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TWINE TALE  作者: 緑茶猫
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Flag7―牢獄の住人―(5)

「そりゃ俺達が騒がしくしてたからじゃね?」


「コーチ、本当にそう思うか?」


 俺は左側に居るであろう人物に聞き返す。


「うん」


「……使えない馬鹿だな」


「扱いがひでぇ!」


「つまりツカサ君は今この状況が偶然じゃなくて必然だと思うの?」


 左斜め前から聞こえてきたレディの声に対し「ああ」と返し、その後に理由を続ける。


「多分、皆カーミリアさんを倒そうとしているんだと思う」


「なるほど……確かに敵さんからしてみたらカーミリアさんは脅威だね。けど、それとボク達が閉じ籠っている事に何か関係があるのかい?」


 俺が答えようとした時、俺の正面からぽつり、と呟く声が聞こえた。


「敵は……今居る十数人だけでは無い、と言う事でしょうか?」


「そうだよルーナ。敵は多分……最悪C組以外……になると思う」


 ここに居る全員の息を呑む音が聞こえる。


「そんな事が有り得るのでしょうか……?」


「わからない、けど、俺達を囲んでいた生徒は俺達に気付かれるまで攻撃はしなかった……つまり敵の目的は援軍が到着するまでの時間稼ぎだと思う」


 カーミリアさんであろうと流石にC組以外の一年の生徒、既に脱落している生徒とかも考慮して三百人を相手にするのは無理がある。


「けどよ、予選の方法が発表されたのは小一時間前だぜ? 即席でそんな作戦を立てたり人を集めたりとかって出来るのか?」


 コーチの言う事はもっともだ。普通、この短時間の間にこれだけの人間を使った作戦なんて実行に移せる筈が無い。


 俺の考え過ぎという事もある。しかし只の十数人のグループがカーミリアさん程の実力者を相手にこんな戦い方をするのは自殺行為にしかならない。


 無論、カーミリアさんを知らなかったとなれば話は別だが、話によるとカーミリアさんは今年度の夏季魔闘祭で代表メンバーとして参加したらしい。


 それだけ目立つ事をしているにも拘わらず、十数人の誰もが知らないとなるとそれは異常だ。


 よって何らかの作戦があると考えられる。


 しかしそうなると問題は作戦を実行させる事が出来る様な人物が居るのかどうかだ。


「わかったわよ、ツカサちゃん」


「何がわかったんだケトル?」


「こんな事を出来そうな人がわかったのよ」


「ほんとか!?」


「けどその前に援軍が来られたら困るからラナちゃんを連れて逃げましょ。皆も良いかしら?」


 ケトルに対し、各々が短く肯定の返事を返す。


「じゃあ行くわよ」


 ケトルがそう言うと土で出来たドームは壊れ、俺達は太陽の光に照らされる。


 眩しくて一瞬目を瞑ってしまったが外では丁度カーミリアさんが最後の一人に止めを刺した所だった。


「こっちは終わったわよ」


 カーミリアさんは少し不機嫌そうに溢す。


「何なのよさっきの。あっちから攻めて来たのにすぐに逃げようとして、アタシを馬鹿にしてんの――」


「走るぞ!」


「へっ?」


 先程俺達を襲ってきた人数の二倍程の生徒達がこちらに向かってくるのが見えた俺はカーミリアさんの手を引っ張り、今まで歩いてきた道を魔力付加を施し、駆け足で引き返す。


「ち、ちょっと! いきなり何すんのよ!?」


「後ろを見てみろ!」


 カーミリアさんは俺に促されて後ろを見る。


「あれくらい逃げる必要無いわよ!」


「説明は後でするから今は従ってくれ!」


 そして追い掛けて来る生徒が見当たらなくなるまで俺達は走り続け、その時に丁度見つけた洞窟の奥で休む事にした。


 その際にカーミリアさんに退却した理由の説明は済ましている。


「なあ、ケトル。ここはさっきみたいに相手に探知されたりはしないのか?」


 俺は薄暗い洞窟内で壁にもたれ掛かって座っているケトルに問う。


「ワタシの予想が合っていれば多分まだ大丈夫だわ」


「多分かよ……」


「十分位なら持つ筈よ」


「じゃあ十分後には移動しなくっちゃいけないのか。ところで、その予想の相手は誰なんだ?」


「恐らく一年A組のエルシー=スチュアートよ」


 するとコーチやレディ、ルーナからどこか納得した様な声が洩れた。


「……誰?」


「今年の学院の代表メンバーにラナちゃんと一緒に入った一年生よ。簡単に言ったら学年二位ね」


「そのエルシー=スチュアートって人なら俺がさっき言った様な事が出来るのか?」


「ええ、彼女の契約武器の能力なら可能の筈よ」


 ケトル話によるとエルシー=スチュアートと言う生徒の契約武器の能力は影を操る能力で、その使い方の一つに、一メートル以内に近づいた事がある生物に影を繋げる事が出来る能力があるらしい。影を繋げると、離れた相手と会話をしたり捕捉したりする事が出来る様になるそうだ。


 一見地味な能力に見えるが、複数の対象と同時に影を繋ぐ事が出来、効果範囲も中々広い為、今回の様な事も簡単に行えたりなど使い方次第では非常に強力な能力であると言える。


 しかしそんな能力にも弱点はあるらしい。影を繋ぐのは対象一つ一つを意識する必要がある為、精神的な疲労が溜まり易いという事と、エルシー=スチュアートが影を繋ぐ相手と一メートル以内に近付いた事がある事、統率するが故に判断力等といった頭脳が求められるそうだ。


 弱点があるとは言っても、十分なほど強力な能力なので警戒はしておいて損はないだろう。

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