおいの手を握った。
どうしたんだろう・・・。私。
このざわざわする気持ちって・・・。
ううん。
何でもない。
ちょっと・・・。気が高ぶっているだけ・・・。
気づくことも認めることもしたくないあおい。
自分に、再度、言い聞かせた。
◇◇◇◇
話を終えると、柿花直人は、香月課長のことは、自分に任せて欲しいと言われた。
あおいも、できることならかかわりたくないので、彼の申し出に従う。
テーブルに置いた自分の手は、柿花直人の手を握っている。
誰かがいるわけでもない。
誰かに見せつける必要があるわけでない。
だから、握る必要はない。
そう思いながらも、離したくないという自分の気持ちを隠して、何気なくつぶやく。
「どうして、バレたのかな・・・。」
「そうやな。あおいが・・・初々しいさかいちゃうか。」
すぐさま、返答が返ってきて、あおいは、ビックリする。
初々しい?!
うーん。どこが?
柿花直人は、あおいの理解してない表情を見て、表情を崩す。
笑みを浮かべながら、優しく言う。
「俺は、そないなあおいが・・・。」
私?
言葉の続きを待つあおい。
柿花直人は、少し頬を染めて、目線を外して言う。
「かわいいで。」
どきんっ。
鼓動が早くなる。
あおいも、目を伏せる。
自然と、つないだ手に力がこもる。
私・・・。
私・・・。
直人のこと・・・。
あおいは、再度、思い直す。
これは、演技と現実が入り乱れて、混乱しているだけ。
そうよ。
そうでないと・・・ダメ・・・・。
始めてもないのに・・・。
嘘の恋人なのに・・・。
お互いの利害関係が一致して、一緒にいるだけなのに・・・。
早く・・・この関係を解消しなくては・・・。
私が、彼を好きになる前に・・・。
すでに、好きだという事実には気づかぬフリをするあおい。
柿花直人は、あおいが、そんな決意をしていることは、知らない。
あおいの手のぬくもりを感じながら、香月課長、撃退作戦を練るのに必死であった。
二人のそばに、あおいのお気に入りチーズケーキの紙袋が置いてある。
その存在に、あおいが気づくのは、翌日である。
最後まで、読んで下さって、ありがとうございます!今月内に書き終えれなくて、ごめんなさい。




