Mother・Pandemonium
「この空間はまず向こうからは見えぬが、魔力を発すればバレる。ゆめゆめ忘れるなよ」
その言葉に一同頷く。
魔力の遮断は普段なら奇襲に備え避けるべきだが、潜伏に於いては必須科目である。
「サーニャよ、あの魔物に攻撃した感覚はどうじゃった?」
「なんか凄く変! 血は出ないし、首を斬っても死なないの!」
「やはりな…………あの魔物は全て死骸と見て良いじゃろう。カザリーム同様に操られておるのじゃ。儂らが成すべきは大きく分けて三つ。魔物の相手、死霊術死の発見と、この行為を辞めさせる事。その手段は対話説得と問わん」
「魔物の相手は誰が努めますか? 僕やサーニャをあの数に放れば自分の身を守る事すら難しくなりますよ」
「まあ自然と儂かシフィーになるが…………テメェさんよ、イケるか?」
「…………私の方こそ聞きたいわ。いけると思う? お姉ちゃん」
シフィーに問われ、一瞬何故自分に聞くのかと疑問符を浮かべ。
直ぐに、先日から行っていた鍛錬を思い出し頷く。
「イケるわ」
「なら任せて――――ジュエリー、私が壁を作ったら直ぐに、あの魔物達の中心に投下して頂戴」
「任せたぞ」
「ええ――――魔力形式・5th」
シフィーを覆う赤い球体の防壁が作られた。
それを魔物の大行進の中心へと落とし数秒――――失敗かとジュエリーが唾を呑んだ瞬間、大行進の流れを遮る様に新たな魔物が現れた。
ダンジョンの石畳が人の姿をとって起き上がった巨大ゴーレム。
額には魔力形式・9thによって強化の刻印術が刻まれている。
「アハッ! アハハハハハッ!!! 良いわね、気に入ったわ!」
ゴーレムの頭上、爆笑するシフィーの姿が。
その大声に目掛け魔物達は攻撃を開始するも、それら一切を漏らさずゴーレムが叩き落とす。
砕かれた魔物の死骸に対してシフィーが魔力弾を飛ばすと、着弾と同時に吸い込まれて消え。
死骸の破片が新たな魔物として形を取り暴れ出す。
「ねえママン、使い方のコツを教えていて思っていたのだけれど、あの魔法って…………」
「そうじゃなあ――――自身の魔力を込め、対象を下僕の魔とする。メリーの使う魔王権威そのものじゃ」
シフィーの作り出す魔物は増加の一途であり、魔物の大行進と同じく無限の勢力となる。
「良いか。今から二人をダンジョンの適当な場所へと送る。そうしたら死霊術死を探し出し、見つけ次第魔力を発して儂に知らせろ」
「ママンは?」
「気になる要素があっての、そっちを潰す。敵の力は並みでない、気を付けるのじゃぞ」
「うんっ!」
言って、この空間にはジュエリー一人が残った。
魔法によって個以外の力を手に入れたシフィー。
自分で使えるようにとサーニャを紹介したものの、実際にその成果を目の当たりにすると鳥肌が立つのだ。
もしも今のシフィーと敵対したならば、自分は勝利する事が出来るのだろうかと。
「一人じゃあ無理じゃな」
これでフリートとの戦いまでに用意すべき必須要素は整った。
あとは不確かを潰そうと、手始めにダンジョン全体へと目を広げる。
シフィーが貫いたカザリームは本体ではなく脱皮の痕跡。
本体はまだ別の場所に居るとジュエリーは睨んだ。
呆れた様に大きなため息を吐き出し、裏の空間から飛び出し。
出た場所はダンジョンの最下層だ。
「何じゃ、まぁたテメェさんらか――――色々と暗躍を始めた様じゃのう? 埋葬機関とやらよ」
「…………総員戦闘態勢。ジュエリー・ラフェーリアだ」
先日の襲撃者と同じ格好をした集団。
間違いなく魔物の大行進に関係していよう。
「前回は皆殺しじゃったが今回は数人生かしてやろう――――死にたくない者、指揮官は名乗り出よ。儂直々に可愛がってやる故な」
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