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TWINE TALE  作者: 緑茶猫
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Flag6―心と約束と小さな樹氷―(9)

「……その代わり今から死ぬ覚悟をしなさい」



「へ?」


「えっ?」



 驚いて声を洩らしたのはコーチだけでは無く俺もだった。


 理由は簡単。確かにいつものカーミリアさんなら今回の様な事は言ってもおかしくは無いだろう。しかし今回カーミリアさんが言った『死ぬ覚悟をしろ』の対象にはコーチだけでは無く俺も含まれていたからだ。


「何変な声上げてんのよ当たり前でしょ?」


 絶対に当たり前じゃないと思う……。俺は心の中でそう思ったものの口には出さなかった。


 それにしても先程カーミリアさんは確かに『無理矢理にでも叩き込む』と言ったが何をするつもりなのだろうか……。


 そんな事を考えると少し怖くなってきたがとりあえず疑問をカーミリアさんにぶつける事で気をまぎらわせる。


「なあ、カーミリアさんは忘れてるかもしれないけど俺もコーチも既にヘトヘトなんだけど……」


 現在コーチの足は相変わらず小刻みに震えており、俺も立っているだけでも結構キツイ状態だ。


「だからどうしたの?」


 本日二度目のぶったぎり。今更の話になるのだが、どうやら俺達にこの人の相手は無理があるらしい。


「言っておくけど最初に言い出したのはアンタ達よ」


 確かにそうだ。しかしカーミリアさんはいつの間にこんなにやる気を出したのだろうか?


「言っておくけどアタシはやると決めたらやる女よ」


 カーミリアさんがそう言うと、今度はコーチが小さい声で俺に話し掛けてきた。


「なあ、ツカサ……『やると決めたらやる女』って不吉に聞こえたのは俺だけか?」


 それは気のせいでは無いと思う。現に俺は『殺ると決めたら殺る女』と聞こえた。


 ……しかし。コーチはそう言う事は周りをきちんと確認してから言うべきだと俺は思う。


「アンタ……もちろん死ぬ覚悟は出来てるわよね……?」


 わぁお……素晴らしく鮮やかな魔法の発動速度と美しく迸る雷だこと。しかし後の祭り、コーチの悲鳴を皮切りに俺達の地獄はスタートした。


「はぁ……酷い目にあった……」


 軽くぼやく。


 俺は倦怠感の残る体で自分に与えられている寮の扉の前に立った。


 扉に書かれている番号は7038。その番号に込められた情報は七階にある三十八番目の部屋と言う事だ。


 俺はドアノブを掴んで魔力を少し流す。するとドアノブの内側で鍵が開く音が鳴った。


 魔力は人と同じになる事は無い為、この世界で魔力は鍵の代わりになっているらしい。


 そして俺は扉を開けて無駄に広い部屋の中に入り、扉に背中を向けてドアノブを引き、閉めた……筈だった。


 閉じられてゆく扉が途中で止められた様な違和感を感じた俺は振り向いて確認するとそこにはいつかの“性癖戦隊変態ジャー”のメンバーが居た。


 それを見てしまった俺はとりあえず扉を掴んで気持悪い笑みを浮かべていたジェントルレッドを全力の足技でもてなした後、速攻で扉を閉めて鍵をかけた。


「ふぅ……今日も色々あったな……」


 再びぼやく。


 無かったことにして思いを馳せようとしたがそう上手くいかなかった。


 理由は簡単で、扉の外が非常にうるさい。


「ツーカーサぁぁぁ! 出っておいでぇぇ!」


「来っないとおっ尻を叩き割りまーすよぉー!」


 ……コーチが叫ぶのはわかる。しかし何故ルーナまでもが叩き割るとか楽しそうに叫んでるんだ!? 怖い……。


「ツカサくーん! 早く出てこないと妄想の内容叫んじゃうよー!」


「ウフッ! 早く出て来てくれたらワタシが熱く抱き締めてあ・げ・る!」


 嫌だ! こんなの出る気があっても絶対に出たいとは思わないっ!


「はぁ……そもそもなんで皆して居るんだよ……」


 なんかさっきから溜め息ばかりついているような気がする。


「理由……知りたい?」


「そりゃそうだろ? 俺は何にも聞かされて無いのに」


「それは確かに……」


「だろ? せめて来るんならなんか言ってくれても……ん?」


「……何?」


 俺が隣に目を向けるとそこには銀目の銀髪ツインテールが居た。何でいつも気配を消しながら現れるのだろうか?


「何でお前がここに居るんだ?」


「これが私の任務……」


「任務?」


「そう……私の任務は中から鍵を開ける事だから……」


「でもそれって俺に言っても良いのか?」


「……あっ……いや、も、問題無い」


「問題しか無いじゃねぇか」


 俺は珍しく動揺しているノスリを放置してノスリどうやって部屋から追い出す考える。


 部屋の扉を開けるのは論外だな……じゃあ窓……いや、ここは七階か……。


「結局諦めるまで待つか……」


 俺がそう呟いた時ノスリに目を遣るとノスリは何故か無表情の中に微かに勝ち誇った様な表情を浮かべていた。


「どうした?」


「残念だけど……私の勝ち……」


「勝ち?」


「そう……これから私がある事をすればツカサは玄関の扉を開けざるを得ない……」


「あることって?」


「簡単……私がここで色っぽい声を上げる……するとどうなるか……」


「お、おい、まさか……」



「そう……ツカサがロリコンだと言う噂が広がる……」



「いや違うだろ」


「……?」


「何でそんな不思議そうな顔してんだ!? 普通に考えてロリコン以前に俺が寮の自室に女の子連れ込むと自制が効かなくなる野郎だと思われる方が先だろ?」


 何でそこまでして俺をロリコンにしたいの? そもそもノスリは自分をロリとして扱っているけど、それはそれで良いのか? それにクラスの奴は14歳以上はババアって言ってたし……いや、参考になんないけどさ。


「何で初めて聞いたみたいな顔してんだよ……」


「……と言う訳で早速」


「しなくていい」


 俺がそう言うとノスリは頬を膨らまして俺を睨んできた……が、表情はあまり変わらないので全然迫力が無い。


「……じゃあ、どうすればいいの……?」


 ノスリは首を傾ける。発言はアレだが俺の言った事を聞いたりと意外に素直だ。

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