第11話 初出勤
自宅から川沿いに南へ行った所に、周りを学校や図書館に囲まれた、そこそこ広めの公園がある。ここは早朝人も疎らで、周りを気にせず長い物を扱うのに適しており、俺のような剣士の鍛錬には恰好の場だ。なので〈鳥籠〉で仕事をするようになって以来、走り込みを終えたあと最後は必ずここに来て、一通りの型をするのが、俺の朝の日課だった。
朝方とはいえ、晴れた夏の終わりである。しっかり動いてかいた汗を拭いながら、二階の自宅への階段を上がる。
昨夜は精神的な揺らぎが見えたが、シリウスは大丈夫だろうか。
あの後少しの間窓辺で二人、彼の多感な心が凪を迎えるのを待っていた。どれくらい経った頃だろうか、離れた家の窓が閉まる音で、我に返ったように『……っ、もう寝る』と、そっと体を離された。なので急いで部屋に戻ろうとする痩せた背中に『俺は毎朝鍛錬に行くから、もし部屋にいなくても心配しないで待っていてくれ。腹が減ったら、先に何か食べていていいから』と声をかけ、俺も自室に戻ったのだが。そもそも起きているだろうか? 疲れていただろうし、まだ寝ている可能性も高い。
一応出来るだけ静かに玄関の扉を開けた時、対角線上にある東の窓からの風が通ったからだろう、いつもと違う点に気付いた。
この匂い……スープか?
いつもならこのまま風呂場に直行なのだが、ふわふわと家の中を漂う美味そうな匂いにつられて、台所へと向かう。果たしてそこには痩せた少年が、たった今鍋で何かを作り終え、傍らの棚から皿や碗を探している所だった。
「おはよう。朝飯、作ってくれたのかい?」
背後から声をかけると驚いたようにぴょこんと跳ねた後、目線をずらし、もごもごと口元でシリウスは挨拶を返してくる。昨夜の事があるからか、少し気まずい様子ではあったが顔色は良かったので、ひとまずホッとする。
「……ぉは、よぅ……。その、昨日寝る前に『朝はタンレンに行く』って言ってただろ。だから勝手にあれこれ使って、悪かったけど……スープ、作った。けど、入れ物が見つからなくて」
そう言われ、改めてテーブルの上を確認すると、見つけたらしいパンの入った籠は乗っているが、食器が一つも見当たらない。
「ごめん、食器はいつも一番上の棚に置いてあるんだ。……ちょっと場所を変えよう。手伝って貰っていい?」
俺はそう言うとシリウスの手を借りて、上の棚にあった食器類を、空いていた数段下の棚に全て移動させた。
「これで見える?」
「あぁ。……すぐ食う?」
正直、美味そうな匂いに空きっ腹を刺激されまくっていたので、今すぐ手をつけたい気分だったが〝体を拭いてくる〟と準備だけ頼み、風呂場へと向かった。
体を拭いて着替え、さっぱりしてから待ってくれていたシリウスと二人、朝の食卓を囲む。昨夜は遅くなってしまったし、簡単な出来合いの物を買って帰ったので解らなかったが、作ってくれたミルクを使った玉ねぎとベーコンのスープは、びっくりする程美味かった。彼の『家事は全部やっていた』という言葉が実証された形になる。
「……参ったな」
「……使っちゃいけねぇもの、あったか?」
俺の言葉に、シリウスが顔を曇らせた。
「いや、そうじゃないんだ。こんなに美味い飯が朝から食べられるなんて、有難いなぁと思って」
きょとんとした少年は、褒められたと気付いたのだろう。僅かに眼を瞠った後、照れたのかパンをちぎりながら、ぶっきらぼうに呟いた。
「どこにでもあるものだし、誰にでも作れるだろ、これくらい」
「そうかな? 俺は作った事がないし、家に帰ったら温かい飯があるなんて、嬉しい限りだけど」
「……そうかよ。……だったら朝メシ、これからはおれが作ってやる」
