葵4
「あおい・・・。さっきの・・・。」
耐えられない!
あおいは、柿花直人の言葉を遮った。
「ごめんなさい。立ち聞きするつもりは、なかったの!たまたま通りかかって、直人と、女の子がいるから気になっただけで・・・。その、さっきのも、本気じゃないのは、分かっているから・・・。だから・・・えっと。」
何言ってるんだろう。
私。
ドキドキが、止まらない。
こんなの言い訳にすらなってないよ。
26歳の言葉ではないよ!!
ああーーーー。
恥ずかしい。
あおいは、どうしていいかわからず、焦っていた。
柿花直人は、そんなあおいを見つめ、彼女の頬に、手を伸ばす。
触れそうな位置で、一瞬、止まる。
そして・・・・・。
ぷにっ
「え?」
あおいのまぬけな声が漏れる。
あおいの右頬を軽くつねっている柿花直人。
「あははは!!!」
柿花直人は、声を出して笑った。
無邪気な笑顔だ。
「あおい、本気や思たん?照れてもうて、アホやな。」
大阪弁。
直人の大阪弁が、優しく響く。
キレイな顔立ちに、似使わないようで、似使う直人の大阪弁が、あおいは、好きだ。
楽しそうに、反対の頬も、つねる直人。
ようやく、あおいも、ふくれっつらになり、怒りだす。
二人は、いつものように、楽しくじゃれ合う。
さっきのことは、嘘だと証明されたのだけど、あおいの心は、モヤモヤしたものが残っていた。
柿花直人の、さっきのことを思い出すたびに、かき乱される気持ちの意味をあおいは、考えなかった。
いや、考えたくなかったのかもしれない。
◇◇◇
同じ週の木曜日。
あおいは、営業帰りに、とあるカフェでお茶をしていた。
このお店は、チーズケーキが有名である。
会社から少し距離があるお店。
このあたりに営業に来る時は、寄るようにしている。
あおいのお気に入りのお店の一つである。
大好きなチーズケーキを食べ終え、紅茶を飲んで、まったりしていると、声をかけられた。
「あおい?」
振り向くと、健太が、立っていた。
人通りの多い道沿いにお店がある為、外から丸見えの為、あおいがいるのをみつけて、健太が、店内に入ってきたらしい。
お茶していいか聞かれ、うなずき、同席する。
今日はスーツ姿の健太。
デパートで会った時より、大人っぽく、あいかわらずかっこいい。
しかし、久しぶりにあった前回とは違って、ときめきはわかなかった。
健太から、この近くのビルに彼の働いている会社があることを教えてもらう。
他愛のない会話が続き、ふと、思い出したように、健太は、あおいに声をかける。
「明日の夜、あいてる?」
「ん?何で?」
「いや。この前言っていた、飲み、明日、どうかなって。」
「ああ・・・。」
あおいは、悩む。
金曜日夜は、柿花直人と、過ごすことになっている。
ただ、会社の飲み会や、友人とのごはんがあるときは、そのあと、柿花直人の部屋に行くのが、常だ。今回も、それで大丈夫かなと思い、健太に「OK」と、返事をした。
場所は、健太が、予約してくれることになり、連絡を貰えることになった。
二人で、それぞれ会計をして、お店をでて、並んで歩く。
「あおい、変わってないよな。」
「え?どういう意味?」
むすっと、返事をした。
「いやいや。いい意味で。大人になると、嫌らしい奴いるだろ?」
「そうかな?」
「あー。あおい、鈍いよな。」
「は?何それ。これでも、社内では、営業成績いいんだよ!」
「・・・。そういうことではないんだが。」
「ええ?!」
健太は、相変わらず、明るく素直なあおいに、好感を持つ。
いや、ふっきれたはずの片思いが、ぶり返したかのように、熱ぽい視線を向ける。
まったく気づかないあおいを、憎く思いながらも、自然と笑みがこぼれる。
ふくれっつらのまま、人にぶつかりそうなあおいを、引き寄せる。
「危ないぞ!」
軽く肩を抱く。
ほのかに甘い香りが、漂う。
健太に、軽く寄りかかったあおいは、何もなかったかのように、「ごめんね。」と、すぐ離れる。
彼氏がいるとは言っていたが、今度こそ諦めたくない!
健太は、そう心の中で強く思い、あおいと別れた。
その一部始終を、遠くから見ていた人物がいたことは、二人は知らない。
読んで下さって、ありがとうございます!よろしければ、最終話まで、お付き合い頂けると嬉しいです。よろしくお願い致します。




