Flag7―牢獄の住人―(4)
俺達は左端にある魔法陣の所まで移動し上に乗ると、そこで待機していた先生が八芒星の魔法陣の上に設置された魔導具を触り始めた。
そして少しすると俺達は真っ白な光に包まれ、気がつくと銀世界の中に居た。
ペンダントのお陰か幾分マシだが肌寒く、見渡すと見事な樹氷ばかりで、真っ白な雪に太陽の光が反射して少し眩しい。
各々が様々な感想を上げていると突如学園長の声がどこからともなく聞こえてきた。
『ここは私の家の土地で見ての通り雪山だ。そして今はお前達一年と教師しか居ない。……この時点で察しがついただろうがここがバトルロワイヤルの会場だ。貴様ら準備は良いか?』
すると先程まで緩い雰囲気だった生徒達の息を飲む音が聞こえた。
『バトルロワイヤルは何でもありだ。緻密な計算で罠を張るのもあり、純粋な力で押すのもあり、徒党を組むのだってありだ。だが組むなら裏切られにくいクラスメイト同士にしとけよ? もちろん蹴落とすのもありだからな。それじゃあそろそろ始めるぜ? ……これより王都魔術学院冬季魔闘祭を始める……それでは戦闘開始っ!』
その言葉と共に俺達は動き出した。
俺達は担任の横暴のせいでクラス別でも個人でも上位に入らなくてはいけないのでクラス内で潰し合う様な事は誰一人しようとはせず、自然と幾つかのグループに別れて行動を始める。
俺のグループでは出来るだけ消耗を少なくする為、最初の三日程は戦闘を避け、隠れながら過ごす事が決まった。
「ウフッ! とりあえずは拠点になりそうな場所を探しましょう?」
「ほら行くわよ……って何でアタシとケテ……ケトルを先頭にして並んでるのよ!?」
カーミリアさんは綺麗な二列に並んでいる俺達――俺とルーナとコーチとレディを睨む。
「カーミリアさんが先頭だと他の生徒がびびって逃げるかなって」
見るからに強そうなケトルも居るし。
「アタシは悪魔か何かか!?」
「えっ? 違うのか?」
「ノーノー何を言っているんだツカサ。女性は全て天使に決まっているだろう?」
「お前こそ何言ってるんだコーチ」
「アンタら……一応言っておくけどアタシ達は協力しているだけであって仲間ではないんだから……蹴落とすのもありなのは知っているわよね……?」
「まあまあ、カーミリアさんも落ち着きなよ。ボクとしては変に緊張してるよりかはこんな風にいつも通りの感じでやっていく方が良いと思うよ? ……それにおいしいし……えへへへっうへへへへっうひっ」
「あのー……皆さん……」
そんな時、ルーナが恐る恐る声を上げた。
「非常に申し上げにくいのですが囲まれていますよ……?」
俺達はルーナに促されて回りを見る。
俺達の周囲には十数人ばかりの生徒が武器を構えて立っていた。
「はい質問」
「どうしたツカサ?」
「この状況を潜り抜けるにはどうしたら良いと思う? って言うかどうする?」
するとコーチは少し考えて口を開く。
「俺ならまず、一ヶ所を突き破って逃げ――」
「殲滅するに決まってるでしょ?」
カーミリアさんはそう吐き捨てると共に囲んでいた生徒の一人の前へと一瞬で移動し、得物である剣の能力を発動しながら薙ぎ払った。……いつ契約武器召喚していたの?
紫電を迸りながら振るわれる細長い白銀の剣身はカーミリアさんの目の前の生徒の体を正確捉え、安全装置であるペンダントの転移魔法陣を作動させる。
更に剣に纏われていた紫電は剣を振るったと共に放たれ、カーミリアさんの正面にいた生徒の左右に居た生徒も呑み込み、砂塵を上げた。
砂塵が晴れると残ったのは小さいクレーターのみでそこに誰かが居たという証拠は無い。
一瞬で三人もの生徒がリタイアした事に残された生徒達は息を呑むが直ぐに正気を取り戻し、慌てて俺達に向かって攻撃を始める。
それに対してカーミリアさんは切りかかって来た生徒の攻撃は見切り、体を捻って避けると剣を持っていない左腕で顎へと掌打を繰り出し、降り掛かる魔法は紫電を纏った剣を振るい、打ち消した。
…………最初に決まった筈の作戦はどうなったんだろう。
「まあ、この状況なら仕方無いか……」
そうぼやき、こちらへ向かってくる魔法を防ごうと魔法に対して手を向け、俺は魔法を発動させようとする。
「アナタ達! 少し伏せなさい!」
……しかしケトルの声により中断し、指示の通り素直に頭を低くした。
「〝ランド・プリズン〟!」
ケトルがそう叫ぶと土の壁がドーム状に展開され、カーミリアさんを除いた俺達五人を包み込んだ。
土のドーム内では四方からの攻撃が土のドームにぶつかっているらしく爆発音が何度も聞こえる。
「なあ、ケトル」
俺は暗い土のドーム中で左斜め後ろの方に居た気がするケトルに話しかける。
「どうしたのツカサちゃん?」
予想通り方向からケトルの声が聞こえてきたので振り向き、話を続ける。
「もしかしてケトルはこれを維持して外が全滅するのを待つのか?」
「そうね、ラナちゃんなら五分もあれば終わるんじゃないかしら? どうしたの?」
「ちょっと思うことがあってさ、まず、何で始まってすぐに十数人もの生徒に俺達は囲まれたんだ?」