これは嬉しくも有難い言葉だった。鍛錬の後の楽しみが出来たな。
「昼は多分外で食べる事になると思うから、夜は一緒に作ろうか。後で残りの食材を確認してから家を出よう」
「ミカド、料理できるのか?」
――いかん、気を抜くとニヤけてしまう。顔周りに力を入れないと。
「多少はね。独り暮らしもそこそこ長いし、エレンがその点は鍛えてくれたから。掃除と洗濯はどうしようか、交代制でいいかな?」
「住むところを借りてるんだ、やれる事はやる」
どうやら俺が言った〝ゆっくり食べろ〟という言葉を忠実に守ってくれているらしく、シリウスは小さな口でもぐもぐ懸命に食べている。本人に言うと怒られそうだが、仕草がリスのようで可愛らしい。
「部屋はどうだった? 自分好みの家具にしたかったら、給料を貰った後に、店や中古市で見てみると良いよ」
実はシリウスに宛てがった部屋の家具は、共に生活する筈だった人の為に揃えたものなので、曲線を用いた優美な形のものが多い。男の子だし、気になるようなら今あるものを中古店に売って、家具を新調しても良いだろう。ただ部屋に風は通してあったが、毎日掃除をしていた訳ではなかったので、埃っぽくなかったかの方が寧ろ心配だったのだが。
「あんないい部屋、本当におれみたいなガキに使わせていいのか?」
「構わないよ。季節が移り変わっていくに従って、服や物も増えて行くだろうし、あと少しくらい家具を買い足しても――そういえば、本当に新調しなくて良かったのかい? その服」
今日シリウスが身につけているのは、ネストカで渡した俺の予備の服だった。
昨日買い物に行った時、追加で仕事用の服や普段着を数着買おうとしたのだが『おれ、これがいい。イヤじゃなかったら、このまましばらく貸してほしい』と本人から頼まれ、そのまま最低限の替えを買っただけ、というのが現状である。
「動きやすいし、気に入ってる。……ミカドが着る時は、洗って返すから」
――拙いな、どうしても顔が……。
思わず隠すように俯いたのだが、そんな姑息な手段はどうやらお見通しだったようだ。
「おい、さっきから何こっち見てニヤニヤしてやがるんだ」
顔を上げると、ムスッとした顔でこちらを睨む瞳と出くわす。やっぱり気づかれていたか。
「ごめん。……名前で呼んでくれるようになったんだなぁと思うと、つい嬉しくてね」
一瞬の間の後、闇夜の猫のような丸い瞳になった少年の頬に、じわりと赤みが増した。
「……いいだろ、名前くらい。バディになってやったんだし」
目線を逸らし、照れ隠しにスープを延々匙で口に運ぶ姿を見てしまっては、こちらの口角もまた、下がる様子など微塵もない。
「その服、気に入ったのならあげるよ」
「……いいのか?」
「あぁ。でも大きくないか?」
「大きいけど、腕が動かしやすいんだ。それにさらさらしてて、気持ちいい。大事にするよ、その、……ありがとな」
小さくはあったが謝意を示したその声は、出会った時と比べて円味を帯び、その口元は緩やかに笑みを描いていた。
少しずつ緊張と警戒を解いてくれているその様子に、こちらの心まで解れていく。
「あんた! お昼ごはん、忘れてるよ!」
どこかのおかみさんの大声が窓から飛び込んできて、俺達二人は思わず顔を見合わせて笑った。
「よし、では初出勤と参りますか」
戸締りを済ませ、家を出る。
いつもよりゆったりとした歩調なのは、これからほぼ毎日通う我が家から〈鳥籠〉までの道を、隣を行くバディに覚えて貰う為だ。そのついでに、手始めとしてご近所の地図を少しずつ、頭に入れていって貰う。配達人の仕事は、まず基本――規約、仕事の口上、注意事項等を叩き込んだら、後は実践あるのみだ。ほぼどこの配達組織でも、新人は地元の荷を運び、身近な地図を覚える事から始まる。慣れてくると、配達する範囲を広げ、また新たな地図を頭に入れる。そうして各国の地図が頭に入った頃には、一人前の配達人となっているのだ。
