Flag7―牢獄の住人―(1)
「……これから始まるわけだが……貴様ら、準備は良いか?」
学園長のハスキーな声が講堂内に響き、生徒達を鼓舞し、感化された生徒達の雄叫びが空気を震わせる。
俺もその空気のせいか少し鼓動が早く脈打っているのがわかる。
「さて、今年の予選の内容だが…………フッハハハハハハ! これから、貴様達には殺し合いをし――って痛い! ネアン! 何故殴るのだ!? 私はカサカサ動いて黒く光るアレでは無いぞ!?」
舞台の上では学園長がネアン先生に叩かれていた……スリッパで。締まりねぇな……。と言うかこっちにも居るんだな、黒く光る例のアレ。
「うぅっ……わかったよ、わかったからそんな目で見るなよネアン。真面目にするから! ……私だってテンション上がってるんだよ。 楽しみたいんだよぉ! 良いだろぉ! だから貴様達には殺し合いをして――痛い! ネアン痛い! おい! お前らも見てないで助けろ! うわっ何する! やめろぉレイラぁ! あぁぁぁぁ!」
舞台上の学園長はレイラ女史――確か一年A組の担任で、紺色のストレートの髪に黒い瞳の美人さんに腕を引っ張られ、舞台の裏の方へと連行されていった。
「やめろ! やめるんだ! ひぁっ!? どこを触ってるんだレイラ!」
「良いじゃないですかぁルイス。減るものでも無いんですし……うふふふふふ……あはははは」
「た、頼む! 誰か……ネアン! 助けぁぁああぁぁあああぁぁぁぁぁああ!」
「「「「「…………」」」」」
……今のは聞かなかった事にしよう。
学園長達によって生み出された奇妙な沈黙を破ったのはネアン先生のやる気の無い声だった。
「はいはーいちゅうもーく。レイラがルイスを連れてったうやまし……じゃなくて、連れてったからとりあえず俺が今年の予選内容を発表するぞー」
こんなだからネアン先生が学園長を好きだってのが周知の事実になっているんだろうな。
「なあなあツカサ! どんなのが来ると思う!? 俺はパンチラが見れそうなのが良いな! でも今はレイラ女史と学園長の絡みが凄く見たいっひひひひひ!」
何か変態が話しかけてきたがこれは無視だ……話に触れたら負けな気がする。
「ボクはボクは男の子同士の絡みが多いのが良いな! ローション相撲とか!」
「何処の芸人だよ」
しまった思わずっ……!
「おお! 良い食い付きだねぇツカサ君! あっ! でもローション相撲もいいけど負けた方が勝った方の言いなりで攻撃は相手をくすぐるのみってルールも良いなぁ……もちろん男の子だけのみで! あははうふふふうひゃひゃえへへへ……ぶばっ!」
「…………」
……また制服洗わなきゃ……。魔闘祭で汚れるとしても、血を被るのは流石に嫌だな。
「はーいそこ、興奮しないよーに」
何故俺を指差す。悪かったよ、隠しているつもりの秘密を公に晒すって言ったのは悪かったって思ってるから、いつまでも根に持たないでくださいよ。
「まあ、転校生が興奮してようがどうでもいいが一回しか言わねぇから聞き逃すなよ。ズバリ! 今年の冬季魔闘祭の予選は……バトルロワイヤルだぁぁぁ!」
ネアン先生がそう叫ぶ事により、生徒達の雄叫びが再び上がる。……バトルロワイヤルと殺し合いって意味合いはそんな変わらない気がする。似た者同士め。
「ちなみに各学年の人数は約四百人ずつだが、四十人位になるまでやってもらうぞ。また、早くに終わった場合は残りは休日だ。だが、もし終わらなかったら……」
ネアン先生は周りを見渡し、口角を吊り上げていやらしく笑う。
「くじ引きだ」
何なの今の溜めは? 何がしたかったの? てかアンタもノリノリじゃねぇか。
「ちなみに戦闘可能な時間は午前九時から午後七時までだ。……はあ? 昼飯? 襲われない様に警戒して食え。まあ、とりあえず説明はそんな感じだから皆、一旦それぞれのクラス別で集まって担任が来次第、転移室へ移動してくれ」
ネアン先生はそう言い、一年C組の所へと来ると、C組の生徒達を引き連れて移動していく。
一部ツッコミを入れたくなる衝動を抑えながら、俺は移動していく生徒達の中を動き、ケトルとカーミリアさんと談笑しながら歩いているルーナの所へと行った。
「あら、ツカサちゃんどうしたの? もしかしてワタシに会いたくなっちゃったの? ウフッ! 照れるわねぇ」
ケトルはそう言いながら大きな自身の身体を抱き締めてくねくねと動く。……怖い。
「何で頬を染める!? 全く違うから!」
「じゃあラナちゃん?」
「くたばりなさい」
俺何も言ってないのに……。何なのこの扱いの酷さ。
「死んでもそれは無いから安心しろ」
何だか仕返ししたくて言ってみた、悔いは無い。
するとカーミリアさんの表情は一変、鋭い目付きで俺を睨んでくる。
「アンタ、そろそろリタイアする?」
「そろそろってまだ何も始まってな…………すみませんでした本当は凄く会いたいの間違いでした許してくださいごめんなさい」
歩きながら何回も頭を下げるのは見ていておかしいだろう。だが、流石に武器を構えられたら謝るしか無いよね。
しかし頭を下げ続けてもカーミリアさんの反応が無いので恐る恐る俺は頭を上げるとカーミリアさんは顔を真っ赤にしてこちらに右の拳を……拳?
呆気に取られた一瞬の隙にカーミリアさんの右の拳は振り抜かれ、俺の左の頬へと直撃し、俺の見ていた景色は少し後ろへ後退した。
「何故にっ……!?」
「何故ってアンタが悪いのよ!」




