Flag6―心と約束と小さな樹氷―(2)
しかしコーチがそう言った時、クラスメイト達の魂の鼓動が聞こえてきた。
「カーミリアさんのパンツ……だと?」
「カーミリアたんキター!」
「何色じゃ何色なんじゃ!?」
「フヒヒッ……ぼ、僕はカーミリアさんが幼女になったらもっと魅力的になると思うんだな……」
「待て待て待て! そこは熟女だろ!?」
「は? 14歳以上はババアは無理に決まってんだろ」
「クンクン……! クンカクンカ! ハスハス……ペロペロペロペロ!」
「きゃあああ! おねーさまぁぁぁ!」
「来た来たキター! み な ぎ っ て ま い り ま し た」
「ああ! おねーさまのその控え目な谷間に顔を埋めてスリスリしたいわ!」
「じ、女王様……? 女王様のおぱんつでありますか!?」
「おねーたま……抱き締めたいわ……嫌がるおねーたまを無理矢理にでも抱き締めたいわ……だ、だから腕を噛んでもいいのよおおお!」
「べ、べべべべ別に僕は……そ、そんなの気になりませんよ……め、め、メガネですから……」
なんだこのクラス? 変態ばっかじゃないか。そしてメガネ、お前動揺し過ぎ。メガネを押さえてる指が凄い震えてメガネに残像が出来てるぞ?
「じゃあルールを説明するぜ?」
コーチは無駄なイケメンスマイルでカーミリアさんに語りかける。
「ルールは簡単、順番に相手が穿いているパンツを予想していくんだ。ちなみにパスは何回でもあり、どうだ? 質問は無いか?」
「せ、先攻か後攻はどう決めるの?」
「先攻はカーミリアさんにやるよ……ただし、当てれるんだったらな」
そう言って再び悪どい笑みを浮かべるコーチ。
「ああそうそう、パンツを予想された時に否定して、それがあからさまに嘘っぽいと判断された場合は確認って事になるから注意しな」
「な、な……! ふざけないで!」
カーミリアさんは顔を真っ赤にして反論する。
「嘘はつかなかったら良い……只、それだけだろ?」
やばい……コーチが凄い最低な奴に……いや、既に最低な奴だったな。何だ、いつも通りのコーチじゃん。
「ねぇツカサ君……これって……」
俺にそう言ったのは隣で苦笑いを浮かべているレディ。
「ああ、そうだな……」
「お二人共とも苦笑いしてどうなさったのですか?」
レディとは逆の方向からひょこっと顔を出したルーナが不思議そうな表情を浮かべながらそう言った。
「いや、ちょっとな」
「うんうん流石はコーチ君だなぁって」
少し誤魔化す様に話す俺達に対してルーナは首を傾げる。
ちなみに俺とレディは不本意ではあるがコーチの狙いに気付いている。
ルーナに教えない理由は簡単、コーチが自分の欲望のままに動いているから。
今のカーミリアさんはコーチの手の平の上で転がされている。
そもそもこのゲームは一般的な女の子なら勝てないゲームだ。そう、例えそれが学院一位だったとしても。
「じゃあ、ゲームスタートだ……」
コーチはそう静かに、されどはっきりと宣言した。
「うっ……」
コーチは先攻をカーミリアさんに譲っていたがこれは優しさでは無い。
これは辱しめだ。プライドの高いカーミリアさんならなおの事、男の穿いているパンツを当てると言う行為は精神的苦痛にしかならない。
そして何より……カーミリアさんはここで正解しなければいけない。
理由は簡単で、例えばもしお互いが一回目の予想を外し、カーミリアさんに二回目の順番が回った時に予想が正解したとしてもコーチは必ず自分の一回目の予想が本当に不正解だったのか確認する為にパンツを見せろと言うと予想出来るからだ。
「ほれほれどおしたぁ? 俺の穿いているパンツを答えてみろよぉ」
コーチはそう言って馬鹿にした様な表情でカーミリアさんを挑発する。これセクハラのレベル越して犯罪じゃないのか?
「最低の発言だよね」
「レディ……みなまで言うな」
恐らくそれはここに居る人全員が思ってる。
悔しそうに唇を噛むカーミリアさんはコーチに「どうした? 諦めるか?」と問われて、少しずつ口を開く。多分自分の中の羞恥心と戦っているんだろう。
「……よ……なのよ!」
「聞こえんぞ?」
「どうして……どうしてアタシが諦めなきゃいけないのよ!」
そう言って顔を上げたカーミリアさんの金色の瞳には決意の心が表れていた。
そして彼女は叫んだ。
「だからアタシは予想する! コーチ=クロック、アンタが今穿いているパンツは……“白のブリーフ”よ!」
カーミリアさんのコーチを睨む瞳は鋭い。
堂々然として指を指す態度は好良いけど……パンツと白のブリーフと言う単語が全てをぶち壊しにしてる。
「白の……ブリーフ……だと……?」
コーチは震えながら一歩、また一歩と後退る。
「ねえツカサ君」
「なんだレディ?」
「ボクは“白のふんどし”を穿いていると思うんだ」
「流石にそれは無いだろ」
だってふんどしの上にズボンはキツくないか? いや、ふんどしなんて穿いたこと無いけども。
そんなやり取りをしていると後退っていたコーチが急に笑い出した。
「クックックッ……くあっはっはっは! 残念だったなカーミリアさん、それは間違いだ……俺が今穿いているのは“白のふんどし”だ!」
マジで!? レディ恐るべし。どうしてわかるの。
「そ、そう。でもアンタ馬鹿なの? 自分で答えを言ってしまってるじゃない」
「言ってしまったのでは無い……教えてやったのだ! 何故なら貴様はここで負けるのだからな!」
「ふ、ふざけないで!」
狼狽えているカーミリアさんに対してコーチは落ち着いた様子で呟いた。
「白……いや、純白」
「な、何いってるの!?」
「これは昨日君が穿いていたパンツの色だ」
「な、な……!」
みるみる内に顔を赤くしていくカーミリアさん。コーチ……お前は何故それを知っているんだ?
「何故俺がそんな事を知っているのか教えてやろう……簡単な話だ、昨日の模擬戦はパンチラ見放題だったからなぁ!!」