だが当然、陽のあるうちと夜とでは、場所の印象は異なるもの。昼間は何と言う事もない街外れの建物でも、夜になると違法賭博の拠点になっている事もある。なのでそういった裏の顔を持つ場所や風土などの情報を、若いバディが痛い目をみないうちに共有するのも、俺のような先輩配達人の大切な役目なのだ。
実は昨日の買い物途中も、それとなくシリウスに道々、情報を渡している。それをきちんと覚えているかどうかは、今後外回りの仕事を始めた時にわかるだろう。
「……つまり、〝調査に行きたいけどとても危ない所だから、この人達にもぼくの作った魔道具を貸してあげて欲しい〟っていう事だよね?」
〈鳥籠〉二階の社長室に、再びヴィヴィアン、俺、ライオネル、そしてミリガン氏がテーブルを囲む。昨日と違う所はシリウスがいない事と、ルシアの代わりに緩く巻かれた黒髪黒衣の青年が、小首を傾げながら椅子に座っている事だろう。
魔道具課のオスカーは、自分用の魔道具を持たない。理由は単純で、そんなものが無くても、豊富な魔力で困難を打破してしまう事が出来る為、持つ必要がないからだ。なので気まぐれに作ってみる以外、魔道具を作るのは、仕事仲間から依頼を受けた時と相場が決まっている。そして大抵の場合、きちんと彼が提示した料金を支払うか条件を満たせば、その依頼を受けてくれるのだ。
だが最大の問題は、依頼の際に作って欲しい魔道具の用途や特徴を、事細かく説明しなければならない事だった。何故ならオスカーの唯一の欠点であり口癖は〝何故そんな事が出来ないのかが解らない〟。
これは魔法課のフォーミュラにも言える事だが、彼等は並み外れた魔力で大抵の事が出来てしまうが故に、普通の人が馬を担ぎ上げたり、空に浮かんだり出来ない事が、どうにも理解出来ないらしい。
それでも道具を作ったり、魔法に関する事で助言してくれるのは、偏に彼等が常日頃は穏やかな魔法使いであり、仕事仲間や友人である我々を、助けようとしてくれているからに他ならない。彼等にとっては造作も無い事が、魔道具無しでは叶わない我々のような人間は、寧ろ不自由で気の毒な者に見えるようだ。
こうして双方が協力し合い、試行錯誤して作られた魔道具の数々は、素晴らしい出来栄えの物が多い。しかし扱いに注意が必要な為、普段はオスカーが全て保管し、希望があれば貸し出す事になっている。個人で依頼したものは、買い取りにも対応してくれるのだが……顎が外れそうな金額を提示される事もあるので、安易に話を持ちかけないよう、注意が必要だ。
本来ならばこの調査会議には、魔法課のフォーミュラも同席している筈だったらしいのだが、昨夕持ち込まれた荷の中に〝怪しげな術の痕跡〟があると解り、今も調べてくれている最中なのだと、ヴィヴィアンから説明を受けた。
この半刻ほど前、俺達二人は〈鳥籠〉についてすぐ、通路でまだ無人だった待機室の説明をしている時、階段を降りてくるルシアに呼び止められた。
『ミカド、申し訳ありませんが社長室に来て下さい。昨日の件で必要書類が抜けていたらしく、もう一度ご足労頂きたいとの事です』
ラガトの調査の件で相談する準備が整った、という事だな。という事は、ミリガン氏は既に到着済みか。
『シリウス、悪いけどちょっとこの待機室で待っていてくれ。俺はあと少し難しい書類と、にらめっこしなきゃいけないみたいだ』
昨日の打ち合わせ通りにシリウスを南待機室に止め置き、その間に大人達で作戦会議をすべく声をかける。――と、そこへ思いがけず、こちらへ向かって来たルシアの声が続いた。
