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アットラストサムライ~闘々士~  作者: 阿弥陀乃トンマージ
第一章

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第4話(1)商店街での出会い

                  肆

「ふむ……」

 タンクトップにジーンズという、ラフな格好をした女性が商店街を歩く。その体躯に比べると大きな荷物を背負い、これまた大きめのキャリーケースをガラガラと引いている。

「はははっ、誰もいないさ~」

 女性はシャッターが降ろされている通りを眺めて、後頭部をポリポリと掻く。

「道を尋ねようかと思ったのに……」

 女性は長い髪を後ろでひとつに縛った結び目を持って、髪を揺らす。

「これはちょっと参ったな……」

 女性は立ち止まって腕を組む。

「う~ん……」

 女性は少しばかり難しい顔つきになって考え込む。

「う~~ん……」

 女性は少し考え込む。

「う~~~ん……」

 女性は大分考え込む。

「……ま、いっか!」

 女性は顔を上げて、パッと笑顔になる。

「なんくるないさ~♪」

 女性は両手を頭の後ろで組んで、鼻歌まじりに呟き、また歩き出す。ゆっくりとした気楽な歩きぶりで、さらには口笛を吹き出す。

「~♪」

「……」

「~~♪」

「………」

「~~~♪」

「…………」

「ああ、そうか!」

 女性は再び立ち止まる。

「?」

「お姉さん、ここは島のどこら辺かな~?」

「!」

 女性が後ろを振り向き、距離を取っていたおさげ髪の女性に声をかける。おさげ髪の女性は細く切れ長の目をパッと見開く。まさか声をかけられるとは思っていなかった為だ。

「ねえねえ~」

 女性が向きを変えて、おさげ髪の女性に早足で近づく。

「むっ……」

 不意を突かれたおさげ髪の女性は棒立ちの体勢になってしまう。

「教えてよ~」

 女性はあっという間におさげ髪の女性の懐に入る。

「むむっ……」

「ああ!」

 女性は声を上げる。

「……!」

 おさげ髪の女性はその声にビクッとなる。

「名前を言ってなかったね~あたしは我那覇楽々(がなはらら)!」

 楽々と名乗った女性はニコっと笑う。

「そ、そうですか……」

 おさげ髪の女性が困惑気味に応じる。

「う~ん……?」

 楽々が自分よりやや長身である、おさげ髪の女性の上から下までじっと見つめる。

「な、なにか?」

 おさげ髪の女性が体を隠すようにする。

「……お姉さんも観光客?」

「はあっ?」

 楽々からの思わぬ言葉におさげ髪の女性が素っ頓狂な声を上げる。

「違うの? じゃあ、その恰好は……」

 楽々はおさげ髪の女性が着ている服を指差す。おさげ髪の女性は大陸風の、スリッドの深く入った赤のロングドレスを着ている。

「あっ……」

「観光客じゃなかったら……」

 楽々が自らの顎に手を添えて、怪訝な顔をしながら小首を傾げる。

「いやいや、そうよ! 観光客よ!」

 おさげ髪の女性がうんうんと頷きながら声を上げる。

「やっぱりね~」

 楽々が笑顔に戻る。

「ほっ……」

 おさげ髪の女性が安心したようにため息をつく。

「お姉さんも迷子?」

「は?」

 おさげ髪の女性が眉をひそめる。

「あれ、違うの?」

「いや、一緒にしないでよ……」

「それじゃあ、何か目的があって?」

「そ、それはもちろん……」

「こんな――言っちゃあ悪いけど――平凡な商店街に?」

 楽々は両手を広げて、周囲を指し示す。

「ど、どこを観光しようとこちらの勝手でしょう?」

「まあ、それはそうか……」

「そ、そうよ……」

「ふ~ん……」

 楽々は再び、おさげ髪の女性をじっと見つめる。

「な、なに……?」

「お姉さん……ヒマ?」

「ええ?」

「用事があるんだったら、遠慮するけど……」

「そ、そういう質問をしている時点で遠慮がないと思うのだけれど?」

「ははっ、それもそうか……」

 楽々が片手で自らの額を抑えて、上を仰ぐ。おさげ髪の女性が戸惑い気味に呟く。

「そ、そうよ、まったく……」

「……で?」

「‼」

 楽々が素早く視線を戻してきた為、おさげ髪の女性は再びビクッとなる。

「どうなのさ?」

「……ヒマと言えば、ヒマよ」

「それは良かった。それじゃあさ、ちょっと付き合ってよ」

「……何に?」

「ふふっ……」

 楽々がシャッターに近づき、それに背を向けて、背中から荷物を下ろし、ドカッと座る。

「……?」

「……ちょっと頭に浮かんできたから聞いていってちょうだいよ」

「……何を?」

 楽々が荷物からギターを取り出し、景気良い音を鳴らしてウインクする。

「……『楽士(がくし)』の奏でるメロディーをさ♪」

「⁉」

 おさげ髪の女性がそのスタイルの良い体を強い力で抑えつけられる。

お読み頂いてありがとうございます。

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