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TWINE TALE  作者: 緑茶猫
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Flag7―牢獄の住人―(11)

「どうして無視するのだツカサ……」


「ッ!?」


 しかし次に聞こえてきたのは悲しげなトーンで俺の名前を呼ぶ声。何故、俺だとわかる? そもそも何故俺の名前を知っていて名前で呼ぶ?


 だが、バレているのなら黙っていたってしょうがない。


 俺は警戒を緩める事なく樹氷の物陰から出て、二人と向き合う。


 …………えっ?


 目の前に居たのは艶のある綺麗な長い黒髪を二ヶ所、両耳の上で少しだけくくり、くりくりとした大きな黒い瞳で俺を見上げる、人の背丈と同じ位の黒い杖を持った少女と、大柄で褐色肌の鋭い眼光の青い目とスキンヘッド、更に左眉から外側へと切り裂かれたかの様な傷痕があるレスラーみたいな男だった。


「エルと………………エルのお父さん……」


「そうだぞ! 昨日ぶりだなツカサ!」


「お、お父さん……」


 エルは髪型こそは違うがどっからどう見ても昨日会ったばかりの顔だ。


「何で二人が居るんだ?」


「何でってエルが一年だからに決まっているだろ?」


「お父さん……」


 二人の様子を今一度確認してみると、エルの服にはフリフリの様なものが大量に付き、元がわからない程までいわゆるゴスロリ風に改造されてはいるものの、二人が着ているのは確かにこの学院の制服で、ネクタイの色は一年を示す赤だった。


 いや、そもそも……。



「二人って学生だったんだな」



 二人には失礼かもしれないが、エルは見た目が幼く同い年に見えず、逆に今項垂れている保護者さんは見た目が完璧ヤクザにしか見えないので今の今まで知らなかった。二人の見た目の年齢が対照的なので尚更だ。


「エルは十六歳だから子供じゃないよ!」


「学生に見えない……お父さん……」


「てっきり親子かと」


「エルとヴァルが親子? エルはこんなオッサンみたいなのが親なのは嫌だよ!」


「オッサン…………もう嫌だ死のう……」


「エル、言い過ぎだ。その……ヴァル……さん? が可哀想だぞ?」


「いや、ツカサも悪いと思うんだけど……」


 どこがだ? 悪いことをした覚えは全く無い。


「そうだよ……。俺はいつもそうだったんだ……。エル様と居たら良くても親子に思われ、最悪警備隊を呼ばれて……。学生には見えないって言われてエル様にはオッサンと……名前呼ばれる時はいつもさん付けされるし……もう嫌」


 ……どうやら俺も悪いらしく、ヴァルさんは見た目によらず繊細らしい……。


「えっと……ヴァルって呼ぼうか……?」


「えっ……? ぜ、是非!」


 俺がそう提案するとヴァルさん……いや、ヴァルはその鋭い目を輝かせ若干食い気味で返事をしてきた。……迫って来られると若干怖い。


「俺の名前はヴァル=アディントンです! ヴァルとお呼びくださいツカサ様!」


 ……そうだった。相手が知り合いだった事ですっかり忘れていたが今この二人は敵で、訊きたい事があるのだ。


「なあ、二人とも。なんで俺が隠れているって知ってたんだ?」


「何を言っているのだツカサ? もしかしてエルの《スカディ=コルネリウスの杖》の能力を知らないのか?」


 エルは珍しい物を見る様な目で俺を見つめてくる。……そんなに有名なの?


「じゃあやっぱり昨日のエルのお願いも知らない?」


「お願い……?」


「むむぅ……やっぱり昨日が初対面だったから当たり前なのかな……」


「エル、さっきから何を言ってるんだ?」


 エルは何やら色々と考えている様だが、あまり深くは考え込まない性格なのか解決したのか、直ぐに何かを考えている素振りをやめた。


「まあ、良いや! エル達は少し急いでるからツカサには悪いけどもう行くぞ」


「そっか、差し支え無かったら何しに行くか教えてくれないか?」


 するとエルは得意気な顔をしてフフン、と鼻を鳴らす。これから何か良いことでもあるんだろうか?



「プラナス=カーミリアを倒しに行くんだよ! あれ? ツカサ信じてない? こう見えてもエルは強いんだよ? な! ヴァル!」



 ……おいおいマジか。冗談かと思ったがヴァルの反応からしても嘘ではなさそうだ。


「二人で、か?」


「そうだぞ? どうしたんだツカサ?」


 エルとヴァル……この二人がエルシー=スチュアート側で、決定打になりうる何か大きな力を持っているのか? ん……? ……エルと……ヴァル……? エル……? いや、まさか……


「なあ、エル。エルの名前をフルネームで教えてくれないか?」


 俺がそう言うと一瞬エルとヴァルは驚いた様な顔をしたものの、嫌な顔せずに応えてくれた。




「エルの名前はエルシー=スチュアートだ」




 これは驚いた……。予想外どころの話ではない。決定打となりうる何らかを繰り出して来るのは予想の範疇ではあったが、まさか大将自らがお出ましで、その上、その大将が今目の前に居るエルだったとは……。


 エルがエルシー=スチュアートだと気付かなかった俺も俺だが、普通、話を聞いただけで目の前に居るこの無害そうな少女がエルシー=スチュアート本人だとは誰だって思えないだろう。


 ぶっちゃけ俺の中でのエルシー=スチュアートのイメージは計算高く、冷静沈着を貫いているというものだった。失礼かもしれないがエルは冷静沈着や計算高いと言う言葉とは大きくかけ離れている気がする。


「あの……エル様……」


 俺が少し考え込んでいるといつの間にかヴァルがエルに耳打ちをして何かを相談している様子、俺に聞かれたら不味い話でもしているのだろうか?


 そして少しすると話が付いたのか、エルとヴァルは俺と向き合った。


「なあ、ツカサ……」


 エルは普段の雰囲気とはかけ離れた、淡々とした口調で、鋭く冷たさを感じられる声で問い掛けて来た。


「ツカサは、エルの敵か……?」


 エルは独白の様に続ける。


「今ヴァルに言われて気付いた。これでもヴァルの家系……アディントン家はスチュアート家に仕え、諜報活動を生業なりわいとしていた家。今は生業ではなくてもヴァルにはその才能は充分にあって、この学院生徒の基本的な情報は殆ど持っている筈なのに……C組の生徒が他のクラスに比べてわからない事が多いと言えど、全く情報が無いのはツカサだけ……」


 エルは尚も口を閉ざしはしないが、説明をする様な丁寧な口調で、どこか諭している様にも感じられる。


「そしてエルがこれ、《スカディ=コルネリウスの杖》の能力を使って聞いた時に知ったプラナス=カーミリア達の話に参加しているツカサと言う人物……この前噂で聞いたC組に入ってきた転校生……それは今、エルの前にいるツカサなのか?」


 そう言ってくるエルの瞳からは有無を言わせない様な強い意思が伝わってきた。


 …………何か妙に重苦しい空気が漂ってるけど……俺って警戒されてる? 確かに情報が全く無い相手を警戒するのは当たり前かもしれないけど実際凄く弱いからね?

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