『シリウス、貴方にはこちらを。お渡しだけしようと思っていたのですが、良かったらミカドを待つ間、私が手解きを引き受けますよ』
そう言って、彼女はその手に持っていた紙をシリウスに差し出した。横から覗き込むと、そこには美しい筆跡で基本の文字がずらりと書かれている。
『まずは字の形を正確に覚えましょうね。さぁ、いらっしゃい』
確かにここへ一人でシリウスを置いていけば、仲間うちから質問攻めに合いかねないし、下手をすればまたアリスが近寄ってこないとも限らない。そう思って、ルシアが教師役を買って出てくれたのだろう。おまけに彼女は〈鳥籠〉一の美文字の持ち主である。手本としても有難い事この上ない。
『書くものは待機室にありますからね、心配いりませんよ』
『……書くもの、持ってきたんだ。その、……おれなんかのレンシュウに紙とか使うの、もったいねぇと思って』
シリウスはそう言って、背負い鞄の中から石板を取り出した。
実はこれが昨日買い物に行った時、シリウスから初めて強請られた品だった。
名前を自らの手で書いたあの時から、字を学ばないと仕事に差し支える事を痛感したらしく、どうしたものかと本人も考えていたらしい。これを見つけた瞬間、ネストカで飯屋の親父がメニューを書いては消していた事を思い出し、そこから閃いたようだった。
とはいえ石板なので、そこそこ重量がある。まだ万全の体調とはいえない彼に持たせるのは少々心配だったが、疲れた素振りを見せたら持ってやればいいか、と考え直した。
『まぁ、石板を? ふふ、自ら学ぶ意欲のある方に教えられるのは、幸せな事ですね。その姿勢を私も見習わなければ』
促され待機室の席につこうとしているシリウスの横で、ルシアが《ここは任せて》と声に出さず仕草で伝えてくる。なので《頼んだよ》とこちらも片手を上げ、そのまま二階の社長室へ移動した。
「オスカー、君の作る魔道具は一級品であり、それはこれまで仕事で使用した、仲間達の意見からも間違いようの無い事実だ。だからこそミリガンさん達の調査の補助を、考えてみてくれないか」
ヴィヴィアンの言葉に、うーん……と考える素振りをした黒髪痩躯の青年が、俺に眼を向けてくる。
「バディになるって、そんなに大変なのかい?」
「特別な事情のある子なんだ。だからその子を正式に雇う為には、どうしてもラガトに調査に行かないといけないんだよ。オスカー特製の魔道具があったら、調査がしやすくなって凄く有難いんだけど」
「……ふぅん。具体的に、どんな魔道具が必要なの?」
オスカーの問いに、まず答えたのはミリガン氏だった。
「〈空と砂の指輪〉と〈守りのペンダント〉は、役所の方にもあります。ですが専門的となると……。高価なものは購入許可がなかなか下りないのが、悩みの種でして」
申し訳なさそうにされてしまったが、お役所仕事とはそういう物なのだろう。そもそも国民の税金なので、無駄遣いされないだけ良いのかもしれない。〈守りのペンダント〉は、小規模結界を張る事が出来る旅行者にも人気の魔道具で、どの属性でも作れる事から、比較的安価な方だ。通常の調査ならば、確かにこれで充分だろう。
「そうだな……嘘もバレるし内心も聞ける〈心音の指輪〉は外せないし、〈大気の指輪〉は姿を消せるから、危険を感じた時や、どこかに潜り込んだり、身内同士の話をこっそり聞いたりする時に役に立つかも。この二つはどうかな。身軽になる〈涼風の指輪〉も候補に入るけど」
自分が使った感触での提案だったが、これにはライオネルが同意してくれた。
「その三つがあれば身の安全は勿論、調査の速度は大幅に上がるかと。エディー、調査にはやはり二人一組で向かう予定ですか?」
