菫14
大変、遅くなりました。
ごめんなさい。
どれだけ時間がたっただろう。
すみれは、世羅達也に、抱きしめられながら、言葉を探していた。
「せ・・・生徒として・・・好きってこと・・・。」
と、なんとか言葉にして、世羅達也を、見る。
あまりの至近距離で、恥ずかしくなって、視線をそらす。
そして、世羅達也から、離れようとするが、彼の力で、うまく逃げられない。
「はな・・して・・・。」
すみれは、再度、世羅達也を、見て、お願いする。
しかし、彼の瞳は、すみれの真意を見透かしているようで、言葉を失う。その瞳をそらせないまま、暗示にかかったように、すみれは、本音を口にしてしまう。
「か・・・仮に、それ以上の気持ちがあったとしても・・・。付き合えない。私は、世羅君が、無事、希望の大学に受かってほしい。こんな大事な時期に、プラスにならないことは、したくない。」
言い終えて、自分は、何を言い出したのだろうと後悔する。
これって・・・。
これって、世羅君が好きって、認めてるよね。
それに、大人らしからぬ、発言だよね。
もっと・・・。もっと・・・違う言い方できたよね・・・。
ああ・・・。私、何を口走っているの?
すみれは、動揺の色を隠せない。
「じゃあ、大学が受かったら、付き合うてくれる?」
まっすぐな瞳を向けながら、世羅達也は、すみれに聞く。
思ってもみない展開に、すみれは、答えに困る。
「そ・・・そうね。気持ちが変わらないなら・・・。」
いつも告白されて、断っていた言葉が、自然とでる。
おかしいと思う前に、世羅達也が、言葉を詰める。
「約束じゃ。無事、受かったら・・・、僕と付き合うて。」
考える前に、うなずいた。
すみれは、先生の仮面を被る前に、自分の平常心を失っていた。
好きな人に、抱きしめられ、告白されて、普通ではいられない。ドキドキがとまらない。
我慢していた、世羅達也への想いがすでに、溢れ出している。
世羅達也は、いつになく愛らしいすみれを見て、止まらなくなった。
「約束の証をもろうてもええ?」
「あかし?」
すみれは、きょとんとした顔をしたあと、たぶん、アレだろうと思ってうなずいた。
誓約書。
紙に、サインして、確約したいのだろうと思った。
通常のすみれだったら、誓約書なくても、約束は守ると言って、うなずかなかった。
そもそも、そういう約束などせず、ごまかしてたはずだ。
すみれは、先生と言う建前を忘れ、恋愛下手な女性を前面に出していた。
だから、うなずいてしまった。
世羅達也は、すみれがうなずいたのを確認した。
彼女にまわした手に、自然と力がこもる。
少しずつ、距離を詰め・・・・約束の証をもらう。
ちゅっ
触れたか触れないかのキス。
それが、世羅達也の『約束の証』だった。
?!
な・・・何?・・・今の・・・・。
すみれは、キスしたという事実を受け入れるのに、少し時間を要した。
理解すると、頬が熱くなる。
それを、見て、世羅達也は、ますます止まらなくなった。
人生初めてのキス。
女性の唇は柔らかい。
好きな人とのキスは、中毒になりそうだ。
もっと欲しくなった。
普通にしていても、美人で、男子生徒だったら、一度は味わってみたいと思う魅力の持ち主だ。
その彼女が、自分の手の中で、頬を染め、恥じらっている。
いつもの先生の顔はなく、一人のかわいい女性が自分の手の中にいるのだ。
慣れているわけではないが、自然とすみれの顎をもちあげて、自分の方に顔を向ける。
愛らしい顔が、自分を見つめる。
吸い込まれるように、近づき、欲しいものに触れる。
優しいキスを、繰り返す。
自然と深くなり、相手の舌が、あたる。
はじめての感覚が、全身に広がる。
その感覚は、とても気持ちよく、もっと欲しくなる。
世羅達也は、小説家で、男子である。
経験はないが、興味はあるので、それなりに知識はある。
深いキスへ、変わる。
気持ちいい!
そう感じた瞬間、すみれの手が、世羅達也の首にまわされた。
ごく自然と、もっと深いキスへと、先導される。
応えてくれたというより、大人のキスを深めていく。
世羅達也は、そのキスに溺れていく。
自分の中に眠った欲望が、開花する。
それは、すみれ自身も知らない大胆なものだった。
いつしか夢で見た自分と重なる。
世羅君が好き・・・。
もっと・・・。
もっと、あなたを感じたい!
すみれも、同様に、溺れていく。
誰もいない教室で、二人は、熱いキスを存分に堪能した。
読んで下さって、ありがとうございます。次で、すみれ編、最後の予定です。




