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TWINE TALE  作者: 緑茶猫
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Flag7―牢獄の住人―(10)

 振るわれたケトルの右腕は、頭のよろしくない生徒の腹部に綺麗に決まり、頭のよろしくない生徒は他の生徒を巻き込みながら五十メートル程吹き飛ぶと、ペンダントの転移装置が作動したのか消え去った。


「次に言ったら手加減はしないわよ。ウフッ! 気を付けてねん!」


 ケトル怖ぇ……。これから間違っても“オカマ”って言わないようにしよう……。


 ケトルの攻撃の威力に呆気に取られたのか、一瞬この場が静かになったが、直ぐ様敵の生徒達はケトルに向けて魔法を放ち始めるも、ケトルは目の前に土の壁を幾つも造る事で全て防ぎきった。


 それからは一方的で、敵の生徒達は不機嫌真っ只中のケトルにより吹き飛ばされたり、ケトルの後ろで控えていたカーミリアさんにより消し飛ばされたりと相手からしてみれば散々としか言い様がない結末に終わり、ルーナとレディとコーチは手を出さず、と言うか暴れまわる二人のせいで手を出せずに、終始苦笑いで戦いを傍観していた。


 最後の一人の生徒を倒した時、雪山の一角は、雪に隠れていた地面が抉れ、剥き出しになり、樹氷は消し飛ばされたり薙ぎ倒されたりと、ケトルとカーミリアさんがどれだけ暴れていたのかが見てとれる。


 戦闘の最中にこちらに雷や土の塊が飛んできた時は本気で焦った……。それが一度や二度ならまだしも、特に雷は故意に狙っているのではないかと疑えるレベルの回数と精度である。


 しかし、そのおかげで敵の生徒達とケトル達五人が正対している丁度真ん中が見える横の位置まで移動する事になり、戦闘が見やすくなったと思うと何とも言えない。


「ふぅ……失礼しちゃうわねん……」


 ケトルはそう言いながら自身の契約武器を消すと、暴れていた時に比べ少し落ち着いた様で普段見せる柔和な表情を浮かべた。


「油断するのはまだ早いわ。ほら……」


 カーミリアさんはそう言い、これまでに通って来た道を指差す。


 物陰に隠れながら俺も目を凝らしてカーミリアさんが指差した先を見ると先程倒した生徒と同数位の生徒達がこちらへ真っ直ぐと向かって来ていた。


「……それにあっちも」


 しかもそれだけではなく、俺達の進行方向からももう一つ、これまた同数位の生徒達が挟み撃ちを狙うかの様に真っ直ぐこちらへ向かってきているのが見えた。


 俺は物陰から敵に見つからない程度顔を出して、カーミリアさん達五人と目を合わせると、俺は当初向かっていた方向へ隠れ、敵に悟られ無いように走り出す。


 恐らくエルシー=スチュアートはカーミリアさんを先程戦っていた場所で倒すつもりなのだろう。


 今まで戦っていた人数と挟み撃ちをしてくる人数から考えると、二十人一組のグループは最低でも十組はある筈だ。いくらカーミリアさん達が強くても、十連続で戦い続けるのは流石に疲労が溜まるだろうからキツいだろう。


 無論、相手が全て二十人で一組ではない可能性はあるが付け焼き刃の三百人を使役するにあたってわざわざグループの編成をするというのは中々至難の技であろうからその可能性は低いと考えられる。


 そして待ち伏せをしたり挟み撃ちをしたり等、これだけの人数を割いた、となるとここで決めに来ている可能性が高い。


 ……いや、でないとおかしいと言った方が適当か。


 俺達の敵に回っている生徒達だって魔闘祭の参加者。それと共に本来ならエルシー=スチュアートとも敵対関係なのだ。となると、誰も喜んで当て馬なんかにはなろうとしないだろう。


 もちろん生徒達が気付かない内に当て馬にされる可能性も考えられるが三百人も居るなら誰か一人は気付くだろうし、気付かれると簡単に三百対一になってしまう、そんな脆い作戦を行うだろうか? いや、普通なら行わない。


 ならば考えられるのは二つで、勝負を決められる決定打となりうる何かを持っている、もしくはエルシー=スチュアートは頭の回転が早く、三百人もの人を丸め込ませる程口が達者な人物であるという事だ。


 そして恐らく可能性として高いのは前者。後者に比べるとまだ現実的だ。まぁ、それでもこちら側が不利なのには変わり無いが……。


 ……しかし、だからこそ俺が居る。ここに来て漸く俺が動き出したのは理由は二つ。一つはカーミリアさん達五人のフォロー……。



 もう一つはエルシー=スチュアートを妨害する為。



 エルシー=スチュアートからすれば俺は捕捉されない上に殆ど知られていない、いわゆるイレギュラーである為に妨害にはうってつけというわけだ。


 とは言え、もちろん俺に学年二位を倒す程の力は無い。だからこその妨害だ。


 俺はとにかく脱落しない様に心掛けてエルシー=スチュアートとの戦闘に持ち込む。


 最低攻撃はしなくていい、俺の目的は妨害――気を散らして指示を出せない様にすれば良い。後はその間カーミリアさん達五人が残り人数四十人になるまで統制の取れなくなった生徒を倒してくれればオッケーなのだ。


 だが、この作戦にも欠点がある。エルシー=スチュアートは見えついた弱点である、戦ったりして気が散ると指示を出せなくなる事を防ぐ為にどこかに身を隠すだろう。


 しかし俺の目的はエルシー=スチュアートの妨害。つまりエルシー=スチュアートが見つからなければ意味が無い。


 だから俺は魔力付加を施して全力で走る。かなり距離が遠くなったカーミリアさん達五人が戦っている場所あたりから鳴り響いた爆発音が後ろから、俺に戦いが始まった事を告げる。


 敵がカーミリアさん達に気が向いている今の内がチャンスだ。


 そうしてどれぐらいか走った時、前方にこちら側に向かってくる二つの人影が見えたので俺は直ぐ様近くにあった樹氷の物陰に隠れて二つの人影の様子を見る。


 人影の大きさは片方がかなり大きいのに比べてもう片方は小さい。


 もう少し目を凝らして見ようとしたものの、思いの外二つの人影の移動速度が早く、俺が居る事がバレる訳にはいかないのでそうすることが出来なかった。


 俺は息を潜め、樹氷の物陰に隠れ二人が過ぎるのを待つ。


 聞こえる雪を踏む音がゆっくりになり、少しスピードを落としたのがわかる。


 そうして待っている事数分、遂に足音は樹氷を挟んで反対側から聞こえてくる様になったと思ったと同時に足音は止み、聞こえなくなった。


「そこで一体何をしている?」


 そして変わりに聞こえてきたのは若い女らしき声。喋ったのは小さい人影の方だろうか。……しかし今の声、何だか聞き覚えがある様な気がする。


 だが、俺は無言を通す。この状況、出会うのなら敵側の生徒だ。なら、応える必要も無い。

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