第3話(4)バーサーカーは突然に
「む……拙者のことは調べがついていたでござるか……」
晶が目を細める。
「そ、それはもちろん……」
銀髪のロングヘアの女性が半身をすぐに起こす。
「む……」
「データというものは何事においても重要……無論、闘いにおいてもね……」
銀髪のロングヘアの女性がニヤリと笑って立ち上がる。
「な、なんというタフネス……!」
晶が思わず目を見張る。
「わたくしのことはどうでもよろしい……」
「え?」
「……そのおもちゃは何かしら?」
銀髪のロングヘアの女性は晶が身に纏っている、鎧というか、アイスホッケーで用いられるような防具を指差して首を傾げる。
「お、おもちゃとは随分な言われよう!」
晶が憮然とする。
「……では、そのスーパーアーマーは……」
銀髪のロングヘアの女性の言葉に晶が顔をパアっと明るくさせる。
「よくぞ聞いてくれました! これこそが拙者の開発した最新傑作! その名も『テトラファイター』でござる!」
「テトラファイター?」
「ええ、これを装着することによって、装着者の戦闘能力は大幅に向上し、どんな者でも『ファイター』、すなわち『闘士』となることが出来るのでござる!」
「ほう……」
「どうでござるか⁉」
晶がこれ以上ないほどのドヤ顔を見せる。
「え……」
「ふふふ、開いた口が塞がらないでござるか……」
「いえ、口は開けてはいないけれど……驚いたわ」
「そうでしょうとも! そうでしょうとも!」
「まさか、そんな機密情報をベラベラと話をしてくれるなんて……」
「! はっ! し、しまった⁉」
銀髪のロングヘアの女性の指摘に晶が両手で頭を抱える。
「しかも製作者自らがのこのこと、この闘いの場に出てくるなんて……」
「‼ い、言われてみれば、それもなかなか迂闊でござった……!」
晶が両手で頭の髪をかきむしる。
「思わぬ収穫があったわ。トライストライカ―のみならず、テトラファイター……我が偉大なる祖国へのこれ以上ない手土産よ……」
「……やはり、ゲスト参加した勢力の一人……」
落ち着きを取り戻した晶が銀髪のロングヘアの女性を睨む。
「そう、わたくしの名前はオリガ=ティグレ」
銀髪のロングヘアの女性が自らをオリガと名乗る。
「や、やけに素直に名乗ったでござるな……」
「貴女が情報提供してくれたお返しよ♡」
「せ、拙者は別に情報提供をしたわけではござらん!」
オリガのウインクに対し、晶は慌てて首を左右に振る。
「あら、違うの?」
「断じて違う!」
「そう、まあ、それはもうどうでもいいわ。だって貴女はこれから……」
「これから?」
「ちょっと大人しくなっていてもらうから……!」
「ふん! ふん!」
「むっ……」
オリガがあっという間に晶との距離を詰め、彼女の関節を極めようとしたが、晶がパンチとキックを繰り出して、オリガを退ける。
「ふふん、どうでござるか?」
「……さっきもそうだけど、大したパワーとスピードね……」
オリガは少し距離を取る。晶はその隙を逃さずに攻撃に転じる。晶は腰の部分から刀を取り出して、オリガに向かって斬りかかる。
「今でござる!」
「!」
オリガは驚きながら、刀による攻撃をすんでのところでかわす。
「……ちっ、踏み込みが足りなかったでござるか……」
「まさか剣術の心得があるとは……」
「これは『剣術』モード、斧や槍なども扱えるでござる。さきほど”『格闘』モードと合わせて、近接戦闘においては、もはや隙はござらん!」
「そう……」
オリガは素早いバックステップで、晶から離れる。晶が笑みを浮かべる。
「ほう?」
「近接戦は避けた方が無難みたいね、違う?」
「いいや、間違ってはござらん……よ!」
「‼」
晶は腰の――刀を取り出した部分とは反対側――方から、銃を取り出して、素早く発砲する。オリガはなんとかこれをかわす。晶が再び舌打ちをする。
「ちっ、あともう少しだったでござる……」
「……それは『射撃』モードかしら?」
「その通り、これでおぬしは遠距離戦においても不利になったでござる……!」
「ふむ……では!」
オリガが空中にその体を躍らせる。
「させん!」
晶は両手をオリガに向かって掲げる。
「⁉」
オリガの体がピタッと止まる。
「……えい!」
「どわっ⁉」
晶が掲げていた両手を下ろすと、オリガも落ちて、倒れ込む。
「はあっ、はあっ……」
「な、何をやったの⁉」
オリガが肩で息をする晶に尋ねる。
「ね、『念力』を少々……」
「念力⁉ そんな能力者だというデータは……まさか⁉」
「そ、そのまさかでござる……このテトラファイターは『念力』モードも備えており、いざという時の能力バトルにも対応することが出来るでござる!」
「ま、まさか……」
「装着者の能力を大幅にアップさせる、このテトラファイターがあれば無敵でござる!」
「……それならば、仕方ないわね……これはあまり使いたくないのだけど……!」
オリガがゆっくりと立ち上がると、懐から何かを取り出し、左肩にもっていく。
「むっ! ……そ、それは、注射? な、何をするつもりでござるか⁉」
「ふふっ、ちょっとしたおまじないよ……ガアアッ!」
「なっ⁉」
注射を終えると、細身の体を文字通り倍増させたオリガの姿が目に入り、晶は絶句する。
「……」
「なっ⁉ は、速い⁉」
オリガが一瞬で晶の眼前に現れる。オリガがそのまま攻撃を繰り出す。
「ガアッ!」
「ごはっ⁉ お、思い出した、北の大国の送り込んだ『戦士』、オリガ=ティグレ……戦場では狂戦士、バーサーカーと化すこともあるとか……がはっ!」
晶は崩れ落ちた。オリガはしばらくして正気に戻る。戦士と技士の闘いは戦士が制した。
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