「えぇ、そうです。いつも組んでいるのは女性なのですが、不測の事態を考慮し、今回は別班の男性調査員と組む事にしました」
――場所が場所だからな。念を入れるに越した事はないか。
「つまり〈心音〉〈大気〉〈涼風〉の三つ、という事だな。確かにこれだけ揃えば、我々も安心して送り出せる」
皆の意見が揃ったところへ、のんびりした声が間に入った。
「あなた、悪い人間じゃなさそうだね。料金をきちんと払って、手続きをしてくれたら、特別に貸してあげてもいいけど」
「有難うございます! ……その、しかし、貸し出し料金は如何程になるんでしょうか……?」
一瞬喜色を浮かべたミリガン氏は、〝専門的な魔道具〟という現実をすぐに思い出したのだろう、一気に不安気な様子になった。そんな事には気付かないオスカーは、天井を横目で見上げながらゆったりと告げた。
「三つの魔道具を、二人分だよね? うーんと、全部で……一日金貨十三枚」
「えっ?!」
ミリガン氏が青くなる。無理もない、金貨十三枚は四人家族が一ヶ月暮らせる家賃ほどの金額だ。
「〈大気の指輪〉は、姿を隠す特性があるからね。変な事に使われないよう、貸し出す魔道具の中でも一番審査が厳しいし、敢えて料金も高くしてあるんだ。ごめんね」
頭を抱えたミリガン氏だったが、暫く時間を置いた後、何かを決意したようにゆっくりと姿勢を正した。
「……調査員の身の安全には変えられません。それに、我々大人を頼ってくれた少年の未来の為です。もし役所への申請が通らなければ……個人で料金はもたせて頂きます。あの、分割払いには、出来ますでしょうか……?」
汗を拭いつつ、悲壮な覚悟で言葉を紡ぐミリガン氏を見て、俺はしみじみと、この人がシリウスの担当になった幸運を噛み締めていた。さすがライオネルの後輩、真面目が服を着て歩いている質だ。高額になるようなら、俺も一緒に負担させて貰おう。大事なバディの為だ、一肌でも二肌でも脱ごうじゃないか。
皆がどうなるのかと見守る緊迫した空気を破ったのは、くすりと笑った黒髪の青年の声だった。
「どう? ミカド、ぼく、人を見分けるのが上手くなったでしょ? ……ふふ、やっぱり良い人だった! そうだねぇ、じゃあこういうのはどう? 必要数を書いた素材リストを渡すから、今後そこに記述のある魔法素材を見つけたら、必ずぼくにくれる事。これを約束して、貸し出し用紙に署名してくれたら、料金は無しにしてあげる。あぁ、数は多いけど、手に入れるのがまだ簡単な方の素材ばかりにしてあげるから、安心して」
「へっ?! ほ、本当ですか?!」
「ぼくね、お金もだけれど、沢山の魔法素材を集めなきゃいけないんだ。だからそれに協力してくれるなら、友達として貸してあげるってこと。そもそもその調査って、ミカドのバディの子の為なんでしょ? だったら友達として、ぼくも少しはお手伝いしなきゃね」
にっこり笑って破格の取り引きを提示してくれたオスカーが、ミリガン氏には黒衣の神に見えた事だろう。
「では、〈鳥籠〉から貸し出すという結論で良いのだね? では正式な書類を用意しよう。ライオネル、すまないがルシアにここへ戻るよう連絡してくれ」
「ぼくは部屋に戻って、その三つを取ってくるね。あ、あとリストも書いて渡さなきゃ」
それぞれが行動をし始め、俺は立ち上がるとミリガン氏の前に立った。
「難しい調査になると思いますが、宜しくお願いします。……お帰りを、シリウスと二人でお待ちしておりますので」
差し出した俺の手を、興奮冷めやらぬミリガン氏は、しっかりと握り返した。
「可能な限り調査を早く進められるよう、全力を尽くします」
こうしてついに、ラガトの調査は動き始めた。




